平成18年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(2)安心・安全な社会の確立を目指す「ICT安心・安全技術戦略」

 総務省では、サイバー攻撃や大規模災害にもダウンしないICTインフラを実現するとともに、ICTを活用して地球環境問題や少子高齢化等の社会課題を克服し、安心・安全な社会を実現するための研究開発を推進している。

1 ユビキタスセンサーネットワークの研究開発

 人・モノの状況やそれらの周辺環境等をセンサーが認識し、センサー同士の自律的な情報の流通により状況へのリアルタイムな対応を可能とするユビキタスセンサーネットワーク技術の実現により、医療・福祉、防犯・セキュリティ、防災、環境リスクへの対応等様々な社会・経済活動におけるICTの側面支援が強化されることが期待される。このため、総務省では、多様なアプリケーションや新たなサービスの創出に資することを目的に、平成17年度からユビキタスセンサーネットワークに関する研究開発を行っている。

2 ユビキタスネット技術を用いた子供の安心確保システムへの対応

 近年、小学生の通学時間帯における犯罪が多発しており、登下校の安全確保が社会的にも喫緊の課題となっている。
 総務省では、情報通信技術を活用した地域における防犯対策として、「電子タグ、ユビキタスセンサーネットワーク技術を活かした子供の安全確保」のために必要な技術の研究開発を進めるとともに、「ユビキタス子供見守りシステムの構築手法の普及」を速やかに実施することとしている。このことから、各地の自治体や学校等におけるシステム構築事例や企業における商品化の取組も幅広く参考とするため、ユビキタスネット技術をはじめ情報通信技術を活用した「子供の安全確保」のための技術やシステムの事例について、平成17年12月末から平成18年1月末まで広く関係者からの協力を得て情報を収集した。
 この結果、200件を超える情報が寄せられ、これらの情報を[1]情報収集システム、[2]状態把握システム、[3]登下校通知システム、[4]危険通報システム、[5]見守りシステム、[6]その他のシステム、の6種類に分類し、平成18年3月総務省ホームページで公表した。

3 電子タグの高度利活用

 総務省では、平成16年度から電子タグの属性情報を動的な環境変化に応じて異なるプラットフォーム間で交換するための技術や、電子タグとネットワークを関連づける技術、電子タグ情報へのアクセス権限を制御する技術の研究開発を実施するとともに、研究開発成果の速やかな実用化を図るため、全国で利用者参加型の実証実験を行っている。
 さらに、消費者のプライバシー保護の観点から適切な措置を講ずることにより、電子タグが円滑に社会に受け入れられるようにすることが必要と考え、企業、消費者団体等関係者の協力の下、基本的考え方を取りまとめ、平成16年6月、経済産業省と共同でガイドラインを策定し、公表した。現在、各分野における実証実験等を通じ、当該ガイドラインの実効性を検討しているところであり、必要に応じて、分野ごとのより詳細なルール化を図るとともに、本ガイドラインの修正を行うこととしている(図表3-8-4)。
 
図表3-8-4 電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン
図表3-8-4 電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン
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4 準天頂衛星システムの研究開発

 静止軌道から約45度傾けた軌道に少なくとも3機の衛星を互いに同期して配置する準天頂衛星システムが実現すると、常に一つの衛星が日本の天頂付近に滞留し、ビル陰等に影響されない高精度の測位サービス等の提供が可能となる。
 準天頂衛星システムの研究開発は、総務省・文部科学省・経済産業省・国土交通省の4省連携施策であり、総務省では、平成15年度から高精度時刻管理技術等の研究開発を実施している。

5 次世代GISの実用化に向けた情報通信技術の研究開発

 地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は、従来、紙の地図によってそれぞれ表現されてきた地理情報をデジタル情報化し、この様々な地理的位置や、空間に関する情報を持った自然、社会、経済等に関するデータ等を電子的に統合することにより、地理情報の高度利用を図るシステムである。GISの実用化によって、カーナビゲーションシステムの高度化、防災対策及び物流管理システム等の効率化等が期待される。
 総務省では、視覚的表現に優れた3次元GISについて、モバイル端末によりいつでもどこでもその利用を可能とするため、「次世代GISの実用化に向けた情報通信技術の研究開発」を平成15年度から17年度まで実施した。

6 次世代の高機能ネットワーク基盤に向けた研究開発

 現在のICTを支えるハードウェア技術は、いずれ物理的限界を迎えることが予想されており、新しい機能を発現させる技術に関する研究開発も重要である。総務省では光子の性質を直接制御することにより、極めて安全性の高い暗号通信や少ないエネルギーでの超大容量情報伝送を実現する量子情報通信技術や、ナノサイズの物性効果の活用により、中継伝送、交換部分等、ネットワーク構成要素の高機能化と小型・省電力化を実現するナノ技術を活用した超高機能ネットワーク技術の研究開発を実施している。
 また、平成16年6月より21世紀ネットワーク基盤技術研究推進会議を開催し、上記2分野と次世代フォトニック・ネットワーク技術にテラヘルツ技術及びこれら4分野相互の境界・融合領域の情報通信技術に関し、総合的な推進方策等の検討を行ってきた。
 同推進会議は、平成17年7月に今後の総合的な推進方策等である「21世紀ネットワーク基盤技術の研究開発戦略」を取りまとめている(図表3-8-5)。
 
図表3-8-5 21世紀ネットワーク基盤技術確立に向けた総合推進方策
図表3-8-5 21世紀ネットワーク基盤技術確立に向けた総合推進方策

7 ロボットとユビキタスネットワークの融合

 ユビキタスネットワークが、家庭やオフィスでの利用が期待されるパーソナルロボットや業務用ロボット等とつながる(ネットワークロボット)ことにより、新たなライフスタイルが創出され、高齢化・医療介護問題等の様々な社会的問題への対応が図られることが期待されている。ネットワークロボット実現の大きな鍵は、ユビキタスネットワークとロボットを結ぶネットワーク技術であり、我が国がネットワークロボット分野で世界をけん引するためには、必要となるコア技術を早急に確立する必要がある。総務省では、平成16年度から、「ネットワークロボットの連携技術」、「人に優しいコミュニケーション技術」等の研究開発を実施している(図表3-8-6)。
 
図表3-8-6 ネットワークロボットに関する研究開発の概要
図表3-8-6 ネットワークロボットに関する研究開発の概要

8 情報セキュリティ技術に関する研究開発

 ネットワークに対する不正アクセス、サービス不能化(DoS)攻撃、コンピュータウイルス等が急速に悪質化しており、セキュリティに関する被害が深刻化している。このため、情報セキュリティの飛躍的向上を図るべく、情報セキュリティに関する基盤技術の研究開発等を一層積極的に推進し、継続的にセキュリティ対策の高度化を図ることが必要である。我が国の高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性を確保することを目的として、種々の脅威に対するネットワークセキュリティに関する4分野(ネットワーク系、アクセス系、流通情報(コンテンツ)系及びセキュリティ共通要素技術/評価・検証技術)の基盤技術についての研究開発を実施している(図表3-8-7)。
 
図表3-8-7 情報セキュリティ技術に関する研究開発の概要
図表3-8-7 情報セキュリティ技術に関する研究開発の概要

 第8節 研究開発の推進

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