平成21年版 情報通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
目次の階層をすべて開く目次の階層をすべて閉じる

第1部 特集 日本復活になぜ情報通信が必要なのか

第1章 情報通信と成長を結ぶ経路

2 産業の柱としての情報通信

 次に、各国の産業構造に着目し、情報通信産業の位置づけと経済成長との関係を分析する。

●一人当たりGDPの上位国の多くが、情報通信分野を産業の柱に設定
 図表1-1-2-1は、2007年の一人当たりGDPの上位20か国(OECD諸国及びシンガポールに限る)の比較である。日本は20位となり、2005〜07年の通算で一人当たりGDPのマイナス成長を経験した唯一の国となっている。その結果、2007年にはシンガポールに抜かれ、アジア地域で初めて第2位となった。
 
図表1-1-2-1 一人当たりGDP(2007年)の上位国の産業の柱
図表1-1-2-1 一人当たりGDP(2007年)の上位国の産業の柱
以下の統計資料により作成
IMF(2009)“World Economic Outlook Database(April 2009 edition)”
http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2009/01/weodata/index.aspx
経済財政諮問会議・甘利議員提出資料(平成20年1月17日)

WEF(2009)“The Global Information Technology Report 2008-2009”

Excel形式のファイルはこちら

 上位諸国の成長の柱は、主として資源、金融、製造業、情報通信となっている。天然資源に恵まれず、バブル以後に金融の国際競争力が低下し、世界的な金融危機の影響も色濃く受ける日本にとって、残された選択肢は製造業と情報通信という状況にある。
 上位諸国の特徴として、北欧諸国が多いことが挙げられる。一人当たりGDPとICT競争力指数の双方で、デンマーク(6位、1位)、スウェーデン(7位、2位)、フィンランド(8位、6位)、アイスランド(3位、7位)、ノルウェー(2位、8位)など、北欧諸国がいずれも上位を占めている。
 北欧諸国は、国土は比較的狭くて人口も少なく、ノルウェー等を除いては、天然資源に恵まれているとはいえない。にもかかわらず、一人当たりのGDP及びICT競争力の双方で上位を占めているという事実は、高齢化や人口減少に直面している日本にとって大いに参考となろう。日本は、これら北欧諸国の事例も踏まえつつ、競争力を強化すべく、情報通信産業を柱にすえる意志を明確に打ち出す必要がある。経済のサービス化・情報化が進み第二次産業のシェアが長期的に低下を続ける中で、いつまでも製造業に依存し続けてはいられないためである(図表1-1-2-2)。
 
図表1-1-2-2 日本における第一〜第三次産業のシェアの推移
図表1-1-2-2 日本における第一〜第三次産業のシェアの推移
内閣府「国民経済計算」により作成
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html
Excel形式のファイルはこちら

●先進国ではGDP関連指標と情報通信産業のシェアに正の相関が存在
 より定量的な手法で、各国における情報通信産業の位置づけと経済成長との関係をみてみよう。図表1-1-2-3は、GDP関連指標とICT産業のシェアの関係を示したものである。左図は、OECD諸国における2006年の一人当たり名目GDP(ドル建て、購買力平価)とICT産業のシェア(雇用ベース)であるが、弱いながらも正の相関が示唆される。また、右図は一人当たりGDP上位国(図表1-1-2-1を参照)における1995年のICT産業のシェア(付加価値額ベース)と1995〜2007年の実質GDPの年平均成長率であるが、これにも正の相関が存在する。
 
図表1-1-2-3 一人当たりGDPと情報通信産業シェアとの相関
図表1-1-2-3 一人当たりGDPと情報通信産業シェアとの相関
OECD(2009)“General Statistics Country statistical profiles 2009”により作成
http://stats.oecd.org/WBOS/index.aspx
Excel形式のファイルはこちら

 つまり、一人当たりGDPが高い国では情報通信関連産業のシェアが高い傾向がみられ、また情報通信分野の比重の高い産業構造はその後の経済成長率を高める方向にはたらく傾向にあるといえる。先進国では、知識経済化が進む中で、自国の戦略的産業の柱の一つに情報通信産業を設定していることが示唆される。
 実際にOECD諸国を中心に、情報通信関連産業のシェアを見てみよう。図表1-1-2-4は、OECDの定義によるICT関連産業のシェアを入手できる国について、1995年と2006年のデータを示したものである。その結果、図表中の大半の国で、ICT産業のシェアが、1995〜2006年にかけて付加価値ベースでみても雇用ベースでみても上昇している。特に、一人当たりGDPの上位国である北欧諸国において、同シェアが高く、シェアの伸びも大きい国が多い(例えば、フィンランド、スウェーデン、アイルランド)のが特徴的である。一方、日本のICT関連産業のシェアは、中間程度に位置しているが、付加価値ベースでみるとシェアが増えているのに対し、雇用ベースでは減っている。
 
図表1-1-2-4 情報通信関連産業のシェアの国際比較
図表1-1-2-4 情報通信関連産業のシェアの国際比較
OECD(2009)“General Statistics Country statistical profiles 2009”により作成
http://stats.oecd.org/WBOS/index.aspx
Excel形式のファイルはこちら

 第1節 経済再生における情報通信の重要性

テキスト形式のファイルはこちら

第1部第1章第1節1 情報通信と経済成長との相関 に戻る 3 各国の新しい情報通信国家戦略 に進む