2021年9月、グテーレス国連事務総長が発表した報告書「Our Common Agenda」において、「すべての人にとってオープンで自由かつ安全なデジタルの未来のための共有原則を概説する」ことを期待して、2023年9月、翌年開催する未来サミットで「グローバル・デジタル・コンパクト(GDC)」に合意することが提案された。その後の議論を経て、GDCは、2024年の未来サミットの成果文書「Pact for the Future」のアネックス(添付文書)として採択された(2024年9月22日)。
GDCは、包摂性、開発志向、マルチステークホルダー等の原則(principles)を示すとともに、5つの目的(objectives)等について規定している。5つの目的には、デジタル格差の解消やAIの国際的なガバナンス強化等が含まれている。
インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF:Internet Governance Forum)は、インターネットに関する様々な公共政策課題について、政府、民間、技術・学術コミュニティ、市民社会等のマルチステークホルダーが対等な立場で対話を行うインターネット政策の分野で最も重要な国際会議の1つである。
2023年10月、我が国はホスト国として、国立京都国際会館(京都府京都市)において、第18回IGF会合を開催し、当時として史上最多となる6000人以上の現地参加者、オンラインを含めて約10,000人の参加を得た。オープニングセレモニーでは、岸田総理大臣(当時)が開会挨拶として、民主主義社会の基盤としてのインターネットの重要性を強調するとともに、インターネットの恩恵を最大化するために、負の側面への対応を含め、「マルチステークホルダーアプローチの議論」にコミットすることを力強く表明した。
また、オープニングセレモニーに続いて実施したAI特別セッションでは、我が国が議論をリードしている広島AIプロセスについて、広く国際社会に発信した。岸田総理大臣(当時)のキーノートスピーチでは、「グローバルサウスを含む国際社会全体が、安心・安全・信頼できる生成AIの恩恵を享受し、更なる経済成長や生活環境の改善を実現できるような国際的なルール作りを牽引」していくことを強調した。また、鈴木総務大臣(当時)から、「AI開発者向けの国際的な指針及び行動規範」の議論の状況について紹介したほか、今後も様々な関係者の意見を聞く取組を続ける旨を表明した。本セッションを通じ、G7以外も含めた各国政府、産業界、国際機関、学術界などのマルチステークホルダーのパネリストから、広島AIプロセスへの賛同や期待の声が寄せられた。
さらに、IGF開催期間を通じて会場内に展示会場(「IGF Village」)が併設され、世界から72の企業・団体が出展した。我が国からは電気通信事業者や研究機関等25の企業・団体が遠隔ロボットやマンガ海賊版対策等に関する出展を行い、ブースを訪れた各国からの参加者との交流を通じて国際社会に対し我が国の技術力や取組を積極的に発信した。
2024年12月には、サウジアラビアで第19回会合が開催され、我が国はインターネットガバナンス及びAIに関するセッションを主催したほか、ハイレベルセッションに参加し「マルチステークホルダーアプローチ」の重要性について発信するなど、同会合への積極的な貢献を果たした。