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第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
第3節 我が国ICT産業の国際競争力強化に向けた方向性

(3) 政府の取組

ア 世界最先端IT国家創造宣言

平成26年6月に工程表が改定された世界最先端IT国家創造宣言においては、2015年までに機動的で実効的な官民連携体制等を通じたICT国際競争力強化・国際展開イニシアティブを推進し、我が国ICT関連企業の国際競争力強化・国際展開に資する強固な官民連携体制を構築することで、我が国が優れた技術を有する省エネルギー、再生可能エネルギー等をITで組み合わせたスマートコミュニティ等の国際展開を官民一体となって推進することとしている(図表2-3-3-6)。

図表2-3-3-6 世界最先端IT国家創造宣言
イ 総務省の取組

これらの状況を踏まえ、総務省においても我が国の優れたインフラシステムの輸出を成長戦略の要と位置づけている。インフラシステム輸出においては、相手国の歴史や文化、地政学的な状況まで視野に入れた地域毎のニーズを汲み取り、国内各省庁とも連携して取り組むことが重要である。

特に、その中においてICTは社会インフラシステムの神経系であることから、我が国の先進的なICTシステムを他の社会インフラシステムを活かした国際競争力のある提案を行うことが重要であると考えられる。すなわち、水資源不足や食料危機など世界的な資源問題、急速に進む高齢化といった社会的課題について解決する先進的モデルを「ICTインフラシステム」として同様の問題を抱える国々に展開し、当該国の課題解決に貢献するとともに、我が国産業界の国際競争力の強化を図る、「社会的課題の解決に資するICTインフラシステムの海外展開」を促進することが求められている。また、地震等の大規模災害の多い我が国の経験を生かした高度な防災インフラや、都市・生活インフラ(住宅、建築物、ライフライン)、産業・エネルギーインフラ(石油・天然ガスプラント)、ICTインフラの組み合わせを促進することも有益であろう。

このような認識のもと、我が国企業の進出意欲も旺盛なASEAN地域等への展開を意識した上で、総務省では次のような分野に対し取組を行っている。

(ア)ICTによるインフラ整備と利活用

総務省の具体的な取組としては、ASEAN地域を対象として、域内のブロードバンド基盤整備と公的ICTシステム(防災、環境、医療等)整備をセットにした「ASEANスマートネットワーク構想」の実現等を通じて成功事例の構築に向けて、ASEAN地域を中心として、様々な分野において、ICTを利活用した実証実験を実施している(図表2-3-3-7)。

図表2-3-3-7 総務省におけるICTインフラ展開案件

フィリピン共和国においては2013年11月5日、同国における地上デジタルテレビ放送の方式として、日本方式(ISDB―T)が正式に採用されASEAN初の日本方式採用国となった。この日本方式の採用に当たっては、日本方式の特徴である防災・減災面への有効性が高く評価されており、2013年11月に発生したフィリピン中部における台風ハイエン(現地名ヨランダ)による被害をうけ、防災分野に関する我が国からの協力支援に対する期待が同国から寄せられている。加えて、2014年1月には、新藤総務大臣を団長とする官民ミッション(70社約170名の日本企業が参加)がフィリピンに派遣され、現地で地デジ国際セミナーを開催し、防災ICTをはじめ、日本の優れたICTをPRした。また、データ放送セミナー(同年3月)及び防災ICTワークショップ(同年5月)を開催するとともに、政府間協議を継続することにより、日本企業の進出を促進し、我が国のICT産業の国際競争力の強化を目指している。今後も、強力なトップセールスと効果的に連動させつつ、プロジェクト展開に関して具体的な成果を上げるべく、モデル実証事業・ニーズ調査事業等の取組を包括的に実施することで、日本企業の積極的な国際展開を支援していく(図表2-3-3-8)。

図表2-3-3-8 フィリピンにおけるインフラ展開

ベトナムにおいては、近年急速な経済発展・都市化を続けている発展途上国の喫緊の課題である環境問題対策・防災・エネルギー効率向上のため、日本が提案した防災・環境モニタリングシステムの実証実験を行っている。また、インドネシアにおいても、住民や防災関連省庁への迅速かつ確実な防災情報の伝達を目的として、防災情報を地図データと統合し、防災情報の収集・分析・配信を一貫して行うシステムの実証実験を行い、同国の政府と実導入に向けた協議を行っている。

加えて、医療分野においても取組み行っており、発展途上国においては医療環境の整備が進められているものの、ラオスにおいては、妊産婦死亡率がASEANの中でも高い状況にある。そこで、総務省では我が国の地方部の病院で構築された、妊産婦の胎児心拍数や子宮収縮を中央病院の専門医が診療することで妊産婦が地方部にいながらにして診察を受けることが出来るシステムを、同国にて実証実験を行っており、実導入を目指している。

(イ)日本型郵便インフラシステムの海外展開

ICTインフラ分野に加えて、郵便分野においてもインフラシステムの海外展開の取組みを進めている。

日本においては、郵便を出せば、日本全国、基本的に翌日か翌々日にはほぼ確実に届き、多くの国民利用者はそれを当たり前のこととして郵便サービスを利用している。しかしながら、世界的に見ると、日本ほど迅速かつ確実に郵便が届く国はむしろまれであり、我が国の郵便の品質は国際的にも高い評価を受けている。

こうした状況を踏まえ、総務省においては、政府の「インフラシステム輸出戦略」の一環として、郵便事業の近代化・高度化に取り組む新興国・途上国に対し、我が国の郵便の優れた業務ノウハウや関連技術の提供を通じて、相手国の社会経済の発展や両国間の関係強化等に繋げるよう、日本型郵便インフラシステムの海外展開に取り組むこととしている。この取組みに当たっては、郵便業務に関する技術指導などの協力と併せて、郵便や郵便局窓口を活用した各種ビジネス・サービスを相手国に提案することによって、当該ビジネス・サービス分野への参入機会の創出を図り、関連する知見を有する我が国の企業の円滑な参入を促すこととしている。

具体的な展開先として、現在、ミャンマー連邦共和国との協力が進んでいる。平成25年度に調査した結果によれば、ミャンマーにおいては、同国の3大都市(ヤンゴン、ネーピードー、マンダレー)のそれぞれの都市内及びこれらの都市間において、10日以内に届かない郵便物が約1割に達し、また、届いた郵便物についても、届くまでの日数が2〜6日程度でばらつきがあるなど、そのサービスの品質は十全とは言えない。その改善に向けて、平成25年以降、総務省はミャンマー通信・情報技術省との間で、大臣間の会談をはじめとしたハイレベルでの協議、また実務レベルでの協議を重ね、平成26年4月、郵便分野における協力に関する覚書を締結した。本覚書に基づき、同年5月より、日本から郵便に関する専門家を現地に派遣して業務指導を行うなど、具体的な協力プロジェクトを開始している。また、ベトナムとの間でも、郵便分野における協力内容の具体化に向けた実務的協議を進めている。

(ウ)ICT国際競争力強化・国際展開に関する懇談会

総務省では、ICTを活用することにより、世界が直面する地球的課題や各国の抱える社会的課題を解決するとともに、日本経済の成長及び国際社会への貢献を同時に実現することを目的とし、平成25年12月に「ICT国際競争力強化・国際展開に関する懇談会13」を立ち上げた。同懇談会において、複数回の親会及びワーキンググループを開催し、民間企業や大学等の有識者に精力的に議論いただき、平成26年6月に同懇談会最終報告書「ICT国際競争力強化・国際展開イニシアティブ」がとりまとめられた(図表2-3-3-9)。

図表2-3-3-9 「ICT国際競争力強化・国際展開イニシアティブ」の時間軸

同報告書は、我が国が持続的成長・発展に向けた「歴史的な分岐点」に立っているという危機感を関係者全員が共有したうえで、2020年に向けたビジョンとして、①世界をリードするリアルとバーチャルが融合した「知識・情報」をあらゆる産業分野、社会経済活動において戦略的に活用する「知識情報立国(スマート・ジャパン)」を目指すとともに、②「何を戦うか(分野)」、「どこで戦うか(市場)」、「どこと戦うか(競争相手)」を明確にした戦略的視点と機動的で実効的な官民連携体制のもと我が国のICT国際展開を飛躍的に促し、ひいてはICT国際競争力の強化につなげていくことを目指している。

戦略立案の基本的考え方としては、①ICTにより我が国が抱える社会的課題、世界が直面する地球的課題、相手国が抱える課題を三位一体で解決すること、②相手国の総合的な課題解決に向け、インフラ、防災、コンテンツ、医療、教育、資源、電子政府、金融等のアプリケーションをパッケージで提示すること、③「安心・安全」、「おもてなし」などをキーワードとした新たなアーキテクチャを創造していくこと、及び④産官学がオールジャパン体制を構築して取り組むこととしている。

具体的施策としては、①日本発グローバル展開モデルの構築や日本ブランド確立に向けた国内外のICTショーケース整備などの「ビジネス環境整備」、②初等教育段階からのプログラミング教育の実施や外国人留学生等とのネットワーク強化などの「ICT人材育成・活用」、③既存の技術・システムと将来有望な技術を峻別した国際展開や出口戦略を重視した標準化の戦略的な推進などの「「技術外交」の強化・展開」、④官民ミッションの派遣(トップセールス)や展開対象国に官民ローカル・タスクフォースを構築すること、国際展開に資する資金共有等の仕組みの整備などの「「官民オールジャパン体制」の構築」を進めるべきであるとされている。また、これらの施策の推進を通じ、2020年までに、情報通信分野において現在(2012年)の海外売上高の約5倍の17.5兆円を目指すこととしている。



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