平成21年版 情報通信白書

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第1部 特集 日本復活になぜ情報通信が必要なのか

第2章 世界経済の変動と日本の情報通信

(1)実質と名目で異なる情報通信産業

●情報通信産業の市場規模は約98兆円、全産業の中でも最大規模
 平成19年の情報通信産業の名目国内生産額は前年比2.4%増の約98兆円となり、全産業の約9.7%を占め、全産業の中でも最大規模の産業である(詳細は第4章第2節を参照)。名目国内生産額の推移を示したものが図表2-1-2-1であるが、平成7年から平成12年までは増加(年平均4.8%)した後、平成13年から平成16年までは減少傾向にあったが、平成17年以降は再び増加(年平均1.9%)に転じている。
 
図表2-1-2-1 情報通信産業の名目国内生産額の推移
図表2-1-2-1 情報通信産業の名目国内生産額の推移
(出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/link/link03.html
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 情報通信産業の内訳をみると、平成19年の名目国内生産額のうち、通信業が18.9%、放送業が3.7%、情報サービス業が20.2%、映像・音声・文字情報制作業が6.2%、情報通信関連製造業が13.6%、情報通信関連サービス業が20.4%、情報通信関連建設業が1.5%、研究が15.5%となっている。

●情報通信産業は日本経済全体の実質成長に安定的に寄与
 図表2-1-2-2は、情報通信産業の付加価値増による実質GDP成長への寄与度の推移を示したものである。日本経済がマイナス成長の時期も含め、経済成長に対する情報通信産業の寄与度は一貫してプラスを維持し、直近5年間の平均では約34%の寄与率となっている12。マクロでみれば、日本の情報通信産業は、直接・間接の効果によって経済全体の実質成長の1/3程度を安定的にけん引する実力を有していると評価できる。
 
図表2-1-2-2 実質GDP成長率に対する情報通信産業の寄与
図表2-1-2-2 実質GDP成長率に対する情報通信産業の寄与
(出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成21年)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/link/link03.html
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●情報通信産業の国内総生産は、実質では一貫して高成長である一方、名目では低成長にとどまる
 このように、市場規模が大きく実質成長への寄与も安定的な情報通信産業であるが、情報通信産業の国内総生産(GDP)を実質ベース(平成12年価格。以下同じ)と名目ベースで比較すると、その様相は大きく異なる。図表2-1-2-3は、情報通信産業の国内総生産の推移を実質GDPと名目GDPで比較したものである。実質GDPは平成7年以降一貫してプラス成長を続けており、平成7年から平成19年までの年平均成長率は6.6%となっているが、名目GDPでは平成7年からの年平均成長率は2.3%にとどまり、名目国内生産額の推移と同様、平成7〜12年は増加傾向、平成13〜16年は横ばい、平成17年以降は増加傾向となっている。
 
図表2-1-2-3 情報通信産業の実質GDPと名目GDPの推移
図表2-1-2-3 情報通信産業の実質GDPと名目GDPの推移
(出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成21年)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/link/link03.html
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 情報通信産業の内訳をみると、実質ベースと名目ベースでGDPの推移が大きく異なるのは、情報通信関連製造業と情報通信関連サービス業である。平成7年以降のGDPの年平均成長率でみると、情報通信関連製造業が実質では15.9%増に対し、名目では4.9%減となっており、情報通信関連サービス業は実質では7.7%増に対し、名目では0.3%増となっている。
 名目GDPと実質GDPの推移にかい離が生じるのは、情報通信産業のデフレータ(価格)が低下傾向にあるためである。このデフレータの動向については、本節2.(2)で分析を行う。

●再び増加傾向に転じた情報通信産業の雇用者数
 国内生産額と国内総生産に加え、情報通信産業における雇用者数の推移も見ておこう(図表2-1-2-4)。平成7年以降、平成12年まで増加を続けていたが、平成13〜15年の間は減少に転じ、平成16年以降は再び増加傾向に転じ、平成19年で約396万人となっている。
 
図表2-1-2-4 情報通信産業の雇用者数の推移
図表2-1-2-4 情報通信産業の雇用者数の推移
(出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成21年)
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/link/link03.html
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 情報通信産業の内訳をみると、通信業が約64万人(16.1%)、放送業が約6万人(1.6%)、情報サービス業が約105万人(26.5%)、映像・音声・文字情報制作業が約22万人(5.6%)、情報通信関連製造業が約35万人(8.9%)、情報通信関連サービス業が約70万人(17.6%)、情報通信関連建設業が約13万人(3.3%)、研究が約81万人(20.4%)となっている。

●名目GDP成長や雇用増が両立する発展プロセスが、情報通信産業の中長期的課題
 以上見てきたように、情報通信産業は市場規模が大きく、価格低下を通じて実質GDPが大きく伸び、成長への寄与も安定して高水準にある一方で、名目GDPの伸びは限定的で、雇用者数もやや伸び悩んでいる傾向にある。中長期的に見れば、全産業の共通基盤となる情報通信サービスを低廉な価格で提供し続けることで日本経済の成長を下支えする一方で、イノベーションを通じて産業のすそ野を広げ、新規事業を次々に創出することによって名目GDPの成長や雇用増を両立させるような発展プロセスが、日本の情報通信産業に期待されるところである。


12 平成18年以前の値については、算出の元となるデータの確報値公表に合わせて再推計を行った。また、平成19年の値については、速報値である

 第1節 課題に直面する日本の情報通信

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