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第2部 情報通信の現況・政策の動向
第2節 情報通信政策の展開

(2) 電波利用の高度化・多様化に向けた取組

ア 移動通信システムの高度化

我が国の携帯電話と広帯域移動無線アクセスシステム(BWA)とを合わせた移動通信システムの加入者数及び人口普及率は、それぞれ1億5,147万加入、118.3%となっており(平成26年3月末現在)、1人で複数台の端末を利用するような使い方も確実に広がってきている。

ここ数年のワイヤレスブロードバンドシステムの世界的な普及拡大を背景に、移動通信システムの世界においても、スマートフォンの利用や、高速データ通信の利用が急激に拡大しており、利用者からは、より高速・大容量で利便性の高い第4世代移動通信システム(IMT-Advanced)の早期導入に大きな期待が寄せられている。

このような背景を踏まえ、国内外の技術進化の動向及び周波数の一層の有効利用を考慮して、第4世代移動通信システムの導入に向け、平成24年4月から情報通信審議会情報通信技術分科会携帯電話等高度化委員会において、技術的条件の検討が行われ、平成25年7月に情報通信審議会から一部答申を受けた25。これを踏まえ、総務省は同年12月に第4世代移動通信システムの一つであるLTE-Advanced(3.9世代移動通信システム(LTE)よりも高速な通信が可能な移動通信システム)の技術を既存の携帯電話用周波数へ導入するために必要な無線設備規則の改正を行う等、実用化に向けた制度整備を進めている。

また、「日本再興戦略」(平成25年6月閣議決定)において、第4世代移動通信システムを早期に実用化するため、平成26年までに新たな周波数帯の割当てを行うこととされており、その円滑な導入に向けて、平成26年1月に、携帯電話事業者4者に対し公開でヒアリングを実施26するとともに、同年2月から3月まで第4世代移動通信システムの導入に関する意見募集を実施した。

さらに、総務省は、フェムトセル基地局の円滑な開設及び適正な運用を確保するとともに、フェムトセル基地局を活用した携帯電話サービスの円滑かつ効率的な提供を実現する観点から、「フェムトセル基地局の活用に係る電波法及び電気通信事業法関係法令の適用関係に関するガイドライン27」を策定しており、BWAシステムによるサービスの普及に伴うBWAサービス用フェムトセル基地局の設置、利用についての要望を踏まえ、平成25年11月に同ガイドラインを改定した。

イ 携帯電話の基地局整備の在り方

総務省では、携帯電話事業者の自主事業では採算が確保できない地理的に条件不利な地域や電波が遮へいされる空間(トンネル等)において、国庫補助を伴う携帯電話等エリア整備事業及び電波遮へい対策事業を実施すること等により、携帯電話の基地局整備を推進しているが、未だに携帯電話が利用できない地域が山間部等を中心に存在しており(平成25年11月時点で、エリア外人口約3.9万人、エリア化要望なしを除くエリア外人口は約3.4万人)、そうした不感地域の早期解消が重要な課題となっている。また、利便性だけでなく緊急時の連絡手段の確保の観点から、居住地域のみならず、トンネル内等遮へい空間内における携帯電話の利用に対する要望が強まっている。さらに近年、船舶に基地局を搭載しての沿岸被災地のエリア確保等移動体への基地局設置等の新たなニーズも萌芽しつつある。

こうした状況を踏まえ、基地局整備の現状と課題を把握するとともに、今後の基地局整備の在り方や具体的推進方策等について検討を行うことを目的として、総務省は平成25年10月から平成26年3月までの間、「携帯電話の基地局整備の在り方に関する研究会28」を開催した。具体的には、①条件不利な地域や遮へい空間における基地局整備の現状と課題、②移動体への基地局設置等新たなニーズ、③携帯電話等エリア整備事業等の在り方を含めた基地局整備の今後の方向性、等について検討がなされた(図表6-2-3-4)。

図表6-2-3-4 携帯電話の基地局整備の在り方に関する研究会の概要

また、整備した基地局の定期検査の点検結果の判定を行う判定員の不足という課題に関しては、関係者によるアドホック会合での検討を経て、登録検査等事業者における判定員の資格要件の緩和に関する取りまとめがなされた。これらの検討を踏まえて、総務省は平成26年2月、電波法の一部を改正する法律案を国会に提出し、同年4月に成立した。(本改正により、登録検査等事業における検査を行うことができる無線従事者資格を有する者の人数は約8万5000人から約30万人(約3.5倍)に増加する見込みである。)

ウ 高度道路交通システムの推進

総務省は、人やモノの安全で快適な移動の実現に向けて、情報通信技術を用いて「人」、「道路」及び「車両」などをつなぐ高度道路交通システム(ITS;Intelligent Transport Systems)により、交通事故削減や渋滞解消等のための取組を進めている。これまで、VICS(Vehicle Information and Communication System;道路交通情報通信システム)やETC(Electronic Toll Collection System;自動料金収受システム)、ITSスポット等で利用される周波数の割当てや技術基準等の策定を行うとともに、これらシステムの普及促進を図ってきた。

具体的には、地上テレビジョン放送のデジタル化により空き周波数となった700MHz帯の一部を車車間通信・路車間通信による安全運転支援システムに割り当て、その技術基準等の整備を行い、平成25年4月から全国で利用可能とするとともに、79GHz帯を用いて歩行者等の小さな物体を検知することができる障害物検知レーダー(79GHz帯高分解能レーダー)の技術基準等の整備を平成24年12月に行い、こちらも利用可能とした。

平成25年10月には、世界のITS関係者が一堂に会するITS世界会議が東京で開催された。会議は、ITSに関する展示やデモ、プレゼンテーション等を通じて、ITSの普及促進やビジネス機会の創出等を図ることを目的としており、総務省は、「命をまもる(700MHz帯安全運転支援システム、79GHz帯高分解能レーダー等)」、「便利に移動する(ETC、VICS、プローブ等)」、「より高度な通信を目指す(ITSを支える通信基盤、次世代無線通信技術等)」という3つの柱のもと、関係企業等と連携して展示を行ったほか、自動走行に必要な要素技術である車車間通信、レーダー等、我が国のITSを支える情報通信技術に関する講演会を開催し、強く世界にアピールした。

最近の取り組みとしては、平成26年度から700MHz帯を活用した安全運転支援システムの早期実用化に必要な検討課題の抽出・検証を行い、実用アプリケーションが十分機能できるよう通信の信頼性や相互接続性、セキュリティ機能の確立を目的とした実証実験を実施する。また、700MHz帯を活用した安全運転支援システムにおける情報セキュリティについて、より専門的な観点から助言を得ることを目的として、平成26年2月から「情報セキュリティアドバイザリーボードITSセキュリティ検討グループ」を開催し、通信される情報の真正性・完全性・機密性が担保されるための情報セキュリティ要件等について検討を行っている。

また、内閣府総合科学技術会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)においても、総務省は、府省横断の取組として、公道での実証を通じ、車車間・路車間・歩車間通信でやりとりする情報やインフラレーダーで収集する情報等を組み合わせたシステムを開発するなど、ICTを活用した高度な自動走行システムを実現するための事業を実施する。

今後も関係省庁とも連携してITSを推進し、交通事故の削減や渋滞の解消等を進めるとともに、運転支援や自動走行システムのための環境整備を行うことで、人やモノが安全で快適に移動できる社会の実現を目指す(第4章第1節3(2)参照)。

エ 防災無線の高度化

同報系防災行政無線は、避難場所、防災拠点や各家庭に向けて防災行政情報を伝える重要な手段となっている。また、双方向通信、データ通信等を可能とし、画像による災害情報の収集、避難場所等との情報交換、文字表示板による防災行政情報の周知など多様な情報提供ニーズに対応可能なデジタル方式が導入されている(図表6-2-3-5)。

図表6-2-3-5 同報系防災行政無線のイメージ

同報系防災行政無線の整備率は、80%弱まで向上している一方、デジタル方式(16QAM方式)の制度化後、約10年を経過しているものの、デジタル方式の整備率は約30%にとどまっている。これは、アナログ方式と比較してデジタル方式の整備費用が高額であることなどが原因に挙げられ、昨今、地方公共団体からは、低廉な通信方式への要望が高まっている。

そこで、デジタル方式のコスト低減と共に小規模な市町村においても導入されやすい防災無線システムとして技術基準の見直しが必要であることから、平成25年5月、情報通信審議会に対し諮問を行い、60MHz帯デジタル同報系防災行政無線システムについて、新たな方式を導入するための技術的条件に関する検討を開始している。

音声同報、Jアラート連携等、基本機能を中心とする簡素で低廉なデジタル方式を導入するために、現行方式と比べ到達範囲が広く、普及実績も大きい「4値FSK」、「QPSK方式」を想定し、検討を行っている。今後、情報通信技術分科会における審議(平成26年夏頃に答申)を経て、平成26年中に制度整備が行われる予定である。

一方、移動系防災無線のデジタル化については、その進捗が十分でない(十数%)ことから、平成25年度から周波数有効利用促進事業として国がその経費の一部の補助を行っている(第6章第2節3(1)ア(ウ)参照)。



25 第4世代移動通信システムの技術的条件−情報通信審議会からの一部答申−:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000157.html別ウィンドウで開きます

26 第4世代移動通信システムに関する公開ヒアリング
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/4g_hearing/index.html別ウィンドウで開きます

27 「フェムトセル基地局の活用に係る電波法及び電気通信事業法関係法令の適用関係に関するガイドライン」の改定及び意見募集の結果:
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban05_02000060.html別ウィンドウで開きます

28 携帯電話の基地局整備の在り方に関する研究会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/mobil_bs/index.html別ウィンドウで開きます

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