国際収支統計のサービス収支において、日銀レビュー「国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化」5では、①コンピュータサービス、②著作権等使用料、③専門・経営コンサルティングサービス、さらにこれに加えて④通信サービス、⑤情報サービスを、デジタルに関係する項目として分類している。近年、このうち、特に①から③までの合計の赤字額が急激に増えており、いわゆる「デジタル赤字」として注目を集めている。なお、この中にはデジタル分野以外のサービスに係る収支も含まれる点に注意が必要である(図表Ⅱ-1-1-8)。
例えば、①コンピュータサービス、②著作権等使用料、③専門・経営コンサルティングサービスの合計では、2024年では、約6.7兆円の赤字(前年比約0.9兆円の赤字額増)となっている(これに、④通信サービス、⑤情報サービスを加えると、約6.8兆円の赤字(前年比約0.9兆円の赤字額増))(図表Ⅱ-1-1-9)。
なお、クラウドサービスやオンライン会議システムの利用料といったコンピュータサービスが大宗を占める「通信・コンピュータ・情報サービス」については、国・地域別の収支額をみると、2024年は米国、シンガポール、オランダ、中国、スウェーデンの順に赤字規模が大きい。また、支払額では、2024年は米国、シンガポール、オランダの順に大きい。
【関連データ】デジタル関連サービス収支の推移(コンピュータサービス、著作権等使用料、専門・経営コンサルティングサービス、通信サービス、情報サービス)
URL:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/datashu.html#f00094(データ集)
【関連データ】デジタル関連サービスの受取額、支払額の推移(コンピュータサービス、著作権等使用料、専門・経営コンサルティングサービス、通信サービス、情報サービス)
URL:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/datashu.html#f00095(データ集)
【関連データ】通信・コンピュータ・情報サービスの収支の推移(受取元・支払先国・地域別)
URL:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/datashu.html#f00096(データ集)
財務省貿易統計6に基づき、ICT財7の日本からの輸出額と日本への輸入額の差引額を確認すると、その赤字額は近年増加の傾向がみられ、2024年では3兆4,168億円の赤字となった。なお、この統計は、あくまで日本から海外への輸出額、海外から日本への輸入額を示しており、日本企業の海外生産拠点から日本以外の海外への輸出が反映されていないことや、日本企業が海外拠点で生産し日本国内に輸入した場合は「輸入」になることに注意が必要である。
項目別にみると、2024年の黒字額が最も大きいのは「その他の電子部品」であり、「集積回路」の黒字額も大きい。一方、赤字額が最も大きいのは「携帯電話機」であり、近年、赤字額の拡大が続いている。続いて「パーソナルコンピュータ」、「電子計算機本体(パソコンを除く。)」、「有線電気通信機器」の赤字額が大きい。黒字額が大きいのは部品・部材等で、赤字額が大きいのは最終製品という傾向がある(図表Ⅱ-1-1-10)。
日本の輸出額・輸入額が多い主なICT財について、その輸出先・輸入元の上位となっている国・地域をみると、2024年は、輸入に関しては、携帯電話機、パーソナルコンピュータは中国が最大の輸入元である。また、輸出先は、集積回路は台湾が、その他部品は中国が、電子計算機附属装置は米国が最大の輸出先となっている。
【関連データ】財務省貿易統計に基づく日本のICT財の輸出額、輸入額の推移
URL:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/datashu.html#f00098(データ集)
【関連データ】主なICT財の輸出先、輸入元国・地域(上位3か国)
URL:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/datashu.html#f00099(データ集)
5 https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2023/data/rev23j09.pdf
6 貿易統計の輸入額はCIF建て(Cost、Insurance and Freightの略で、貨物代金のほか仕向地までの保険料、運賃を含む。)、輸出額はFOB建て(Free on Boardの略で、輸出国における船積み価格。船積み後、仕向地までの保険料、運賃は含まない。)であり、ここでの輸出額と輸入額の差引額は、機械的に計算して算出したもの。
7 総務省「情報通信産業連関表」においてICT財の範囲とされている以下の財。パーソナルコンピュータ、電子計算機本体(パソコンを除く。)、電子計算機附属装置、有線電気通信機器、携帯電話機、無線電気通信機器(携帯電話機を除く。)、通信ケーブル・光ファイバケーブル、事務用機械、半導体素子、集積回路、液晶パネル、フラットパネル・電子管、その他の電子部品。