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第2部 情報通信の現況・政策の動向
第7節 国際戦略の推進

第7節 国際戦略の推進

1 国際政策における重点推進課題

(1) ICT海外展開の推進

総務省では、我が国のICT産業の国際競争力強化を目的に、ICT企業の海外展開への支援として、海外での各種普及・啓発活動の実施、諸外国情報の情報通信事情の収集・発信等の活動を行っている。

ア 地上デジタルテレビ放送日本方式採用を契機としたICT分野の国際展開

地上デジタルテレビ(以下「地デジ」という。)放送分野においては、官民連携で日本方式(ISDB−T)の普及に取り組んでおり、2006年(平成18年)に日本方式を採用したブラジルと協力しながら、日本方式採用を各国に働きかけている。日本方式には、①自動起動装置で国民の命を守る緊急警報放送、②携帯端末でのテレビ受信(ワンセグ)、③データ放送による多様なサービスといった、他方式にはない強みがある。これらにより、日本方式は、放送をデジタル化するだけでなく、防災・減災に威力を発揮し、さらには、データ放送と連携した遠隔医療・教育の充実等、国家の基盤である通信・放送、医療、国土管理といった分野や社会的課題の解決に貢献できる。日本方式を採用することで、緊急時には命を守り、平常時においては便利な暮らしをつくる、放送に加えてICTを複合化させることで新しい暮らしを実現できると、各国に提案しているところである。その結果、現在、中南米・アジア・アフリカ地域で合計17か国(平成26年5月現在)が日本方式の採用を決定するに至った。日本方式採用国に対しては、トップセールスと連動させながら、政府間会合による協力、国際セミナーの開催、キーパーソンの招へい実施、技術研修の実施等を通して、地デジネットワークの構築といったインフラ面での支援のみならず、放送コンテンツ等のソフト面も含めた放送関連市場への日本企業の国際展開支援を実施している。さらに、日本方式を通じて培った協力関係をICT分野全体に広げることで、ICT分野における日本企業の進出支援(遠隔教育、電子政府、防災ICT等)を行っている。日本方式の展開は、我が国のICT分野の国際展開の一環として位置づけて取り組んでいる。今後も、日本方式採用を契機としたICT分野全体の国際展開の強化に取り組んでいく。(図表6-7-1-1)。

図表6-7-1-1 世界各国の地上デジタルテレビ放送の動向
イ ASEAN諸国へのICTプロジェクトの展開

ASEAN地域は6億人を超える人口を有し、我が国企業の進出意欲も旺盛な、成長著しいICT市場を擁している。またASEAN諸国は、2015年(平成27年)までに「政治・安全保障共同体」、「経済共同体」、「社会・文化共同体」から成る「ASEAN共同体」の実現を目指し、ASEAN域内の連結性を強化する各種取組を進めており、ICTに関してもネットワークや制度の整備に取り組んでいる。そのため、近年総務省は、ASEAN諸国に対する我が国ICTの国際展開に係る取組を特に強化している。

具体的には、2011年(平成23年)11月の日ASEAN首脳会議で採択されたバリ宣言において、我が国の提案により盛り込まれた、ユビキタス環境の実現や先端的なICT利活用を通じてASEAN諸国における防災やデジタルディバイド、環境対策といった様々な社会問題を解決し、経済を活性化させる「ASEANスマートネットワーク構想」を、日ASEAN統合基金(JAIF)等を活用しつつ推進している。

各国別の取組として、主なものは以下のとおりである。

(ア)ミャンマー

ミャンマーは、2010年(平成22年)の総選挙を経た民政移管後、政治・経済改革を進めたことで、外資の流入等を背景とした急速な経済成長を遂げている。ICT分野においても、2015年(平成27年)までに固定電話普及率を15%(約150万回線)、携帯電話普及率を45%(約3000万回線)まで増やすことが目標として掲げられ、通信需要は今後急速に拡大することが見込まれている。

我が国は、同国からの東南アジア競技大会(開催地:ミャンマー、開催時期:2013年(平成25年)12月)に向けた主要3都市(ネーピードー、ヤンゴン、マンダレー)での通信網整備の要請を踏まえて、無償資金協力「緊急通信網整備計画」を実施し(2012年(平成24年)12月交換公文署名)、特に総務省は、本事業の速やかな実施に向けて同国通信・情報技術省のハイレベルに対して要請を行う等、短期間での通信環境改善に貢献した。

また、同国は2013年(平成25年)1月に同国電気通信市場への参入を全4社(ミャンマー郵電公社(MPT)、ヤタナポン(地元資本)、外資2社)に認める意向を示し、同年6月に外資2社が新規に参入するために必要な通信事業ライセンスの入札を行った。その結果、テレノール(ノルウェー)及びオーレドゥー(カタール)の2社が落札し、現在参入準備を進めている。これに対し、MPTはこれら新規参入の2社に対抗するため、外資企業と業務提携を行うこととし、現在パートナー選定の作業を行っている。このように、民政移管後、本邦企業がミャンマーへの進出を進めている中で、情報通信インフラ整備はICT企業以外にとってもビジネス環境の整備の面から喫緊の課題であるため、引き続き同国への支援を進めていく。

(イ)ベトナム

総務省は、2010年(平成22年)にベトナム情報通信省との間で「情報通信分野における包括的な協力関係の推進に係る覚書」を交換し、2012年(平成24年)6月にはソン情報通信大臣が来訪した際に意見交換を行うなど協力関係の構築を進めてきている。

協力の具体的な取組としては、環境情報等(大気、水質、水位等)を収集・分析するセンサーネットワークシステムの導入が挙げられる。総務省は、2013(平成25年)年8月、11月、2014年(平成26年)3月に総務省とベトナム情報通信省とが共同で開催した、同システム導入のための検討会を今後も引き続き開催し、具体的な導入方法の検討を進めていく。

(ウ)インドネシア

ASEAN諸国の中でも最大の人口、経済規模を有するインドネシアに対しては、2010年(平成22年)に、総務大臣とインドネシア通信情報大臣との間で「日・インドネシア間の情報通信分野における包括的な協力に係る覚書」の交換を行うなど協力関係の構築を進めてきている。

協力の具体的な取組としては、ICTを利活用して防災・減災を図るシステム(防災ICT)の導入が挙げられる。インドネシアでは、災害時における住民への情報伝達の不十分さが被害の拡大や混乱を招いており、迅速かつ正確な情報伝達が必要とされている。そのため、防災分野における数々の知見・経験を有する我が国のICTを活用することで、防災情報の収集、分析、配信を一貫して行うことができる防災ICTは非常に有効である。また、防災ICTの導入により、防災情報が地図データと統合され、その結果を防災関連省庁がリアルタイムで閲覧可能となることから、防災ICTの導入は防災関連省庁の意思決定の支援にもつながる。更には、防災ICTにより防災情報のデータ形式の変換、統一が行われることで、関連省庁やメディアが様々な防災情報を扱うことが容易となる。

総務省は、同国における防災ICTについて2011(平成23)、2012年度(平成24年度)に実証実験を行い、2013年(平成25年)4月には、総務大臣とインドネシア通信情報大臣との間で、防災ICTの同国における早期導入に向けて相互に協力することで合意している。現在、インドネシア通信情報省、国家防災庁等と連携して、同国での防災ICTの実導入に向けて協議を行っている。

ウ 放送コンテンツの海外展開支援

放送コンテンツの海外展開の促進は、「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)において「国家戦略」として位置付けられている「クール・ジャパン戦略」の大きな柱の一つである。その中では、「5年後(2018年)までに放送コンテンツの海外事業売上高を現在の3倍近くに増加させる」という国家目標を掲げており、官民連携の下、国を挙げて取り組みを強化している。

具体的には、平成24年度補正予算事業として、日本と海外の放送事業者等による番組の国際共同製作や映像コンテンツのローカライズ(字幕付与、吹替え等)に対する支援を実施している。また、平成25年度補正予算事業として、日本の放送局や番組製作会社等が、異業種を含む周辺産業との連携等による新たなビジネスモデルの構築、地域の活性化などを目的とした放送コンテンツを製作し、継続的に発信するためのモデル事業を実施している。

なお、平成24年11月より開催していた「放送コンテンツ流通の促進方策に関する検討会」における取りまとめを受け、平成25年8月、放送事業者、権利者団体、商社、広告代理店といった幅広い関係者が参画した官民連携のオールジャパンの推進体制として設立された「一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ(ビージェイ))」は、放送コンテンツの海外展開により、「クール・ジャパン戦略」や「ビジット・ジャパン戦略」をはじめとする国家戦略に基づく日本の成長の促進に寄与することを目的としており、ASEAN主要国で地上波等の効果的なメディアで放送枠を確保し、魅力ある日本の放送コンテンツを継続的に放送することを当面の戦略としている(第6章第2節2(1)ア①参照)。

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