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第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第2節 ICTのさらなる利活用の進展

(1) ICT街づくりの推進に向けた取組

ア 街づくり全体におけるICT利活用の意向についての地方公共団体アンケートの結果

地域におけるICT利活用の推進状況等を把握するため、地方公共団体(都道府県および市区町村)あてにアンケート調査を行った4

地方公共団体が現在街づくりの観点から特に課題と認識している事項については、複数回答可で質問した場合「少子高齢化」(77.5%)、「産業・雇用創出」(63.6%)、「安全・安心な街づくり(犯罪抑止、耐災害性強化など)」(58.3%)の順となり、昨年と同様の傾向である(図表4-2-2-1)。

図表4-2-2-1 現在街づくりの観点から特に課題と認識している事項
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成26年)
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街づくりの観点からの最も重要となる課題については、「少子高齢化」(34.2%)が最も多く、次いで「産業・雇用創出」(18.0%)、「安全・安心な街づくり(犯罪抑止、耐災害性強化など)」(17.6%)の順となっている(図表4-2-2-2)。

図表4-2-2-2 街づくりの観点からの最も重要となる課題
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成26年)
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ICTを活用した街づくりの認知の状況については、認知が進んだ順から並べて割合をみると、「最近の議論などを含め、詳しく知っている」(3.1%)、「知っていたつもりだが、知らなかった考え方、情報も多い」(38.3%)、「聞いたことがある程度で、内容はあまり知らなかった」(51.7%)となり、「知らなかった(今初めて知った)」(4.8%)である(図表4-2-2-3)。

図表4-2-2-3 「ICTを活用した街づくり」認知
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成26年)
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昨年の調査と比べ、「知っていたつもりだが、知らなかった考え方・情報も多い」が増加し、「知らなかった(今初めて知った)」が減少した。この点に関して、総務省のICT街づくり推進事業では、地域実証プロジェクトの実施状況を把握するとともに、地方自治体や地域産業界を含む地域実証プロジェクト関係者との意見交換を通じ、同関係者の声を今後の政策へ反映するため、平成25年4月から全国各地で「ICT街づくり推進会議地域懇談会」を開催している。

またICTを活用した街づくりの取組については、「既に取組を推進している」、「取組を進める方向で、具体的に検討している」、「関心があり、情報収集段階である」という積極的な回答を合わせると28.8%と3割近くに上る(図表4-2-2-4)。

図表4-2-2-4 「ICTを活用した街づくり」取組
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成26年)
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ICTを活用した街づくりに期待する分野では、「安全・安心分野(犯罪抑止・耐災害性強化)」(52.3%)、「医療介護、介護、福祉、教育等の生活分野」(40.5%)、「個別分野に捉われず、共通の方針として実施したい」(37.2%)、「産業分野(農林水産業・観光・地場産業)・雇用分野」(28.6%)の順である(図表4-2-2-5)。

図表4-2-2-5 「ICTを活用した街づくり」期待する分野
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成26年)
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イ ICT街づくり推進事業の横展開

総務省では、東日本大震災の経験を踏まえた災害に強い街の実現、地域コミュニティの再生・地域活性化等、地域が抱える様々な課題を解決する取組を行っている。平成25年1月から開催している「ICT街づくり推進会議」では、2018年(平成30年)頃の「ICTスマートタウン」の普及展開に向けて、主要拠点において「ICTスマートタウン」プロジェクトの展開・加速化を行うこと、モノ、時間、場所等、あらゆるものをIDで管理する、広域連携や官民連携のための共通プラットフォームを2015年に実現すること、実証プロジェクトで得られた成果を普及展開するための体制整備やグローバル展開方策の検討等を行っている。

平成26年2月からICT街づくり推進会議(以下、推進会議)の下に普及展開ワーキンググループが設置され、成功モデルの普及展開方策、ICT街づくり共通プラットフォームの仕様等について、より専門的な観点から検討を行っている。主な検討事項は、(1)ICT街づくりの実証プロジェクトの推進、(2)ICT街づくりの成功モデルの普及展開方策、(3)ICT街づくり共通プラットフォームの仕様である。また平成25年12月から推進会議の下に共通ID利活用ワーキンググループが設置され、推進会議において検討される共通プラットフォームの実現に不可欠な「共通ID」を支える基盤として、民間サービスの共通インフラとしての幅広い利活用も期待される公的個人認証サービスについて、通信・放送分野における当該サービスの利活用のあり方と、当該利活用の促進策を検討し、「共通ID」の普及促進を図ることを目的としている。

ウ 地域実証プロジェクトの実施

「ICTスマートタウン」の実現にあたっては、持続可能な街に関する明確な経営戦略の下、民・産・学・公・官による連携・協働により、災害に強いワイヤレスネットワーク、クラウドサービスや共通ID等と連携しつつ、センサー等によるリアルタイムデータや地方自治体等の行政保有データ等の多種多様なデータが、平時には街の自立的な発展を支え、災害時には防災・減災のために活用されることを可能とするICTシステムが必要である。

このようなシステムが社会に実装されるためには、国内外を含めた街と街の間における連携を可能としつつ、ビッグデータ等の新たなICTの活用に伴う課題の抽出とその解決、その効果の見える化による関係者間の連携促進や個人に関するデータの取扱いに対する不安感の払拭等を図っていく必要がある。

このため、総務省では「ICT街づくり推進事業」における実証事業として提案の公募を行い、平成24年度事業として、三鷹市コミュニティ創生プロジェクト(東京都三鷹市)、柏の葉スマートシティにおけるエネルギー・健康・防災・共通統合プラットフォームの構築(千葉県柏市)、センサーネットワークによる減災情報提供事業(長野県塩尻市)、平常時の利便性と急病災害時の安全性を提供する市民参加型ICTスマートタウン(愛知県豊田市)、災害時支援物資供給機能を兼ね備えた6次産業化コマース基盤構築事業(静岡県袋井市)の5事業を採択した。そして平成24年度〜25年度でこの5事業を含めて28件の実証事業(地域実証プロジェクト)を行っている(図表4-2-2-6)。

図表4-2-2-6 ICT街づくり推進事業における実証事業(平成24〜25年度)
(出典)総務省「ICT街づくり推進会議」(第5回)資料より作成

平成25年度のICT街づくり推進事業では、平成24年度「ICT街づくり推進事業」の成果を協力・連携して広く普及展開してしてくための「ICT街づくりプラットフォーム形成事業」(東京都三鷹市が代表)と、大都市圏での大規模広域災害に備えるための「オープンデータ、ユビキタス技術を活用した市民防災情報流通モデル事業」(神奈川県横須賀市)の二つの実証事業を行っている。そしてICTを活用した新たな街づくりでは、実証から実装へという流れの中で、成果の国際展開を推進している(図表4-2-2-7)。

図表4-2-2-7 ICTを活用した新たな街づくりの推進
(出典)総務省「「スマート・ジャパンICT戦略」骨子」
(ア)ICT街づくりプラットフォーム形成事業

平成24年度ICT街づくり推進事業の成果を有する自治体(東京都三鷹市、千葉県柏市、長野県塩尻市、愛知県豊田市、静岡県袋井市)が、それぞれの取組を更に高度化しつつ、地方公共団体間で協力・連携し、これまでの成果を広く普及展開するための共通基盤(プラットフォーム)を形成するための事業を実施する(図表4-2-2-8)。

図表4-2-2-8 ICT街づくりプラットフォーム形成事業の概要
(出典)総務省報道発表「平成25年度 ICT街づくり推進事業に係る委託先候補の決定」(平成25年)
(イ)オープンデータ、ユビキタス技術を活用した市民防災情報流通モデル事業

神奈川県横須賀市が中心となり、多数の傷病者が同時に発生する大規模災害を対象とし、最先端のICT/ユビキタス技術、Ucodeやオープンデータを利用し、既存の仕組み・運用と連携しながら救急・防災活動支援が可能なシステムを構築する。これにより、発災時において消防司令室、救急隊、医師、市民が連携・協働し、災害に頑健な街づくりを推進する。なお、事業実施に当たっては、一般市民協働型のハッカソンイベントや市民防災訓練を通じて、地域住民の積極的な参加を促進する(図表4-2-2-9)。

図表4-2-2-9 オープンデータ、ユビキタス技術を活用した市民防災情報流通モデル事業の概要
(出典)総務省報道発表「平成25年度 ICT街づくり推進事業に係る委託先候補の決定」(平成25年)


4 調査概要は第3章第1節4.(「G空間×ICT」の活用推進)を参照のこと。

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