平成21年版 情報通信白書

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第2部 情報通信の現況と政策動向

第5章 情報通信政策の動向

(2)放送の高度化の推進

ア デジタル放送の推進

(ア)地上デジタル放送の現状
 地上デジタル放送については、2011年(平成23年)7月24日までに地上アナログ放送を終了し、地上デジタル放送へ完全移行することが予定されている。これまで、平成15年12月に関東・中京・近畿の三大広域圏において放送が開始され、18年12月には、全県庁所在地等で放送が開始されている。平成20年度末現在、約4,800万世帯(全世帯の約97%)において視聴可能となっており、地上デジタル放送対応受信機の出荷台数は、約4,969万台となっている(図表5-2-2-3)。
 
図表5-2-2-3 地上デジタル放送の普及目標と現況
図表5-2-2-3 地上デジタル放送の普及目標と現況

 地上デジタル放送の普及に向け、総務省では以下のように、様々な取組を行っているところである。

(イ)ケーブルテレビのデジタル化の現状
 ケーブルテレビのデジタル化も、地上デジタル放送の放送区域の拡大に伴って進展してきており、ケーブルテレビによる地上デジタル放送視聴可能世帯数は、約2,250万世帯(平成20年度末現在)となっている。これは、「デジタル放送推進のための行動計画(第9次)」の中で設定された、2009年(平成21年)9月末までに2,240万世帯で地上デジタル放送を視聴可能とするという「当面の目標」を上回るものである(図表5-2-2-4)。
 
図表5-2-2-4 ケーブルテレビによる地上デジタル放送の普及目標
図表5-2-2-4 ケーブルテレビによる地上デジタル放送の普及目標

(ウ)地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割の検討
 幅広い分野における地上デジタル放送の利活用の在り方や、2011年までのデジタル放送への全面移行の確実な実現に向けた課題と解決方策について検討するため、総務省は、平成16年1月に「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」について情報通信審議会に諮問し、20年6月に同審議会から第5次中間答申がなされた。
 この第5次中間答申では、これから2011年7月のアナログ放送終了までの3年間は、最終段階の中でも「仕上げ」の段階であり、残りの期間で実施すべきことをすべて盛り込むこととし、デジタル中継局整備とともに、視聴者にアナログ放送が終了することを明確に伝えることが必要であるとの提言が行われているほか、地域密着型の全国組織(「地デジ推進全国組織」)を総務省が関係者の協力を得て構築し、その地方拠点(「テレビ受信者支援センター」)を、早期に国民の身近なところに設置し、国民からの相談にきめ細かく対応することや、経済的に困窮度が高い世帯への受信機器購入等に対する支援について、対象世帯、支援内容、支援方法及び実施時期について提言が行われた。
 総務省としては、これに基づいて、2011年7月24日の地上デジタル放送への移行期限に向けて今後実施すべき施策を整理し、「地上デジタル放送推進総合対策」として取りまとめ、必要な施策の一層の展開を図っていくこととしている。

(エ)地上デジタル放送推進のための体制整備
 平成15年5月に、地上デジタル放送の普及に関し、分野横断的かつ国民運動的に推進を図るための組織として、幅広い分野のトップリーダー及び総務省等の関係省庁からなる「地上デジタル推進全国会議」が設置された。平成20年12月、同会議において、「デジタル放送推進のための行動計画(第9次)」が策定された。総務省では、当行動計画を踏まえ、関係者を先導して地上デジタル放送の推進に取り組み、送信側及び受信側の各課題等に適切に対応するための施策を積極的に推進していくこととしている。
 また、総務省として総合的・計画的な取組の推進を図ることを目的として、平成19年9月に「地上デジタル放送総合対策本部」を設置した。さらに関係省庁の緊密な連携を図り、デジタル放送への円滑な移行を推進することを目的として、デジタル放送への移行完了のための関係省庁連絡会議が内閣官房に設置されるとともに、平成21年4月には、IT戦略本部に、内閣官房長官を議長とする「デジタル放送移行完了対策推進会議」が設置された。
 このほか、国民の視点に立った地上放送のデジタル化を加速推進することを目的として、平成20年7月に総務大臣を本部長とする「地上デジタル放送国民運動推進本部」が開催された。平成20年10月には、テレビを視聴している方々のデジタル化に関する相談や支援に対応するための拠点として全国11か所に「総務省テレビ受信支援センター」を設置し、さらに愛称を「デジサポ」として21年2月から全ての都道府県に拡充・設置した(図表5-2-2-5)。
 
図表5-2-2-5 デジサポロゴマーク
図表5-2-2-5 デジサポロゴマーク

(オ)地上デジタル放送施設の整備に対する支援措置
 地上デジタル放送のための施設整備を促進するため、「高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法」に基づく実施計画の認定を受けた放送事業者(平成18年末までに127社認定)に対し、税制上の支援を行っている(図表5-2-2-6)。
 
図表5-2-2-6 支援措置の主な内容
図表5-2-2-6 支援措置の主な内容

 また、デジタル中継局、辺地共聴施設及び都市受信障害施設についても、その改修経費の一定割合を国庫から補助することとしている。

(カ)デジタル化完了後の携帯端末向けマルチメディア放送の導入
 平成19年6月、情報通信審議会において、2011年(平成23年)の地上テレビジョン放送のデジタル化による空き周波数帯の有効利用のための技術的条件(「VHF/UHF帯における電波の有効利用のための技術的条件」)について一部答申が取りまとめられ、携帯端末向けマルチメディア放送に供するための周波数帯域が提言された(図表5-2-2-7)。
 
図表5-2-2-7 地上テレビジョン放送のデジタル化に伴う周波数割当計画の変更
図表5-2-2-7 地上テレビジョン放送のデジタル化に伴う周波数割当計画の変更

 これを踏まえ、総務省では、携帯端末向けマルチメディア放送が、2011年以降速やかにサービス提供できるよう制度環境を整備すること等を目的に、平成19年8月から「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」を開催した。懇談会において、事業化に向けたビジネスモデルや社会的役割の在り方、それを踏まえた制度的・技術的課題について検討を行い、20年7月、最終報告書を取まとめ、公表した9図表5-2-2-8)。
 
図表5-2-2-8 携帯端末向けマルチメディア放送のイメージ
図表5-2-2-8 携帯端末向けマルチメディア放送のイメージ

イ 衛星放送政策の展開

(ア)衛星放送の現状
 我が国の衛星放送については、多彩な専門放送サービスの提供、テレビジョン放送の高精細度化をはじめ、放送の高機能化に先べんを付けてきたところであり、特に、特別衛星放送(BS放送及び東経110度CSデジタル放送)対応受信機出荷台数(累計)は約5,010万台(平成20年度末現在)、特別衛星放送視聴可能世帯数も約2,090万世帯(平成19年度末現在10)となっている。

(イ)BS放送のデジタル化の推進
 BSデジタル放送については、現在、5周波数を使用して、12番組のテレビジョン放送が放送されているところであり、平成23年以降、BSデジタル放送のために新たに7周波数を使用することが、平成19年7月の電波監理審議会答申等を受けて決定されている。
 これを受け、意見募集を経て、平成20年7月に「平成23年以降に開始される予定の新たなBSデジタル放送に係る委託放送業務の認定に関する基本的方針」を策定・公表し、その後「平成23年以降の新たなBSデジタル放送に係る参入希望調査」を実施した。これらを踏まえ、平成21年2月に委託放送業務の認定申請を受け付けるにあたり必要な制度整備を行った。
 平成21年2月24日から3月23日まで委託放送業務認定の申請を受け付けたところ、29者からHDTV35番組等の申請があり、同年6月に9者・HDTV12番組等に対し、委託放送業務の認定を行った。
 BSアナログ放送の終了については、平成20年3月の終了期日決定後、BSデジタル放送への円滑な移行を目的として、BS放送に関係する事業者、団体及び総務省が参加する「BSアナログ放送の終了に係る関係者連絡会」が設立された。同連絡会において「BSアナログ放送の終了に係るQ&A」の作成等、周知広報の推進や視聴者からの問合せに対する相談体制の整備等の取組が進められている11

(ウ)映像国際放送の強化
 近年のグローバル化の進展を踏まえ、対外情報発信力の強化が重要な課題となっている。「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」において、外国人向けの映像国際放送の早期開始が提言されており、これを受け、総務省では、平成18年8月、情報通信審議会に対し、「外国人向けの映像による国際放送」の在り方とその推進方策を諮問し、19年8月に答申を受けた。
 同答申においては、[1]映像国際放送強化の具体的方向性、[2]映像国際放送の事業主体及び財源の在り方等について提言がなされ、総務省では、放送法改正により、番組制作等の新法人への委託等の新制度を導入するとともに、投入国費の大幅な拡充(平成20年度:15.2億円、同21年度:24.5億円)等の施策を講じたところである。
 平成20年4月の改正放送法施行後、NHKからの業務委託を受ける子会社((株)日本国際放送(jibtv))が設立され、21年2月から、新たな外国人向け映像国際放送が開始された。


9 参考:「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会報告書」の公表:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2008/080715_4.html
10 「世帯インデックス調査(耐久消費財所有実態調査)社団法人中央調査社」結果をもとにNHKが算出した推計値
11 参考:BSアナログ放送の終了に係るQ&A:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/bs-analog_syuuryou/faq.html

 第2節 情報通信政策の展開

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