平成21年版 情報通信白書

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第1部 特集 日本復活になぜ情報通信が必要なのか

第3章 日本復活へ向けた3つの挑戦

4 ネットと現実のよいバランスがつくる電縁社会

(1)コミュニティへの参加状況

●コミュニティへの平均参加数は約3個
 インターネットは匿名性の高いメディアであり、電子掲示板では、実社会で出会ったことのない人たちが書き込みを通じてコミュニケーションをしている。ネットショッピングやネットオークションでも、互いに見知らぬ人どうしが様々な取引を行っている。情報通信を利用する不安の多くは、このように、インターネット上でやりとりをする相手の顔が目に見えず、誰か分からないことに起因すると考えられる。
 このような不安は、インターネットを通してコミュニケーションしている限り、完全にぬぐい去れるものではないだろう。しかし、利用経験を重ね、インターネットの特性を十分理解できるようになれば、オンライン上で出会う人とどう良い関係を築いていくことができるのか、そのためには何に留意すべきか、徐々に習得できるようになるだろう。
 第1章でも見たように、地域社会における人々の紐帯からもたらされる信頼関係や規範、ネットワーク等は、社会関係資本(ソーシャルキャピタル)と位置づけられ、その重要性が注目されている。社会関係資本が社会経済に与える影響は第1章で確認したが、それが人々の安心感を醸成する可能性があるとの研究成果も多数報告されている7
 社会関係資本が安心感をもたらすとすれば、対面で交流する「オフライン」コミュニティのみならず、情報通信を利用して時間や場所の制約なく交流できる「オンライン」コミュニティも含めた人とのつながりが、不安を減少させることにつながる可能性がある。そこで、日本国民のオフライン・オンラインの双方のコミュニティ8への参加状況を調査した。
 図表3-3-4-1は、国民利用者2,000人のコミュニティへの参加数(オフラインとオンラインの合計)を示したものである。参加数が0個(不参加)から3個までがそれぞれ2割弱を占めており、平均参加数は2.8個となっている。
 
図表3-3-4-1 コミュニティへの参加数(オフラインコミュニティとオンラインコミュニティの合計)
図表3-3-4-1 コミュニティへの参加数(オフラインコミュニティとオンラインコミュニティの合計)
(出典)総務省「ユビキタスネット社会における安心・安全なICT利用に関する調査」(平成21年)
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●利用者層によって大きく異なるコミュニティへの参加状況
 次に、オフライン・オンラインの双方のコミュニティへの参加状況を利用者層別にみたものが図表3-3-4-2である。コミュニティに参加していない人の割合は、勤労者層で20.1%とやや高いものの、各利用者層とも15%前後で大きな違いは見られない。しかし、「オフラインコミュニティにのみ参加」「どちらも参加」「オンラインコミュニティにのみ参加」の割合は利用者層によって大きく異なっている。未成年者層と若年者層は、「どちらも参加」している人の割合がそれぞれ61.0%、50.0%と半数以上を占めている一方、家庭生活者層と高齢者層は「オフラインコミュニティにのみ参加」している人の割合がそれぞれ29.5%、50.3%と高いのが特徴的である。
 
図表3-3-4-2 利用者層別にみたコミュニティへの参加状況
図表3-3-4-2 利用者層別にみたコミュニティへの参加状況
(出典)総務省「ユビキタスネット社会における安心・安全なICT利用に関する調査」(平成21年)
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 このように、オフライン・オンラインの双方のコミュニティへの参加状況は人によって大きく異なるため、参加しているコミュニティの数や性格が各個人間のつながり方に影響を与え、その結果として情報通信利用に対する不安に何らかの形で作用する可能性があると考えられる。


7 Putnam(2000)では、社会関係資本の高い米国内の州では殺人件数が少ないこと等を論拠に、社会関係資本が近隣地域の安全に寄与するとしている。また、国内の研究としては、内閣府経済社会総合研究所(2005)では、個人の信頼やネットワーク、社会活動等の社会関係資本を形成するものは、生活上の安心感を醸成する可能性があるとしている。
8 オフラインコミュニティは、[1]町内会・自治会、[2]PTA、[3]農協や同業者の団体、[4]労働組合、[5]生協、消費者団体、[6]ボランティア団体、[7]住民運動団体・市民運動団体、[8]宗教団体、[9]学校の同窓会、[10]政治家の後援会、[11]仕事を離れたつきあいのある職場仲間のグループ、[12]習い事や学習のグループ、[13]趣味や遊び仲間のグループ、[14]不参加、の中から、オンラインコミュニティは、[1]メーリングリスト、[2]電子掲示板、[3]ブログ、[4]SNS、[5]チャット、[6]動画・音楽共有サービス、[7]オンラインゲーム、[8]3D仮想空間、[9]その他、[10]不参加、の中から当てはまるものを全て選択してもらった

 第3節 Trust:安心してネットが使えるための「電縁」

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