スマートフォンやIoTなどを通じて、様々なヒト・モノ・組織がインターネットにつながり、大量のデジタルデータの生成・集積が飛躍的に進展するとともに、AIによるデータ解析などを駆使した結果が現実社会にフィードバックされ、様々な社会的課題を解決するSociety 5.0の実現が指向されている。
この中で、様々なサービスを無料で提供するプラットフォーム事業者の存在感が高まっており、利用者情報が取得・集積される傾向が強まっている。また、生活のために必要なサービスがスマートフォンなど経由でプラットフォーム事業者により提供され、人々の日常生活におけるプラットフォーム事業者の重要性が高まる中で、より機微性の高い情報についても取得・蓄積されるようになってきている。
利用者の利便性と通信の秘密やプライバシー保護とのバランスを確保し、プラットフォーム機能が十分に発揮されるようにするためにも、プラットフォーム事業者がサービスの魅力を高め、利用者が安心してサービスが利用できるよう、利用者情報の適切な取扱いを確保していくことが重要である。
総務省で開催する「プラットフォームサービスに関する研究会」で、「プラットフォームサービスに係る利用者情報の取扱いに関するワーキンググループ」を設置して議論を行った結果を踏まえて取りまとめられた「中間とりまとめ」(2021年9月)では、電気通信事業法などにおける規律の内容・範囲などについて、EUにおけるeプライバシー規則(案)の議論も参考にしつつ、Cookieや位置情報などを含む利用者情報の取扱いについて具体的な制度化に向けた検討を進めることが適当であると考えられるとされた。本取りまとめを踏まえ、電気通信事業者が利用者に電気通信サービスを提供する際に、情報を外部送信する指令を与える電気通信を送信する場合に利用者に通知・公表といった確認の機会を付与することの義務付けなど(以下「外部送信規律」という。)を内容とする電気通信事業法の一部を改正する法律が2022年6月に成立した。総務省では、その後、同年6月から9月まで同ワーキンググループを開催し、外部送信規律の詳細について検討を行い、電気通信事業法施行規則を改正し、規律対象者、通知・公表すべき事項、通知・公表の方法等について定めた。同法及び改正電気通信事業法施行規則は2023年6月に施行された。
2024年2月から、総務省で開催する「ICTサービスの利用環境の整備に関する研究会」及び同研究会のもとに設置された「利用者情報に関するワーキンググループ」において、スマートフォン上の利用者情報の更なる保護に向けて、アプリケーション提供者等の関係事業者が利用者情報を取り扱う上で実施することが望ましい事項をまとめた「スマートフォン・プライバシー・イニシアティブ(SPI)」の改定の議論を行っている。同年11月、外部送信規律の導入等の国内制度の改正や、諸外国及び民間事業者の動向の変化を踏まえ、ダークパターンの回避やセキュリティの確保等について新たに規定した「スマートフォン・プライバシー・セキュリティ・イニシアティブ(SPSI)」を公表した。