平成21年版 情報通信白書

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第1部 特集 日本復活になぜ情報通信が必要なのか

第3章 日本復活へ向けた3つの挑戦

コラム デジタルネイティブがつくるソーシャルメディアの新潮流

 日本には、古くから土佐日記や蜻蛉日記のような日記や日誌をつける文化があり、個々人の持つコンテンツ創造の潜在力は高いと考えられるが、これまでこの種のパーソナルなコンテンツは、広く世間の目に触れることは少なかった。しかし、ブログやSNS等の普及により、個人が自らの備忘録的な情報や経験に裏付けられた知識やノウハウを容易に情報発信できるようになるとともに、同じ関心を持つ他者との交流を通じて、お互いに共感しあうコミュニティが形成されるようになっている1
 その中で、最近の新潮流を紹介しよう。核家族化等により世代間交流や近所づきあいが失われつつある世相を反映してか、若い世代が本来は親の世代から受け継がれるべき知識やノウハウを習得したり、仲間と交換できる口コミサイトやブログ・SNSが人気を集めている。例えば、図表1は「クックパッド」という料理レシピサイトである。数十万件のレシピが掲載され、誰もがレシピを投稿できる。自分の調理レベルや調理環境にあったレシピが簡単に探せるという特徴があり、月間600万人が訪れる人気サイトである。ユーザの9割が女性で、特に20代・30代の女性に人気が高いという。また、「アトリエ」という手芸や手作り雑貨品等のレシピサイトも多くのユーザを集めている。
 
図表1 「クックパッド」の入り口画面
図表1 「クックパッド」の入り口画面
「クックパッド」のホームページを引用
http://cookpad.com/

 こうした口コミサイトやブログ・SNS等のソーシャルメディアを通じたコミュニケーションは、いわゆる「デジタルネイティブ」といわれる10代・20代には当たり前のようである。図表2は、ホームページ、ブログ、電子掲示板、SNSの年代別利用率を見たものであるが、10代・20代の利用率が他の年代に比べて高い傾向がある。若年層のネットや携帯電話でのコミュニケーションは、親の世代からすれば、例えば出会い系サイトへのアクセスや犯罪被害、掲示板やブログ等で友人から受ける誹謗中傷等、青少年の健全な育成に与える負の側面が心配されることが多い。しかし、こうした負の側面は、フィルタリング導入や、家庭や学校でのリテラシー教育やルール作り等である程度解決できるものであり、むしろ家族でSNSを使うなど「血縁」と「電縁」を重ねるような使い方をすれば、「デジタルネイティブ」との世代間交流の隙間を埋めることにもつながるだろう。
 
図表2 インターネット利用目的(年代別)
図表2 インターネット利用目的(年代別)
(出典)総務省「ユビキタスネット社会における安心・安全なICT利用に関する調査」(平成21年)
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 ソーシャルメディアは、単に人とのコミュニケーションだけでなく、他者との協働で新しいコンテンツを生み出すクリエイティブな世界でもある。例えば、携帯電話用SNSでは、リレー小説等の新しいコンテンツが生み出され、書籍化されたり、映画化されたりする事例も出てきている。また、映像やイラストを投稿するユーザ同士が協力し合い、新たな作品を生み出すプラットフォームとして活用されているサイトも人気である。こうした明日の日本を担う新しい世代が、元来日本人が持つ豊かなコンテンツ創造力を発揮し、日本独自の新しいモデルを生み出すことが期待される。


1 山下・川浦・川上・三浦(2005)、総務省情報通信政策研究所(2009)「ブログの実態に関する調査研究」を参照

 第3節 Trust:安心してネットが使えるための「電縁」

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