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第1部 特集 日本復活になぜ情報通信が必要なのか第2章 世界経済の変動と日本の情報通信
(4)「基盤」「利活用」「安心」の三本柱による今後の政策展開
以上、情報通信の「基盤」「利活用」「安心」の3つの視点から、ICT先進7か国の国際比較により評価を行ってきたが、その結果をまとめてみよう。 ●「基盤」は世界最高水準にあるが、「普及度」や「社会基盤性」に課題 情報通信の「基盤」については、総合評価でICT先進7か国中1位となり、世界最高水準を維持していることが確認された。ただし、指標ごとにみていくと、「普及度」や「社会基盤性」を示す指標では、評価が低いことも明らかになった。このような評価結果を踏まえ、今後は次のような政策展開が必要となるだろう。 まず、「普及度」を高めるために、情報格差解消への取組を強化すべきである。例えば、ブロードバンド・ゼロ地域の解消、携帯電話のエリア整備の促進、地上デジタル放送への完全移行の推進等により、国民や企業における情報格差を可能な限り解消していくことが求められる。一方、「社会基盤性」を高めるためには、情報化投資を加速すべきである。日本の社会・経済活動は、既にさまざまな形で情報通信基盤に大きく依存しており、この基盤に障害が起これば、社会が混乱に陥ることが免れない。この現代社会の神経網とも言うべき社会基盤を維持していくために、集中的な資源配分を行い、情報化投資を大幅に加速していくことが必要である。 なお、具体的な政策展開の方向性については、第3章第1節で分析する。 ●「利活用」と「安心」を両輪とした情報通信利用の普及促進が課題 情報通信の「利活用」と「安心」に関する総合評価の結果を用い、各国のポジショニング分析を行ったものが図表2-2-2-16である。この結果、デンマーク、スウェーデン、シンガポールの3か国は「情報通信の利活用が進み、安心感も高い国」と位置付けられる。一方、日本は「情報通信の利活用が遅れ、安心感も低い国」と位置付けられ、デンマーク等の3か国と対極的な位置にある。日本が世界最高水準の「基盤」を活かしつつ、真の意味で「世界最先端のICT国家」となるためには、バランスの良い3か国のポジションに移行できるよう、「利活用」と「安心」を両輪とした情報通信利用の普及促進策が必要となるだろう。
図表2-2-2-16 情報通信の「利活用」と「安心」の関係
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このような評価結果を踏まえ、今後は次のような政策展開が必要となるだろう。 まず、「利活用」を推進するためには、利活用先進国であるデンマーク、スウェーデン、シンガポール、韓国の事例を真しに学び、国内の情報通信政策に積極的に取り入れていくことが必要となるだろう。具体的な政策展開の方向性については、第3章第2節で分析する。 次に、「安心」を高めるためには、安心感の高い5か国の事例を学ぶことも必要であるが、既に見たように、文化的背景や国民性が影響している可能性もあり、諸外国の先進事例が日本の利用者の「安心」を高めることにつながるか必ずしも明確でない。むしろ、国内の利用者を対象として、「安心」を高め「不安」を低める要因として何が効果的かを丹念に分析し、「安全」が「安心」につながる方策を模索すべきであろう。具体的な政策展開の方向性については、第3章第3節で分析する。 ●政府による積極的な情報通信政策の展開が不可欠 図表2-2-2-17は、「利活用」と「安心」のバランスのとれたデンマーク、スウェーデン、シンガポールの3か国と、「利活用」と「安心」のともに遅れた日本とを、政府部門の情報通信政策への取組の観点から比較したものである。デンマーク等の3か国は、政府内での情報通信政策の優先度や電子政府への取組といった面で世界最高水準の評価を受けているが、日本の評価は低迷しているのが対照的である。
図表2-2-2-17 デンマーク、スウェーデン、シンガポール、日本の主な政府関連指標の比較
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このような状況を踏まえると、政府部門に課せられた役割は大変重要である。国や自治体が密接に協力し、情報通信政策のビジョンを明確に示してさまざまな資源配分を情報通信分野に重点化させていくとともに、電子政府や電子自治体といった政府自らの業務改革を要する作業も加速化させていくことが必要である。世界的な経済危機にも直面する中で、政府部門が情報通信分野でいっそう積極的な役割を果たすことが期待される時代を迎えている。
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