平成21年版 情報通信白書

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第1部 特集 日本復活になぜ情報通信が必要なのか

第2章 世界経済の変動と日本の情報通信

1 ICT競争力ランキングによる評価

 世界経済フォーラム(WEF)が、2009年3月に公表した「ICT競争力ランキング(2008〜2009年版)」では、世界134の国・地域を対象に68項目の指標を総合評価して順位が算出されている。この評価結果に基づき、日本の情報通信の国際評価を確認しておこう。

●日本のICT競争力は世界20位付近に低迷
 図表2-2-1-1は、「ICT競争力ランキング」の主要国の順位の推移を示したものである。日本の順位は2004年に8位まで上昇したが、2007年は19位、2008年は17位と、近年は20位付近に低迷している。一方、デンマークとスウェーデンが3年連続で1位と2位を占め、北欧を中心に欧州勢が上位10か国中7か国を占めている。北米では、米国が3位、カナダが10位、アジアではシンガポールが4位、韓国が11位、香港が12位、台湾が13位にランキングされ、日本はこれらの国・地域の後塵を拝する結果となっている。
 
図表2-2-1-1 世界経済フォーラムによるICT競争力ランキングの推移
図表2-2-1-1 世界経済フォーラムによるICT競争力ランキングの推移
WEF(2009)“The Global Information Technology Report 2008-2009”により作成

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 このランキングは、情報通信の「環境(市場、政治・規制、インフラ)」「対応力(個人、企業、政府)」「利用(個人、企業、政府)」の3つの要素(合計9の指標群)からなる計68の指標を集計した「ICT競争力指数(ネットワーク準備度指数)」に基づく。日本は、68項目のうち、ブロードバンド利用のコストの低さ、国内のICT供給能力等2項目で1位、研究者や技術者の数や企業の研究開発費等5項目で2位、特許で3位等高い評価を受ける一方、税率で102位、高等教育進学率で96位、経営大学院の質で82位、ICTを使った政府の効率性が78位、政府のICT推進で59位等著しく低い評価を受けた項目も少なくない。9の指標群ごとにみると、「個人の対応力」(31位)、「政府の対応力」(25位)、「政府の利用」(34位)の評価が特に低くなっている。

●ICT競争力ランキングは日本の情報通信の現状を的確に評価するには不向きな面も
 「ICT競争力指数」は図表2-2-1-2に示す68項目の指標を集計しているが、次の問題点を抱えている。
[1] 税制、金融、教育、司法、政治等の情報通信と直接関係のない項目が多い。
[2] 各国・地域の有識者へのアンケート調査で評価している定性的な項目が多い。
[3] 世界中の国・地域を比較するため、固定電話等の既存技術に関する項目が豊富な一方で、第3世代携帯電話や光ファイバ等の新技術に関する項目が少ない1
[4] 「利用」の要素には、インターネットや携帯電話の普及率、インターネット帯域等の指標が含まれているが、これらはむしろ基盤整備に関する指標であり、コンテンツ・アプリケーション利用や産業利用等に関する項目が少ない。
 このような事情を考慮すると、世界経済フォーラムの調査結果は、個別の項目の評価結果は参考となるものの、日本の情報通信の現状を適切に評価する上で、「ICT競争力指数」に基づく総合ランキングには問題が多い。したがって、世界経済フォーラムの調査結果に依存するのではなく、これまで取り組まれてきた情報通信政策の流れも踏まえた上で、より適切な評価方法を検討することが必要である。
 
図表2-2-1-2 世界経済フォーラムにおけるICT競争力指数の構成
図表2-2-1-2 世界経済フォーラムにおけるICT競争力指数の構成
WEF(2009)“The Global Information Technology Report 2008-2009”により作成



1 WEF事務局によれば、調査対象国・地域の約3分の2以上からデータが得られることが指標として採用する条件とされている。しかし、新技術の普及の実態はデータが入手しにくく、この条件に合致しない。この考え方は、先端技術よりも陳腐化した技術に有利に働くため、積極的に新技術に関するデータを採用し、データの得られない国・地域は推計値やゼロで代用するなど、評価の実効性を高める工夫が必要であり、日本からWEF事務局に対して提案を行っている

 第2節 総合評価で立ち遅れる日本の情報通信

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