スマートデバイスの普及などに伴う視聴環境の変化を踏まえ、放送事業者は、放送番組のインターネットでの同時配信等(同時配信、追っかけ配信及び見逃し配信をいう。以下同じ。)の取組を進めている。これは、高品質なコンテンツの視聴機会を拡大させるものであり、視聴者の利便性向上やコンテンツ産業の振興・国際競争力の確保などの観点から重要な取組となっている。一方で、放送番組には多様かつ大量の著作物等が利用されており、同時配信等にあたって著作権等の権利処理ができないことによるマスキング等の処理(いわゆる「フタかぶせ」)が生じる場合があるなど、権利処理上の課題が存在しており、同時配信等を推進するに当たっては、著作物等をより迅速かつ円滑に利用できる環境を整備する必要があった。
そこで、総務省において、同時配信等に係る権利処理の円滑化に向け、「著作権法」(昭和45年法律第48号)を所管する文化庁とともに関係者から意見を聴取するなど、制度改正の方向性を検討した結果、2021年の第204回国会(常会)で「著作権法の一部を改正する法律」(令和3年法律第52号)が成立し、当該円滑化に関する措置が講じられた。改正後、2022年4月には民放5系列揃っての同時配信が実現するなど、本格化しつつある同時配信等について、総務省は、権利処理の動向を注視しながら、更なる円滑化に向けた検討を行っている。特にローカル局においては、権利処理に係る事務作業に対応する人員やノウハウが不足していることから、権利処理の効率化に資するシステムの構築に関する検証を実施している。