平成21年版 情報通信白書

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第2部 情報通信の現況と政策動向

第5章 情報通信政策の動向

(2)電波利用の高度化・多様化に向けた取組

ア 移動通信システム・無線アクセスシステムの高度化

(ア)第3世代移動通信システムの高度化に向けた取組
 我が国の携帯電話及びPHSの加入数は1億1,205万加入(平成20年度末現在)に達し、このうち携帯電話に占める第3世代移動通信システムの割合は90%を超え、第2世代からの移行が着実に進行している。
 他方、社会や経済の高度化・多様化を背景に、インターネット接続や動画像伝送等の携帯電話によるデータ通信利用が拡大傾向にあり、より高速・大容量で利便性の高い移動通信システムに期待が寄せられている。
 このような状況を踏まえ、第3世代移動通信システムを高度化した3.9世代移動通信システムの導入及び2GHz帯におけるTDD方式を活用した新たな移動通信システムの追加に必要な技術的条件等について、平成20年12月11日に情報通信審議会から答申を受けた。平成21年1月21日、総務省は、3.9世代移動通信システムの導入等に伴う制度整備を行うため、関係省令の改正案等を電波監理審議会に諮問した。
 また、平成20年11月7日には、3.9世代移動通信システム等の導入について、具体的な計画を有している者から、有識者を交え、公開でヒアリングを開催した。
 これらを踏まえ、平成21年3月11日、3.9世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針案等について電波監理審議会に諮問し、同日、同審議会から答申を受けた。また、3.9世代移動通信システムの導入等に伴う制度整備に係る関係省令の改正案等についても、同日、同審議会から答申を受け、同年4月3日、これらについて公布、告示された。
 総務省は、平成21年4月3日から5月7日まで開設計画の認定申請14を受け付けた後、同年6月には申請のあったすべての事業者に対し周波数を指定し、認定を行った。

(イ)広帯域移動無線アクセスシステム(BWA)の導入
 我が国においては、高速インターネットアクセスに対する利用者ニーズの高まりから、DSLや光ファイバ等、大容量のデータ伝送が可能なブロードバンドサービスが順調に普及しつつある。
 一方、無線システムについては、第3世代携帯電話等によって音声のみならずデータ通信サービスが提供されているが、さらに都市部を中心として、第3世代携帯電話のデータ伝送速度を上回る高度な移動通信サービスを享受したいとの要望が高まっている。また、条件不利地域においても、無線を活用することにより、有線と同等のブロードバンドサービスを享受したいという要望が高まっている。
 このような背景を踏まえ、総務省は平成19年8月に広帯域移動無線アクセスシステム(BWA:Broadband Wireless Access)の導入に係る技術基準を策定するとともに、2.5GHz帯の周波数を使用する特定基地局の開設に関する指針を策定した。平成19年9月から10月までの間、開設計画の認定申請を受け付けたところ、株式会社ウィルコム、オープンワイヤレスネットワーク株式会社、ワイヤレスブロードバンド企画株式会社(現:UQコミュニケーションズ株式会社)及び株式会社アッカ・ワイヤレスの4者から申請があった。比較審査の結果、同年12月21日に電波監理審議会からワイヤレスブロードバンド企画株式会社及び株式会社ウィルコムの開設計画を認定することについて答申を受け、同日、両者の開設計画を認定した。
 UQコミュニケーションズ株式会社は、モバイルWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)を用いて平成21年2月26日から東京23区、横浜市及び川崎市においてサービスを開始しており、同年7月には東名阪地域にサービスエリアを拡大していく予定である。また、株式会社ウィルコムは、XGP(eXented Global Platform(次世代PHS))を用いて平成21年4月からエリア限定サービスを開始し、同年秋頃に本格サービスを開始する予定である。
 地域におけるBWAの導入に向けては、総務省は、平成20年3月から免許申請の受付けを開始し、21年3月現在、約40者に対して無線局免許を付与しており、一部事業者は同年4月から商用サービスを開始している。各地域においてBWAのサービスを提供する事業者は、ブロードバンド・ゼロ地域の解消等、当該地域の公共の福祉の増進に寄与することが求められている。
 なお、BWAについては、第5章第2節1(2)イ(ア)にも記載している。

(ウ)第4世代移動通信システムの研究開発及び国際標準化の推進
 高速移動時で100Mbps、低速移動時で1Gbpsを実現する第4代移動通信システム(IMT-Advanced)は、2011年頃を目指して国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)において標準化作業が続けられている。2007年10月から開催されたITUの世界無線通信会議(WRC-07)において、IMTに使用する新たな周波数として、[1]3.4−3.6GHz、[2]2.3−2.4GHz、[3]698−806MHz、[4]450−470MHzの計428MHzが確保された。
 総務省では、第4世代移動通信システムについて、平成23年頃の実現を目指して、産学官の連携の下、研究開発及び国際標準化に向けた取組を積極的に推進している。

(エ)5GHz帯無線アクセスシステムの普及に向けた取組
 総務省では、5GHz帯を使用する高出力の無線アクセスシステムについて、需要の見込まれる大都市圏(東名阪の区域)においては、平成17年12月に全国に先駆けて登録制度を導入した。それ以外の区域についても、平成19年11月末に同周波数帯を使用する電気通信業務用固定局の使用期限が到来し、無線アクセスシステムの利用が可能となったため、関係規定の整備を行い、同年12月1日から登録可能区域を全国(一部地域を除く。)に拡大した。

イ 自営系移動通信システムの高度化

(ア)950MHz帯アクティブ系小電力無線システムの技術的条件及び950MHz帯パッシブタグシステムの高度化に必要な技術的条件の検討
 950MHz帯アクティブ系小電力無線システム及び950MHz帯パッシブタグシステムは、今後のユビキタスネット社会の実現に向けて、生産、物流、医療及び交通といった幅広い分野において大きな役割を果たすことが期待されている。
 情報通信審議会は、情報通信技術分科会小電力無線システム委員会において、平成16年6月から審議を行ってきた、「950MHz帯アクティブ系小電力無線システムの技術的条件」及び「950MHz帯パッシブタグシステムの高度化に必要な技術的条件」に関して19年12月に答申を行った。これを受けて、総務省は関係規定の整備を行った。

(イ)簡易無線局等のデジタル化及びデジタル方式特定ラジオマイクの導入等
 近年、MCA無線や簡易無線局等の自営系移動通信は、低廉、手軽で利用の要請に即したシステムの構築が可能といった特徴から様々な分野で広く活用されている。
 総務省では、自営系移動通信のうち、主に中小企業や個人で用いられる小規模なシステムの更なる利活用・高度化に向け、簡易無線局のデジタル化、電波を利用した動物等の位置検知・通報システムの導入等に係る情報通信審議会の検討を受けて、平成20年8月に、関係規定の整備を行った。さらに、劇場等で利用されるワイヤレスマイクである特定ラジオマイクにおいても、高音質のデジタル方式に関する情報通信審議会の検討を受けて、平成21年3月に関係規定を整備している。

ウ ITSの推進
 VICS(道路交通情報通信システム:Vehicle Information and Communication System)やETC(自動料金収受システム:Electronic Toll Collection System)に代表されるように、現在、ITS(高度道路交通システム:Intelligent Transport Systems)は、我が国の社会基盤の1つとなっており、さらにその高度な利用を図るため、インフラ協調による安全運転支援システムの実現に向けた取組が進められている。
 そこで、総務省では、ITSにおいて使用される無線システムの更なる高度化を図るとともに、安全運転支援システムに関する各種検討の成果を踏まえつつ、「車車間通信」等の無線システムに求められる要求条件等を明確化することを目的に、平成20年10月から「ITS無線システムの高度化に関する研究会」15を開催し、ITS安全運転支援無線システムの利用イメージ、機能と要求条件、無線システムの実現に向けた技術的課題及び推進方策等について検討を行っている(図表5-2-3-3)。同研究会では、ITS安全運転支援無線システムを、車車間通信と路車間通信を共用可能なシステムとし、地上デジタル放送化後の2012年から利用可能となる700MHz帯を用いて、実用化に向けた検討を進めることとしている。今後は、実用化に向けた技術課題の検討や実環境における実証実験を通して2012年の実用化に向けた取組を推進していく予定である。
 
図表5-2-3-3 安全運転支援システム(イメージ)
図表5-2-3-3 安全運転支援システム(イメージ)

 また、平成20年度には、「IT新改革戦略」に掲げられている世界一安全な道路交通社会の実現の目標達成に向けて、ITS関係省庁(内閣官房、警察庁、総務省、経済産業省及び国土交通省)、日本経団連及びITS Japanからなる「ITS推進協議会」により、実用化を視野に入れた技術開発、システム相互運用性の検証等を目的として全国9か所で実施する大規模実証実験を行い、21年2月下旬には、東京都臨海副都心地区(お台場)を中心に、安全運転支援システムの公道試乗会や展示会、シンポジウムを開催した。


14 参考:3.9世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設計画等の認定申請の受付:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/090325_1.html
15 参考:ITS無線システムの高度化に関する研究会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/its/index.html

 第2節 情報通信政策の展開

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