第1章で概観したように、今後、デジタル技術がますます社会経済活動に浸透し、社会基盤として存在感が増すほどに、負の影響もより一層大きくなる恐れがある。
例えば、AIをはじめとする進展するデジタル技術の活用が進む中、増加する通信・計算資源・電力需要等に対応したデジタル基盤の確保が求められる一方、現下の不安定さを増す世界情勢や災害の激甚化等を背景に、重要なデジタル基盤の利用やアクセスが困難になったり、セキュリティが損なわれる等のリスクが今後拡大する恐れがある。また、進展するAIのもたらすリスク、情報収集やコミュニケーションの基盤として存在感を高めるSNS等をはじめとするインターネット上の偽・誤情報等に関する問題や、世界情勢の不安定化とAI等の進展をも背景に激化するサイバーセキュリティの脅威も、深刻化が想定される。進展するデジタル技術のもたらす利益を十分に享受しつつ、そのリスクを抑制するには、こうしたデジタル分野の課題への対応が不可欠である。
本章では、今日の世界情勢、自然環境や社会の変化とも相まって、デジタル技術の進展と社会基盤としての影響力の拡大がもたらす、デジタル分野の主要な課題について概観する1。
1 本章は、各課題の内容や対応を網羅的に述べるものではなく、個別課題の理解の促進のために例示するものであり、ここに記載されているものに限られるものではないことに留意。また、個別の課題に関する総務省の関係施策は、第Ⅱ部第2章も参考。