電気通信サービスの高度化・多様化により、多くの利用者に利便性の向上や選択肢の増加がもたらされる一方で、利用者と事業者の間の情報格差や事業者の不適切な勧誘などにより、トラブルも生じている。こうしたトラブルを防止し、消費者が電気通信サービスの高度化・多様化の恩恵を享受できるようにするため、総務省では、電気通信サービスに係る消費者保護ルールを整備し、これを適切に執行するとともに、必要に応じてその見直しを行っている。
総務省では、「総務省電気通信消費者相談センター」を設置し、消費者からの情報提供を受け付けている7。また、電気通信消費者支援連絡会8を全国各地域で毎年2回ずつ開催し、関係者の間で情報共有・意見交換を実施している。このような取組を通じて得られた情報を踏まえ、必要に応じて行政指導や消費者庁と連携した対応などにより、電気通信サービスに係る消費者保護ルールの実効性の確保を図っている。
このほか、関係団体における消費者保護ルールの遵守に向けた自主的取組の促進も図っている。
総務省では、「電気通信事業の利用者保護規律に関する監督の基本方針」を策定し、消費者保護ルールの運用状況についてモニタリングするとともに、有識者や関係の事業者団体が参加し、関係者の間で共有・評価などする「消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合9」を年2回開催している。
この会合では、電気通信事業分野の苦情・相談などについて、全体的な傾向だけでなくMNO、MVNO、FTTHといったサービス種別ごとの傾向についても分析している。また、個別のテーマ10についての分析、実地調査(覆面調査)、個別事案の随時調査、さらには事業者団体11が受け付けた苦情・相談などの分析の結果をまとめ、消費者保護ルールの実施状況について評価・総括を行っている。また、事業者などによる改善に向けた取組の状況のフォローアップも実施している。
総務省では、この会合における評価を踏まえ、実地調査の対象となった電気通信事業者に対し、改善すべき点を指導するとともに、事業者団体などに対し、業界としての取組や会員への周知などの対応を要請している。また、この会合における分析結果や評価については、消費者保護ルールの見直しの検討や事業者の自主的な取組の推進に活用されている。
総務省では、電気通信市場の変化や消費者トラブルの状況を踏まえ、消費者保護ルールを累次にわたり見直し、その拡充を図ってきた。電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(令和4年総務省令第6号)で規定された契約の解除に伴い請求できる違約金等の制限について、既往契約等については当該規律を「当分の間」適用しないとする経過措置を設けていたところ、「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」において、当該経過措置の廃止に向け速やかに制度整備を行うべきであるとの指摘がなされた。これを踏まえ、2024年4月に電気通信事業法施行規則を改正12し、違約金等の制限に係る経過措置の廃止時期を明確にした(2025年7月から更新不可、2028年6月末に完全廃止)。
また、同検討会において、電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令(令和4年総務省令第6号)の施行状況の確認・評価や、オンライン契約における消費者保護の在り方、指導等措置義務の履行状況と評価等を行い、2024年8月に「消費者保護ルールの在り方に関する検討会報告書2024」を取りまとめた。同報告書を踏まえ、「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」を改正し、オンライン契約における利用者の適切な理解を促進する方策として最終確認画面を設けることが望ましい旨を明示したほか、オンライン契約におけるいわゆるダークパターンへの対応として、望ましい例と不適切な例を明示し、電気通信事業者の適切な対応を促している。また、同検討会では、2024年12月から、提供条件説明に関する利用者理解の向上、「頭金」13・据置型Wi-Fiサービスの状況等についての議論を行っている。
7 電話及びウェブにより9,970件(2024年度)の苦情相談などを受け付けている。
8 各地の消費生活センターや電気通信事業者団体などを構成員として、電気通信サービスに係る消費者支援の在り方についての意見交換を行う総務省主催の連絡会。
9 消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合:
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/shouhisha_hogorule/index.html
10 2024年7月に開催された第17回会合においては、①通信速度等に関する苦情相談、②高齢者の苦情相談、③FTTHの電話勧誘に関する苦情相談、④出張販売に関する苦情相談を扱った。
11 一般社団法人電気通信事業者協会及び一般社団法人全国携帯電話販売代理店協会
12 電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令(令和6年総務省令第42号)
13 端末販売価格は店舗ごとに異なり、分割払い時の所定の割賦払い額のほか、店舗ごとに設定する額(0円の場合もあり。)を含む形で設定されている。