平成21年版 情報通信白書

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第1部 特集 日本復活になぜ情報通信が必要なのか

第3章 日本復活へ向けた3つの挑戦

(4)地縁・血縁に「電縁」を重ねることで、安心なネット社会へ

●地縁・血縁を代替するのではなく、補完するような「電縁」が求められている
 日本の地域社会には、古くから地縁や血縁に基づいた紐帯が根付いているが、その紐帯が、核家族化や個人主義等の様々な要因により、徐々に薄れてきていると言われる。インターネットや携帯電話といった情報通信技術の進歩も、その要因の一つと指摘されることもある。しかし、匿名掲示板に代表されるようなオンラインに過度に依存したコミュニティではなく、オフラインにおける現実の人間関係と連携のとれたオンラインのコミュニティであれば、使い方次第で紐帯を強めることが可能ではないだろうか。以上の分析結果は、オフラインコミュニティのような対面の人間関係とオンラインコミュニティのようなネット上の人間関係をバランス良く重ね合わせることによって、情報活用能力が必ずしも十分でない利用者にとっても、情報通信利用に対する不安を軽減できる可能性があることを示唆している。
 インターネットや携帯電話等の情報通信ネットワークを通じて電子的な人間関係が広がる現象は、「電縁」と呼ばれることがある12。時間や距離の制約を超え、世界中の見知らぬ人々と電子メールやインターネットを通じてコミュニケーションが可能となることは素晴らしいことである。しかし、この「電縁」が地縁・血縁と結びついて、現実のコミュニティと連携していくことも、とても重要なことである。情報通信の利用は、対面による交流の「代替」手段としても有効であるが、対面による交流の「補完」手段として利用すると、より大きな効果を発揮する。そして、地縁・血縁に「電縁」を重ねることで「顔の見える安心なネット社会」が構築され、地域や家族の絆が深まる方向へ進んでいく。「電縁」はそのような力を秘めており、そのような事例も次々に蓄積されている(コラムを参照)。
 日本復活に向けては、このような地縁・血縁と結びつく「電縁」を確立するための挑戦が必要である。情報通信はあくまで手段であって意志はなく、利用する我々に意志がある。とても便利で役に立つが、使い方を誤ると危ないかもしれない新技術をどう導くか。「電縁」の有効活用によって日本の利点でもある紐帯を取り戻し、距離や時間を超えて人や企業が出会い、助け合い、そして活力を生むような方向に導くよう、社会全体で取り組まなければならない。


12 日本経済新聞による特集記事「電縁の時代」(2004年1月1日)を参照。また、藤沢市は「電縁都市ふじさわ」を標榜している

 第3節 Trust:安心してネットが使えるための「電縁」

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