平成21年版 情報通信白書

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第1部 特集 日本復活になぜ情報通信が必要なのか

第2章 世界経済の変動と日本の情報通信

(2)情報通信関連のハードウェアを中心に価格低下が進行

●情報通信関連製造業等で特に顕著な価格低下
 図表2-1-2-5は、情報通信産業全体及びその内訳となる産業分類のデフレータの推移を示したものである。まず、情報通信産業全体のデフレータは、年平均5.1%減と一貫して下落を続けている。その産業分類毎の内訳をみると、特に情報通信関連製造業(年平均20.0%減)と情報通信関連サービス業(年平均9.7%減)の下落が著しい。この価格低下の動向が、前出の名目GDPと実質GDPのかい離の原因となっている。
 
図表2-1-2-5 情報通信産業のデフレータの推移
図表2-1-2-5 情報通信産業のデフレータの推移
総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成21年)により作成
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/link/link03.html
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●価格低下が著しいのはいわゆるデジタル財が中心
 価格低下の状況をより詳しく見てみよう。図表2-1-2-6は、情報通信に関連する財やサービスの物価指数13の動向である。平成12年時点を100とし、平成19年時点の指数で比較して特に価格低下が大きいものは、パーソナルコンピュータ(15.5)、電子計算機本体(24.7)、ラジオ・テレビ受信機(38.2)、ビデオ機器(38.6)、携帯電話機(40.3)等のいわゆるデジタル財である。このような傾向が生じるのは、デフレータの推計にあたり、技術革新の激しい財についてはヘドニック・アプローチという性能向上分を物価指数に反映させる手法が採用されているためであり、例えば同じ価格のデジタル製品であっても、処理速度や記憶容量が上がっていれば、その分価格低下が起こったものと評価されている。その結果、デジタル財の生産を含む情報通信関連製造業やデジタル財のリースを含む情報通信関連サービス業のデフレータは、大きく低下することとなっている。
 
図表2-1-2-6 情報通信に関連する機器・サービスの物価指数の推移
図表2-1-2-6 情報通信に関連する機器・サービスの物価指数の推移
以下の統計資料により作成
情報通信関連機器:日本銀行「企業物価指数(平成12(2000)年基準、消費税除く)」
情報通信関連サービス:日本銀行「企業向けサービス価格指数(平成12(2000)年基準、消費税除く)」
http://www.stat-search.boj.or.jp/index.html
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 一方、情報通信サービスでも価格低下が生じており、平成12年時点を100とした平成19年時点の指数で比較すると、通信サービス(固定電気通信で80.6、移動電気通信で85.5)、ソフトウェア開発(93.3)、情報処理サービス(96.5)、広告(新聞・雑誌・その他で96.7、ラジオ・テレビで96.6)等のサービスで緩やかな下落が続いている。

●情報通信機器やサービスの「コモディティ化」の兆候
 デジタル財の価格低下については、近年「コモディティ化」という現象が良く指摘される(コラムを参照)。「コモディティ化」とは、ある商品の普及が一巡して汎用品化が進み、競合商品間の差別化(機能、品質、デザイン、ブランド等)が難しくなって、価格以外の競争要素がなくなることをいい、その結果として価格下落を招くことが多い。例えば、特別の技術をもつ自社だけが生産できる製品を投入し、先行者利益をあげることが可能だが、やがて製造技術の普及や財のモジュール化、対抗する他社の製品の機能向上等により、機能や品質の面で大きな差のない廉価製品が市場に登場し、熾烈な価格競争が繰り広げられるようになるプロセスである。情報通信機器製造業では、半導体、メモリ、パソコン、最近では薄型テレビ等でも良く見られる現象と言える。
 一方、情報通信サービスでも「コモディティ化」が生じる余地がある。情報通信技術の普及や通信コストの低下により、インドや中国等の人件費が低廉な地域のエンジニアやプログラマを活用し、サービスを調達する「オフショアリング」が近年容易になっている。これらの地域では、国家戦略として高度ICT人材の育成にサービス提供先の語学教育も含めた形で注力しており、サービス品質も大幅に向上して先進国に近づきつつある。


13 企業物価指数及び企業向けサービス物価指数(いずれも平成12(2000)年基準、消費税を除く)

 第1節 課題に直面する日本の情報通信

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