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第2部 情報通信の現況・政策の動向
第7節 国際戦略の推進

(2) ICT海外展開のための環境整備/円滑な情報流通の推進のための環境整備

ICT海外展開や円滑な情報流通の推進のための環境整備として、総務省は、サイバー空間に関する国際的なルールづくり、安心・安全な情報流通促進に向けた国際連携、ICT分野における貿易自由化の推進、戦略的国際標準化の推進に取り組んでいる。

ア サイバー空間の国際的なルールに関する議論への対応
(ア)サイバー空間の国際ルールづくり

インターネットは、その上で多様なサービスのサプライチェーンやコミュニティなどが形成され、いわば一つの新たな社会領域(「サイバー空間」)となっており、インターネットは世界的に社会・経済活動に不可欠なインフラとなっている。また、いわゆる「アラブの春」に代表されるような民主化運動においてもインターネットやソーシャルメディアが大きな役割を果たしていると言われている。こうしたことを受け、新興国・途上国においては、ネットへの規制や政府の管理を強化する動きが強まっている一方、欧米諸国は、首脳や閣僚が主導して情報の自由な流通やインターネットのオープン性等の基本理念を表明しており、2011年(平成23年)以降、インターネットに関わる様々な国際会合が開催され、サイバー空間の国際ルールの在り方に関する議論が活発に行われている。

2012年(平成24年)12月には、電気通信に関する国際連合の専門機関である国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)において、各国政府を法的に拘束する国際電気通信業務に関する国際的な取り決めである国際電気通信規則(ITR:International Telecommunication Regulations)の改正審議を行うため、世界国際電気通信会議(WCIT-12:World Conferences on International Telecommunications)が開催され、インターネットへの国やITUの関与のあり方や、セキュリティや迷惑メール対策の国際ルール化が主な争点となったが、国際的な合意の形成にまでは至らず、最終的には開発途上国を中心とした支持により投票を経て改正ITRが採択された(我が国を含む、欧米諸国等55か国が署名せず)。

これらの議論に対して、総務省は、サイバー空間の国際的なルールづくりに関し、①民主主義を支えるだけでなく、イノベーションの源泉として経済成長のエンジンとなる情報の自由な流通に最大限配慮すること、②サイバーセキュリティを十分に確保するためには、実際にインターネットを用いて活動しており、ネットワークを管理している民間企業や市民社会など民間部門の参画(マルチステークホルダーの枠組)が不可欠であること、の2点を重視し、二国間及び多国間会合における議論に積極的に参加している1

また、2013年(平成25年)10月にソウル(韓国)で、我が国を含む約90カ国の政府機関や民間企業、国際機関等の参加の下開催された「ソウル国際サイバー会議」において、オープンで安全なサイバー空間を通じた世界の繁栄について議論がなされ、サイバー空間の課題解決のためには、①マルチステークホルダーの参加が基本であること、②国際協力・連携が必要であること、③キャパシティ・ビルディングが重要であること、について見解が一致した。

(イ)サイバー対話

サイバーセキュリティに関する議論については、政府横断的な取組(ホールガバメントアプローチ)が行われており、日米間では、2013年(平成25年)に第1回を開催した「日米サイバー対話」の第2回会合が2014年(平成26年)4月に開催され、重要インフラに係るサイバーセキュリティ、国内政策動向、サイバー防衛、国際協力等について議論された。

また、日英間では、2012年(平成24年)6月に開催された「日英サイバー協議」において、日印間では、2012年(平成24年)11月に開催された「日インド・サイバー協議」において、それぞれ、サイバー空間における国際的なルールづくりに関する両国での連携について議論した。

イ 情報セキュリティの向上等安心・安全な情報流通促進に向けた国際連携の推進

総務省では、国内外のインターネットサービスプロバイダ(ISP)、大学等との協力により、DDoS攻撃などのサイバー攻撃、マルウェア等に関する情報を収集するネットワークを国際的に構築し、諸外国と連携してサイバー攻撃の発生を早期に感知し、即応を可能とする技術について、その研究開発及び実証実験(PRACTICEプロジェクト)を実施している。これまで、米国、ASEAN等の海外諸国と連携しプロジェクトを推進している。

ウ ICT分野における貿易自由化の推進

世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)を中心とする多角的自由貿易体制を補完し、2国間の経済連携を推進するとの観点から、我が国は経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)や自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)の締結に積極的に取り組んでいる。2014年(平成26年)4月末現在で、シンガポール、メキシコ、マレーシア、タイ、チリ、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、ASEAN、スイス、ベトナム、インド及びペルーとの間でEPAを締結しているほか、現在、環太平洋パートナーシップ(TPP:Trans Pacific Partnership)協定、日中韓FTA及びRCEP(東アジア地域包括的経済連携)といった広域経済連携交渉を行うとともに、オーストラリア、モンゴル、カナダ、コロンビア及びEUとの間でEPA締結に向けた交渉を行っている(韓国とは交渉中断中、湾岸協力理事会(GCC:Cooperation Council for the Arab States of the Gulf)諸国とは交渉延期中)。日中韓FTA、RCEP、日EU・EPA交渉は2013年(平成25年)から交渉開始し、RCEPについては2015年(平成27年)末までに交渉を終えることが目指されている。いずれのEPA交渉においても、電気通信分野については、WTO水準以上の自由化約束を達成すべく、外資規制の撤廃・緩和等の要求を行うほか、相互接続ルール等の競争促進的な規律の整備に係る交渉や、締結国間での協力に関する協議も行っている。

エ 戦略的国際標準化の推進

情報通信分野では、技術開発のスピードの加速化や製品・サービスの高度化が急速に進展しており、国際標準化活動においても、標準策定に要する時間が比較的短い民間主体のフォーラム等で標準が策定され、そこで策定された標準を公的な標準化機関で追認する例が見られるようになっている。

総務省では、こうした標準化を取り巻く環境の変化を踏まえ、中長期的な研究開発戦略や諸外国の政策等を踏まえた標準化の重点分野の在り方や標準化を促進する際の官民役割分担の在り方について情報通信審議会に諮問し、平成24年7月に最終答申を受けた。

この最終答申では、標準化の重点分野として、当面はスマートグリッド、デジタルサイネージ、次世代ブラウザが、中長期的には新世代ネットワーク(次世代ワイヤレスネットワークを含む)が示され、各分野の標準化の必要性や達成目標等を具体化した「標準化戦略マップ」が策定された。また、官民の役割分担については、①標準化活動における効果的な取組として国際連携・協調の強化等、②標準化活動におけるリスクマネジメントの考え方として、外部有識者から成る評価の枠組みの整備等、③標準化人材の確保については、経験豊富な人材と若手人材との組み合わせによる活動の継続や、標準化人材の適切なキャリアパスの検討等が挙げられた。また、④標準化活動の推進における官民連携の在り方などについては、支援対象等を精査し評価の在り方を明確化した上で、民間単独での実施が困難な部分について政府が支援することや、民主導で対応すべき部分については一層主体的に取り組むこととされた。

この最終答申を踏まえ、消費者・利用者の利便性向上や産業の国際競争力強化等の実現に向け、戦略的に国際標準化活動を推進している。



1 サイバー空間の在り方に関する国際議論の動向:
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/cyberspace_rule/index.html別ウィンドウで開きます

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