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第2部 情報通信の現況・政策の動向
第11節 海外の動向

(5) インドの情報通信政策の動向

インドの通信サービス産業は、1991年以降の経済自由化政策の流れのなかで規制緩和・競争導入が段階的に実施され、特にモバイル分野の発展を中心としてインドの経済成長の一翼を担った。しかし、インド経済が2011年以降に減速傾向を見せ始め、それに呼応するように通信サービス市場の成長も鈍化傾向を見せ始めた。折しも技術やサービスが大きく変化するなかで新しい電気通信政策・制度を整えることの必要性が指摘されており、インド政府は市場に新たな成長局面をもたらすため、2012年5月に「2012年国家電気通信政策(National Telecom Policy - 2012)」を発表した。

これは今後10年間のインドICT分野の方向性を決定付ける規制・政策の枠組みであり、その最大の目標は「安心安全で信頼でき、手ごろな価格で利用でき、高品質で融合された通信サービスが、いつでもどこでも利用できるようにし、それが社会経済全体の発展を加速させること」となっている。さらに、同目標の実現によって「ICT市場の多くの分野で多様な雇用機会を生み出し、より多くの投資を引き付けるような環境の構築」を目指している。

ア 農村部の電気通信普及率の向上

現在インドにおいては、「2012年国家電気通信政策」において示された「農村部の電気通信普及率の向上−2017年までに現状の39%から70%に、2020年までに100%にまで高める」という目標に向け、様々な取組みが推進されている。

インドのユニバーサル・サービス義務基金(Universal Service Obligation Fund:USOF)は2003年に設立され、当初は基本的な固定電話サービスのみをその対象としていた。しかし、インド政府は、近年の携帯電話サービスの急速な普及や、将来的なブロードバンド・サービスの普及といった変化の激しい通信市場の状況に対応するため、2006年に「インド電信法」を改正し、移動体通信とブロードバンド・サービスに関しても、USOFに基づく農村部支援を可能とすることとした。これに基づいて政府は「共有モバイルインフラスキーム(Shared Mobile Infrastructure Scheme)」を立ち上げ、USOFを投入して複数のキャリアが共有できるモバイルインフラの効率的かつ迅速な構築を進めている。また、政府は「全国光ファイバ網(National Optical Fiber Network)計画」を決定し、USOFを投入して全国25万の村落全てへの光ファイバ網の構築を進めており、モバイルサービス及びブロードバンド・サービスの普及による農村部支援を実現しようとしている。

イ モバイルバンキング普及促進政策

インド政府は、「2012年国家電気通信政策」において、「エンパワーメントの手段として携帯電話をあらためて位置づける」という目標を設定し、農村部に携帯端末をさらに普及させるとともに、モバイルバンキング等の携帯電話の利活用促進により国民の社会的・経済的能力を高めようとしている。

インド政府は、ショートメッセージサービス(SMS)や自動音声応答(IVR)サービス、USSD等の様々なメッセージ機能を利用してモバイルバンキングサービスの普及を後押しする方針をとっている。2013年11月には、インド電気通信規制庁(Telecom Regulatory Authority of India:TRAI)が、USSDを活用して通信事業者がモバイルバンキングサービスを提供する際に徴収する手数料について、1セッション当たり1.5INRsを上限とするよう指示した。USSDはSMSと似ているが、携帯端末が通信可能となっている場合にのみメッセージがやり取りされ、即時性が高く、地域に限定した内容を扱う情報サービスで活用されている。TRAIは、国民全体を金融システムに取り込むため、モバイルバンキングを活用していきたいとしており、手数料の上限の設定により、銀行と通信事業者のやり取りを加速化させようとしており、今後の展開に期待がかかっている。

ウ 通信機器製造促進政策

インド政府は、近年、通信機器及び電子機器の製造促進政策を打ち出してきている。その理由としては、①国家安全保障上の問題(ネットワークのセキュリティと安定のため、ネットワークの一貫性を確保し、外部からの攻撃を阻止する)、②輸出入の均衡(輸入過剰の現状を打破する)、③雇用の創出、④イノベーションの促進等が挙げられる。

「2012年国家電気通信政策」では、①国内の製造業を強化し、インドをグローバルなハブにすること、②設計、R&D、知財、試験、標準化、製造のエコシステム構築を促進し、通信機器の国内製造のバリューチェーンを生み出し、インドの通信分野の需要を満たすこと、③具体的な数値目標として、国内製品比率は2017年までに60%、2020年までに80%、付加価値は2017年までに45%、2020年までに65%、④WTOのコミットメントに沿いつつ、国内製品への優遇措置を設けること等の目標が示された。

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