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第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第2節 ICTのさらなる利活用の進展

(2) 安心・安全な街づくり

ア 防災への取組
(ア)防災についての地方公共団体アンケートの結果

防災についての地方公共団体アンケートの結果では、防災へのICT利活用の取組が比較的進んでおり、現状では運営又は参加・協力している取組として、「防災メール」(71.9%)や、「カメラ・センサー等による防災情報収集」(47.0%)が挙げられている(図表4-2-2-10)。また、現状との比較で今後実施する予定又は検討している取組としては「防災マップ共有」(26.3%)、「災害弱者情報の共有」(23.0%)、「被害情報把握・復旧要請」(22.9%)が挙げられている。

図表4-2-2-10 防災についてのアンケート結果
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成26年)
「図表4-2-2-10 防災についてのアンケート結果」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら
(イ)具体的な事例

我が国では、平成23年3月の東日本大震災を契機に、防災におけるICT活用のあり方について様々な議論や取組がなされており、震災の経験を踏まえ多重化等を図るべく、被害情報把握・復旧要請を行う防災情報システムへのクラウド技術の活用が注目されている。また、安否確認情報へのアクセスにおける利便性向上に向けた取組が進んでいる。防災における携帯電話の役割については、カメラ、位置・方向のセンサーを備えたスマートフォンは、防災マップをはじめとして様々な活用が進められており、災害情報を携帯電話に一斉同報する取組は日本のみならず米国でも広がっている。加えて災害弱者情報の共有については、平成24〜25年度のICT街づくり実証事業「三鷹市コミュニティ創生プロジェクト」(東京都三鷹市)等で既に実証実験がされており、今後の展開が重要である。

A 被害情報把握・復旧要請でのクラウド技術の活用(ふじのくに防災情報共有システムFUJISAN)

被害情報把握・復旧要請等を行う都道府県の防災情報システムとして、静岡県では都道府県の防災情報システムのクラウド利用としては初となる「ふじのくに防災情報共有システムFUJISAN」を整備した(図表4-2-2-11)。発災後72時間は人命救助にとって重要な目安であるが、その時間内に救出・救助や負傷者、避難者への対応等を迅速かつ円滑に実施するため、①応急対策等に必要な情報を関係機関や市町村で共有、②必要な情報を収集・データベース化、③クラウド型GISによって被害状況等を表示し、関係者がリアルタイムに情報共有、が可能となるシステムとして開発された。

図表4-2-2-11 「ふじのくに防災情報共有システムFUJISAN」の概要
(出所)静岡県
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)

クラウド採用により、災害時に県庁自体が被災してもシステム自体が被災するリスクを回避し、平常時の10倍のユーザーがシステムを利用しても運用可能な柔軟性を獲得できたほか、コスト面でも、10億円以上を投資していた従前のシステムに対し、本システム構築は約2億円に抑えられている。なおクラウドへの接続回線は光回線、無線通信、衛星通信で冗長化されている。

大規模災害時には、市町村がFUJISANに災害対策基本法の報告項目を入力し、県が取りまとめて国の対策本部や援助機関へ伝送する。各市町村からまとめて送信される情報に加え、現場職員が携帯電話を用いて送信した写真やGPSの位置情報等も集約可能である。情報収集項目は市町村防災担当による検証等を行い、発災後72時間以内に必要なものに絞るとともに、データ入力を容易にしている。更に、被災者の救援や避難が円滑にできるよう、避難所やヘリポートの位置を、GIS上で共有することも可能であるほか、職員向け安否確認・参集指示の携帯メールの発信機能については、受信した端末は災害情報収集モードに切り替わるようになっている。また、平成25年から公共情報コモンズに接続し、テレビ局等の報道機関への発信、緊急速報発信との連携、民間ポータルサイトとの連携等、多様な手段による情報発信が可能になった。

B 複数の安否情報サイトの一括検索を可能にする取組(J-anpi)

大災害時には通信キャリア、各報道機関、各企業・団体(自治体等)がそれぞれ安否情報の収集・提供を行っているが、利用者側は安否情報の登録先を意識して検索する必要があった。また検索先の点在は、通信回線の効率的な利用の観点からも課題があった。こうした課題に対して、各通信キャリアが提供している災害用伝言板の安否情報、報道機関、各企業・団体(自治体等)が収集した安否情報を一括で検索できる共同サイトとして、平成24年10月から「J-anpi安否情報まとめて検索(以下J-anpi)」の運用が開始された。

J-anpiは、NTTレゾナント株式会社が構築・提供・管理し、NHKやNTTをはじめ、各通信キャリア、報道機関、自治体や企業などの協力を得て運営を行っている。通信キャリア8社の災害用伝言板および自治体、教育機関、報道機関、団体・企業等の収集している安否情報を対象としている5。サーバーを2拠点に分散し、クラウドサービスのオートスケール機能の活用により、J-anpiサイトへの負荷集中にも対応している。J-anpiはパソコン、携帯電話、スマートフォンに対応しており、各企業・団体は汎用性の高いファイル形式(CSV、XML)での安否情報の提供が可能である。

平成26年3月からGoogleパーソンファインダーとの相互検索が可能になり、検索の範囲が拡大した。そのため、通信キャリア各社の災害用伝言板に登録されている安否情報、各企業・団体(自治体等)から提供された安否情報、Googleパーソンファインダーに登録されている安否情報を名前または電話番号により一括検索ができるほか、検索結果が多い場合は、性別、年齢、メールアドレスで絞り込むことも可能となっている(図表4-2-2-12)。

図表4-2-2-12 J-anpiの全体構成と検索結果画面
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
C 位置情報連動型防災マップアプリ「天サイ!まなぶくん」

東京大学・生産技術研究所の加藤孝明研究室では、東京都葛飾区及び神奈川県茅ヶ崎市で地域防災におけるICT利活用について様々な取組をしてきたが、「地域の災害時の状況を正しく理解することを、地域で広めること」が重要と考え、住民自らが現在地の防災情報を確認できるツールとして、株式会社キャドセンターとの共同開発でスマートフォンアプリ「天サイ!まなぶくん」を用意した。この防災マップアプリでは、カメラからの映像に端末のGPS位置情報に基づく防災情報を重ねて表示するという、拡張現実の手法を取っている。このため、自分の今いる場所の洪水時の浸水状況を立体的に理解できる防災マップになった(図表4-2-2-13)。

図表4-2-2-13 「天サイ!まなぶくん」の画面例
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)

アプリは市民や町会で自由にダウンロードして利用することができ、葛飾区の新小岩北地区では防災学習の街歩きの際に本システムを活用して自助・共助の強化を図っている点も評価され、平成25年度の消防庁の防災まちづくり大賞で総務大臣賞を受けた。キャドセンターのアプリを元に、新潟市、大阪府堺市でも実証実験がされており、平成26年からは名古屋市、埼玉県川口市で各地域版のアプリケーションが開発され活用されている。

D 米国の携帯端末向け緊急情報通知システム

米国では、統合的な警報システムである「Integrated Public Alert and Warning System(IPAWS)」の整備が進められてきたが、その一翼を担う携帯端末向け緊急情報通知システムは2012年から本格運用が開始された。携帯電話向け警報であるWireless Emergency Alert (WEA)は、90文字以内のテキストを携帯電話に配信するもので、緊急地震速報等を配信する我が国のエリアメールの影響を受けており、通信の輻輳の影響を受けるSMSや電子メールとは異なる経路で一斉同報を行うため、より確実に警報が届くようになっている(図表4-2-2-14)。

図表4-2-2-14 WEAの画面の例
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)

WEAが扱う警報は3種類で、①国家的な危機に際しての大統領からの警報②ユーザーの地域における異常気象(津波、竜巻、鉄砲水、ハリケーン、台風、砂塵嵐、強風)やその他の脅威③アンバーアラート(行方不明の子供に関する情報)である。大統領からの警報以外は受信しないような設定が可能である。テキストでは警報の発信者、災害等の事象、事象の影響の対象者、対応すべき行動を端的に警報する。必要な場合はそれを契機に詳細情報を参照することを想定している。自然災害についてのWEAは、2012年4月から2013年1月までに「National Weather Service」が2,667件発信されいる。また、2013年4月のボストンマラソン爆弾テロ事件の際には、屋内退避の警報に活用された。アンバーアラートは2013年2月のミネアポリスにおける誘拐事件の救出への貢献等に活用されており、2012年4月〜2013年1月で17件が発信された。なお、IPAWSを利用している郡や市等の公共機関数は280(2014年5月現在)となっている。

(ウ)今後について

総務省では、公衆無線LANの整備やネットワークの強靱化を推進し、災害時に住民が地方公共団体等から災害関連情報等を確実に入手できる情報通信環境を構築するため、平成25年度補正予算において①地域公共ネットワーク等整備事業と、②防災情報ステーション等整備事業の2点からなる地域ICT強靱化事業に取組んでいる。

地域公共ネットワーク等整備事業では災害時の通信・放送網遮断等を回避するため、ネットワークの強靱化や、災害放送実施体制の強化等を行う地方公共団体等に対し、整備費用の一部を補助する。防災情報ステーション等整備事業では、耐災害性の高い公衆無線LAN等の機能を有する防災情報ステーションの避難場所等への整備等を行う地方公共団体等に対し、整備費用の一部助成を行っている(図表4-2-2-15)。

図表4-2-2-15 防災情報ステーション等整備事業の概要

災害時における情報収集や伝達手段の構築は、国土強靱化基本計画、世界最先端IT国家創造宣言等において極めて重大な課題とされており、総務省では、平成23年から実用化された公共情報コモンズ(図表4-2-2-16)の全国普及を推進している。また、平成26年3月から「災害時等における情報伝達の共通基盤の在り方に関する研究会」を開催し、公共情報コモンズの一層の発展に向けて、全国普及に向けた課題や推進すべき対応策などを検討している。

図表4-2-2-16 公共情報コモンズの概要
イ 防犯への取組
(ア)防犯についての地方公共団体アンケートの結果

防犯についての地方公共団体アンケートの結果では、現状では運営又は参加・協力している取組として、「防犯メール」(63.7%)、「防犯マップ共有」(14.5%)が挙げられている。現状との比較で今後実施する予定又は検討している取組としては、「児童・生徒見守り」(6.2%)が大きい(図表4-2-2-17)。

図表4-2-2-17 防犯についてのアンケート結果
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成26年)
「図表4-2-2-17 防犯についてのアンケート結果」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら
(イ)具体的な事例

防犯の取組事例については、防犯マップへの公共データ活用や防犯メールにおけるクリエイティブコモンズの採用を取り上げる。なお児童・生徒見守りについては、平成24〜25年度のICT街づくり実証事業「センサーネットワークによる減災情報提供事業」(長野県塩尻市)において、既に児童が携帯している見守りセンサーの情報を市のセンサーネットワークと組み合わせるといった高度化が進められており、今後の参考となる。

A 公共データを活用した防犯マップ共有の高度化

横浜市泉区の泉交通安全協会では、泉警察署から提供された公共データである交通事故情報を元に希望住民に「泉区ココ事故情報配信メール」として配信し、事故発生情報と、区役所が主催する行事やPTAの活動で収集した危険性を感じる箇所の情報とを紙地図で重ねて交通安全教室で利用していたが、情報の伝達範囲の限界と更新時間を要することという課題があった。

そのためNPO法人Big Mapが開発したWeb GISを用いた事故情報共有プラットフォーム「重ねて安心!マップ」を活用して、交通安全情報をインターネットで無償公開した(図表4-2-2-18)。また、情報の充実のため地域の運輸事業者等にもヒヤリハット情報の提供を呼びかけた。交通安全に関わる情報の一元化で、「危険だと思われている場所では事故は起きていない」「事故が起きている場所でも危険だと思われていない」こと等が明らかになり、新しい課題の発見・共有が可能となった。住民のメール受信者約900名のうち、アンケート回答者132名の9割以上で交通安全の意識と行動が変化したと回答している。(平成25年3月時点)

図表4-2-2-18 泉交通安全協会の取組
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成26年)
B 防犯メールでのクリエイティブコモンズ・ライセンスの採用

警視庁が提供する「メールけいしちょう」は、事件・事案の概要や各種行事内容等を警察署からメール等で配信して、犯罪による被害の拡大防止や利用者の防犯意識の向上等を図るとともに、市民から寄せられた情報を基に、早期事件解決を図るシステムである(図表4-2-2-19)。

図表4-2-2-19 メールけいしちょうの構成
(出典)警視庁ホームページ

このシステムにより公開している情報について、これまでメールの転載等に当たっては、その都度、警視庁犯罪抑止対策本部の承諾が必要だったが、平成26年4月からクリエイティブコモンズ・ライセンスに基づく利用が可能になった。具体的には「警視庁のメールけいしちょう」という出所を表示すれば、第三者による転載、独自アプリによる部分的な配信等の二次利用が可能になった。

ウ 観光への取組

ここでは2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、観光におけるICT利活用の動向を紹介する。なお観光と関連する分野として交通におけるICT利活用の動向についても触れる。

(ア)観光についての地方公共団体アンケートの結果

観光についての地方公共団体アンケートの結果では、現状では運営又は参加・協力している取組として、「有力サイト等を活用した他地域等での観光情報提供」(32.6%)、「多機能端末等を用いた観光情報生成・提供」(22.8%)が挙げられている。また、現状との比較で今後実施する予定又は検討している取組としては、「アプリケーション活用による回遊・滞在時間、消費促進」(16.0%)が目立つ(図表4-2-2-20)。

図表4-2-2-20 観光についてのアンケート結果
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成26年)
「図表4-2-2-20 観光についてのアンケート結果」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら
(イ)具体的な事例
A 観光用スマートフォンアプリの整備

アプリケーション活用による回遊・滞在時間、消費促進に関して、観光案内スマートフォンアプリは、スマートフォンアプリストアでは平成26年4月現在、100種類以上のアプリが提供されている。基本的な機能としては地図表示・ナビゲーションが多くのアプリで搭載されており、AR(仮想現実)による案内機能を備えた物も存在している。この他、訪日観光客を意識して多言語対応されているものも多く、英語の他、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語への対応も多い(図表4-2-2-21)。

図表4-2-2-21 観光用スマートフォンアプリが提供されている地域
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成26年)
B 観光用有力サイト等の多目的な活用

アンケートでは観光における有力サイト等の活用の割合が高く、TwitterやUstream、Flickr等の活用が進んでいることがうかがえる。Twitterを例にとると、日本の公的機関のアカウントに占める自治体のアカウントの割合は高い(図表4-2-2-22)。

図表4-2-2-22 Twitterの公的アカウント数に占める自治体アカウントの割合
(出典)公的Twitterアカウント一覧

また自治体が利用する有力サイト等の中には、多目的利用が可能なものもあり、Twitterの場合、Twitterアラート機能を活用することで、平時は観光情報等を表示し、災害時にのみスマートフォンにプッシュで情報配信するといった利用が可能である(図表4-2-2-23)。

図表4-2-2-23 自治体Twitterアカウントの多目的利用
(出典)Twitter社ホームページより作成
C 観光施設における公衆無線LANの利便性向上

国際ウェブアンケート調査での公共・観光施設における無料の公衆無線LANの利用意向をみると、「使う」と「使ったことがある」を合わせた回答が、日本以外では5割を超えており、これらの国から日本への観光客にとっては、公共・観光施設での無線LANの利用は不自然なことではないと考えられる(図表4-2-2-24)。

図表4-2-2-24 公共・観光施設におけるプライベートでの無料公衆無線LANの利用状況
(出典)総務省「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)
「図表4-2-2-24 公共・観光施設におけるプライベートでの無料公衆無線LANの利用状況」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

この無料公衆無線LANについては、どこに行けば使えるエリアか分からない、エリアごとに接続手順が異なり分かりにくい、エリアごとに認証手続きが必要で煩雑という指摘がされてきた。これらの課題に対して、エリア検索、エリアごとに異なる接続手順の統合、認証手続きを一度で済ませること、を可能にするスマートフォン用アプリ「Japan Connected-free Wi-Fi」」(多言語対応)が平成25年11月から提供される等、課題解決に向けた取組が進んでいる(図表4-2-2-25)。

図表4-2-2-25 無料公衆無線LANの利便性向上用のスマートフォンアプリ
(出典)NTTブロードバンド・プラットフォーム社アプリ利用画面
(ウ)東京オリンピック・パラリンピックへの課題

2020年(平成32年)の東京オリンピック・パラリンピックでは訪日観光客の増加が見込まれるが、2013年(平成25年)にIOCに提出した立候補ファイルでは、大会組織委員会は、無線LAN設備を競技会場、IBC/MPC、選手村等に必要に応じて設置又は増設するとしており、公衆無線LANをオリンピック・ファミリー用ホテル、空港等で使用できるとしている6

総務省としても、①インフラ整備②ICT利活用の推進③我が国の魅力発信の三点で取組を進めている7。①インフラ整備については、世界最高水準の通信インフラ整備を行うべく、観光地、ショッピングセンターや防災拠点等における無料公衆無線LAN整備の促進と、世界最高レベルのICT基盤の更なる普及・発展に向けた競争政策の見直し等を行うこととしている。次に4K・8K、スマートテレビ等を活用した高度な映像サービス実現のための実証を行う予定である。加えてサイバー攻撃情報共有体制の強化や機器間通信(M2M)のセキュリティ対策の推進等を行うこととしている。②ICT利活用の推進では、まず「グローバルコミュニケーション計画」に基づき、多言語音声翻訳システムの翻訳精度を向上させるための研究開発及び同システムを活用し、病院、ショッピングセンター、観光地等への翻訳アプリケーションの社会実装、また同システムと次世代スマートテレビを活用した多言語字幕サービスの提供等を促進し、世界の「言葉の壁」をなくしたグローバルで自由な交流を実現する。次に、オープンデータによるリアルタイムな競技情報等を提供し、オープンデータ・オリンピックを実現する。加えて、ICTを活用した移動・輸送(G空間×ICTの活用)として、ITSを活用した安全で効率的な大会運営の実現、バリアフリー化の推進を行うこととしている。③我が国の魅力発信については、まず、我が国の最先端のICTを全世界にアピールするショーケースを構築し、次に日本の魅力を伝えるコンテンツの制作として、「訪日外国人観光客の増加」、「日本食・食文化の魅力発信」等を目的とする放送コンテンツを海外に発信することとしている。加えて情報発信の強化として、外国人向けテレビ国際放送(NHKワールドTV)の一層の充実・強化を図る。東京オリンピック・パラリンピックの参考となる直近のロンドン大会においても、観光客を想定して競技場や駅での無線LAN整備を進めており、詳細については第2章を参照されたい。

エ 交通への取組
(ア)交通についての地方公共団体アンケートの結果

交通についての地方公共団体アンケートの結果では、現状では運営又は参加・協力している取組として、「オンデマンド交通」(24.1%)、「リアルタイム交通情報システム、又はバスロケーションシステム」(12.7%)が挙げられている。また、現状との比較で今後実施する予定又は検討している取組としては「リアルタイム交通情報システム、又はバスロケーションシステム」(11.5%)が目立つ(図表4-2-2-26)。この二つと関係するオンデマンドバスを取り上げる。

図表4-2-2-26 交通についてのアンケート結果
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成26年)
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(イ)具体的な事例(三重県玉城町オンデマンドバス)

三重県玉城町では平成21年11月に、路線型の「福祉バス」を改善して、高齢者の生活に合ったワゴン車型のオンデマンドバス「元気バス」を導入し、その後も改善を続けてきた8。まず着手したのが運行管理の改善である。乗客からの「元気バス・予約デスク」のオペレータの電話を元に入力するデータについて、東京のオンデマンド交通サーバーに送信して、無理なく運行可能な乗車時間の候補を表示して乗客が選択する方式にした。この方式は従来のデマンド交通に比べ、システムの導入コストが約90%減少して約100万円、システムの運用コストも約70%削減して年間約150万円程度に抑制できる。平成22年からは、自宅のPC、フィーチャーフォンに加え、町内43カ所に設置したFelica対応のカード式予約端末とスマートフォンを導入した。

更に平成24年度補正予算による「ICTを利活用した安心・元気な町づくり事業」において、玉城町は、住民情報関連データ、オンデマンドバスの利用データ、行政情報提供データ、住民が様々なサービスを利用することで発生する行動(履歴)データ等を蓄積、連携可能な「玉城町きずなビッグデータ」を共通プラットフォーム等で構築し、共通ID、情報格付等の民・産・学・公・官での活用による安心・元気な町づくりを推進するに至った(図表4-2-2-27)。

図表4-2-2-27 三重県玉城町事業
(出典)総務省ICTまちづくり推進事業への提出資料

既にオンデマンドバスの利用データにアンケート・インタビューを併用した分析によって、オンデマンドバスにより交友関係が形成されている事例や地域コミュニティが活性化されている事例が確認されており9、今後が期待される。



5 通信キャリア8社(NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンクモバイル、イー・アクセス、ウィルコム)、自治体(東京都、千葉市、兵庫県猪名川町、市川市、流山市、西宮市)、教育機関(静岡県立大学、大阪府立大学)、報道機関(NHK)、団体・企業等(日本郵便、名古屋商工会議所 他)

6 東京五輪立候補ファイル第2巻124頁

7 2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等 総務省準備本部(第1回)資料

8 「「明るく・元気で・長生き」できる町を目指して! 〜ICTを利用した安心・元気な町づくり〜」(全国町村会ホームページ)

9 大和裕幸・鹿渡俊介・本多建(2014)「デマンド交通導入が利用者の交友関係に与える影響の評価-三重県玉城町のオンデマンド交通を対象として」

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