21世紀に入り四半世紀となる2025年は、我が国でラジオ放送が開始(1925年)されてから100周年であり、また、日本電信電話公社の民営化とともに、電気通信事業への民間事業者の参入が自由化された通信自由化(1985年)から40周年の節目の年にあたる。
情報通信のインフラといえば、情報流通の基盤となる通信、放送ネットワークがまず挙げられるが、インターネットが普及し、社会経済のあらゆる面でデジタル技術の利用が進展する今日、社会経済にとって不可欠性、重要性を増し、社会基盤的機能を発揮するデジタル領域は、年々拡大を続けている。今後、我々の生活や社会経済にデジタル技術・サービスが与える影響力が、正負の両面において大きく拡大することが想定される中、デジタル分野における課題への対応と、デジタルの活用による社会課題解決・軽減が、これまで以上に重要になっている。
本書の特集では、社会基盤としてのデジタル領域の拡大が社会経済に大きなインパクトを与えている現下の状況を踏まえ、「広がりゆく『社会基盤』としてのデジタル」と題し、社会基盤的機能を発揮するデジタル領域拡大の動向、今後、幅広いデジタル領域に浸透・影響し、デジタル社会を支える基盤的要素となる可能性が高まる人工知能(AI:Artificial Intelligence)の爆発的進展の動向、こうしたデジタル分野において主要な担い手となっている海外事業者の台頭と我が国の状況を概観する。その上で、今日の世界情勢、自然環境や社会の変化を背景に、デジタル技術の進展と社会への影響力の拡大がもたらす今日のデジタル分野の課題とその対応、そして我が国の主要な社会課題解決・軽減に向けた、デジタルの役割とその展望を概観する。
第1章では、今日において社会基盤的機能を発揮するデジタル領域の広がりの現状、今後のデジタル社会を支える基盤的要素となることが目されるAIの進展や活用状況、デジタル分野における海外事業者の台頭と日本の現状を概説する。また、今日の世界情勢、自然環境や社会の変化を踏まえつつ、今後のデジタル社会の見通しと、進展するデジタルが果たすべき役割を概観する。