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第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第2節 オープンデータの活用の推進

(3) 海外における取組

諸外国においてもオープンデータ戦略等の策定が進んでいるほか。オープンデータポータルサイトを開設している。また、中央政府レベルだけでなく、地方政府や民間でもオープンデータに係る取組が積極的に行われている。以下、各国の政策動向及び取組について紹介する。

ア 米国

オバマ大統領は、2009年(平成21年)1月の就任直後に「透明性とオープンガバメント(Transparency & Open Government)」と題する覚書を各省庁の長に対して発出しており、この覚書では、「透明性」、「国民参加」、「協業」の3原則に基づき、開かれた政府を築くことを表明している。また、同年5月には「オープンガバメント・イニシアティブ(Open Government Initiative)」を公表しており、同年12月には「オープンガバメントに関する連邦指令(Open Government Directive)」を発出している。米国政府では、これらを踏まえ、「透明性」を高める取組として、同年にData.govやITダッシュボードを開設した。

また、2012年(平成24年)5月に発表した「デジタル・ガバメント戦略(Digital Government:Building a 21st Century Platform to Better Serve the American People)」に基づき、数値データだけでなく文書情報等の非構造化データも対象に公開を推進している。

さらに、オバマ大統領は2013年(平成25年)5月に政府情報のオープンデータ化を義務付ける大統領令(Executive Order - Making Open and Machine Readable the New Default for Government Information)を発令し、併せて、オープンデータに関する新たな方針を発表した。この大統領令により政府機関には、個人のプライバシーや機密情報、国家の安全保障に関わる情報の保護に配慮しつつ、新たに作成するデータはできるだけ発見・アクセスしやすく、再利用しやすい形で公開すること等が義務付けられることになる。

米国政府では、連邦CIO(最高情報責任者)が中心となってオープンガバメントを推進しており、オープンデータの先駆的取組として、現在も各国から注目を集めている。

(ア)Data.gov

Data.govは、米国の政府機関が保有する様々な統計データに係る各種データセットを提供するサイトである。同サイトは、各政府機関の保有する経済、環境等に係る情報を迅速にオンラインで公開することにより政府の情報公開および透明性を高め、国民の信頼を得ることを目的としている。同サイトでは2014年(平成26年)5月時点で、10万を超えるデータセット、350を超えるアプリなどが提供されている(図表3-2-1-8)。今後、さらに多様なデータフォーマットのダウンロードを可能にすることで、ユーザーによる分析やリサーチをより容易にするほか、公開されたデータを利用した実用的なアプリケーションの開発と新たなビジネスの創造も期待されている。

図表3-2-1-8 Data.Gov
(出典)Data.Govポータルサイト
(イ)ITダッシュボード

ITダッシュボードは、連邦政府のIT投資に関する詳細情報を提供し、投資の経年変化を追跡可能なものとするために作られた。各省庁が行政管理予算局(OMB)に提出したレポートから収集したデータ(調達にかかるコスト、スケジュール、パフォーマンス指標、CIO(最高情報責任者)による評価など)を掲載しており、グラフ化して示すなど分かりやすい形で開示している。このように調達に関するデータを示し、各省庁のデータを一括して閲覧可能とすることにより、国民による調達パフォーマンスの比較が容易に行うことができ、各省庁自らパフォーマンスの評価を行うことも可能となっている。

また、米連邦政府CIOのヴァンローケル氏は、IT投資管理を向上させるため、各省のITポートフォリオ全体をレビューし、重複した投資、省庁戦略と合致しない投資を洗い出すと同時にシェアードサービス型への移行を目的とするPortfolioStatを開始した(図表3-2-1-9)。

図表3-2-1-9 ITダッシュボード(PortfolioStat)
(出典)IT Dashboardポータルサイト
(ウ)都市におけるオープンデータ

米国の都市においてもオープンデータポータルを開設する動きが進んでいる。2012年(平成24年)8月には、Data.govのサイト内にCities.data.govが新設され、シカゴ、シアトル、ニューヨーク及びサンフランシスコの4大都市が参加しており、地方政府のオープンデータポータルが連邦政府のData.govに統合されている。

そのうち、ニューヨーク市では、オープンデータポータルサイト「NYC OpenData」を開設し、市内のWi-Fiスポット、地下鉄入口等の地図データ、市の総合電話相談サービスの相談記録データ、郵便番号コード地区別の電力消費量など2014年(平成26年)5月時点で1,100を超えるデータセットを公開している。また、2011年(平成23年)から毎年、市のオープンデータを活用したアプリコンテスト「Big Apps」を開催し、行政の透明化や市民の生活支援、地域の産業振興などにつなげている。

また、ニューヨーク市議会は2012年(平成24年)2月に「Open Data Bill」と呼ばれるオープンデータ推進法案を可決している。この法案により、例えば交通局が保有する事故情報データなどを機械判読可能な形で提供できるようになり、これらのデータを分析することで改善を要する地域の特定など市政の監視や機能向上に役立つことが期待されている。

(エ)Code for America

米国における市民レベルの取組には、2009年(平成21年)から「Code for America」と呼ばれるオープンデータなどを活用した市民による行政向けWebサービスを開発するプロジェクトがある。主な活動としては、政府や地方公共団体が、Webサービス開発者などを期間限定の行政職員として雇用し、都市の課題を行政担当者とともに分析し、課題解決や行政サービスの向上につながるWebサービスを開発する取組がある。

このような取組は全米で広がりを見せており、連邦政府は2013年(平成25年)6月、ソフトウェア開発者や起業家たちがオープンデータなどを活用し、地域における課題を市民によって解決するための新しいサービスを提案する取組「National Day of City Hacking」を全米各地で開催した。

イ 英国

英国においては、首相のリーダーシップによるオープンデータ戦略が進められている。キャメロン政権発足直後に、首相から各省への書簡によりデータ公開が指示されたほか、2010年(平成22年)に「透明性アジェンダ」を発表し、その中で透明性と経済効果を主な目的としてオープンデータを推進する意向を示している。この透明性アジェンダを実現するため、有識者会議として「Transparency Board」を設立し、公的データに関する原則として、①公共データは再利用可能で、機械判読可能な形式で公開されること、②公共データは同一のオープンライセンスのもとで公開され、営利目的も含めて自由に利活用できること、③公共データは単一の使いやすいオンラインのアクセスポイント(data.gov.uk)で入手可能で簡単に見つけられることなどを定めた「透明性原則」を発表した。

さらに同年には、公共情報の民間利用を促進するための新しいライセンスとしてOpen Government License(OGL)を制定した。OGLは、公的機関のデータに対して、商業利用を含む幅広い利用を可能とするため、従来は著作権やデータベース権の対象となっていた非個人情報やこれまで非公開であった公共機関のデータについてもカバーしており、コピーや改作の自由、商用目的利用の自由をも認めている。

2012年(平成24年)には、情報公開法について、オープンデータに対応するように修正されている。そこでは、一定の場合には政府機関は合理的に実践可能な限り情報を再利用可能な電子的形態により提供しなければならないこととされている。

(ア)Data.gov.uk

英国では政府のオープンデータポータルサイトとしてData.gov.ukを2010年(平成22年)より運用しているが、2014年(平成26年)5月現在で、政府統計局の各種統計データや医療福祉分野のデータなど、データセット数は180,000、登録アプリ数は330を超えている(図表3-2-1-10)。

図表3-2-1-10 Data.gov.uk
(出典)Data.gov.ukウェブサイト
(イ)Open Data Institute

英国政府は2011年(平成23年)11月、オープンデータを活用したビジネスを本格的に支援する組織として「Open Data Institute(ODI)」を設立し、5年間にわたって政府より1,000万ポンドを拠出している(図表3-2-1-11)。

図表3-2-1-11 Open Data Institute
(出典)ODIウェブサイト

ODIでは、オープンデータに関する技術やサービスの開発に取り組み新たなビジネスを創出する企業の支援や人材開発を目指しており、ハッカソンの開催や資金支援、オープンデータ技術者の育成などに取り組んでいるほか、公開されるデータの品質を評価する取組として、2013年(平成25年)6月にはオープンデータ認証サイトβ版「Open Data Certificate」を開設している12

ウ その他

米国・英国以外にもオープンデータの取組は各国に広がっており、先進国だけでなく新興国・途上国においてもその取組が始まっているところである(図表3-2-1-12)。

図表3-2-1-12 各国・機関におけるオープンデータの取組

オープンデータを評価する動き

世界各国におけるオープンデータの広がりに伴って、各国の取組状況について共通の尺度をもって評価しようとする動きが非営利団体を中心に出てきており、いくつかの評価指標が公表されている。これら指標における評価の観点・尺度の違いに着目しつつ、主要な評価指標を紹介することとする。

2013年(平成25年)2月にOpen Knowledge Foundation(OKFN)は、世界のオープンデータ化の状況を国別で評価する「Open Data Census」を公開した13。また、同年10月には世界のオープンガバメントの進捗状況について、政府予算、政府支出、選挙結果など10項目を合計1,000点満点で評価する「Open Data Index」を公表した。首位は英国で940点、日本は27位で440点という結果であった14

World Wide Web Foundationは、2012年(平成24年)9月にオープンデータの取組状況について国別に14の指標を10段階で評価する「Open Data Index」(OKFNと名称は同一であるが、指標としては別のもの)を公表した。こちらの指標では米国が首位となっており、日本は19位という結果であった15

Open Data Institute(ODI)も独自の評価指標を作成・公表している。1つは各国政府のオープンデータを測定する「Open Data Barometer」で準備度合、データセット及びインパクト(効果)の3つの尺度で評価を行っている。評価対象77か国のうち、首位は英国で、日本は14位という結果であった。日本は準備度合については高く評価される一方、インパクトについて低い評価となっている16

もう1つはデータそのものを評価する「Open Data Certificate」である。データ提供者がODIからの質問に回答することにより、そのデータの使いやすさについて4段階の評価(Raw, Pilot, Standard, Expert)が与えられるものである17

日本でもオープンデータの評価に係る検討は始まっており、電子行政オープンデータ実務者会議では「オープンデータの取組状況の評価の試行」を平成26年度の検討課題の一つとしているほか、オープンデータ流通推進コンソーシアムでも「オープンデータ化の評価指標」に関する検討を行っている。



12 ODIは2014年2月に大阪、ソウル、シェフィールド(英国)、フィラデルフィア及びハワイに拠点を設けている。

13 https://index.okfn.org/別ウィンドウで開きます

14 https://index.okfn.org/別ウィンドウで開きます

15 http://webfoundation.org/2012/09/introducing-the-open-data-index/別ウィンドウで開きます

16 http://www.opendataresearch.org/project/2013/odb別ウィンドウで開きます

17 https://certificates.theodi.org/別ウィンドウで開きます

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