平成11年版 通信白書

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第2章 情報通信の現況

(2)欧州

1998年初頭の電気通信市場の完全自由化により競争が激化

 EUでは、一部の加盟国を除いて1998年1月1日に音声電話サービス等への参入を自由化した。加盟各国では、国内法の整備や規制機関の設置が行われる一方、旧国営・独占電話会社は民営化されるとともに、外国事業者と提携した多数の事業者との激しい競争に直面しつつある。
 主要3か国(英国、ドイツ、フランス)の電気通信市場の概要をみると、とりわけ英国及びドイツにおける競争は激しく、市内・地域、長距離、国際通信のすべてを手がける旧国営・独占電話会社(ブリティッシュテレコムとドイツテレコム)に対して、その他の多数の事業者が市場に参入し、しのぎを削っている構図となっている(図表)。その結果、英国においては世界的に見ても低水準の長距離通話料金が実現している一方、ドイツでは、長距離通話料金は最大で70%の値下げが行われ、ドイツテレコムは長距離、国際通信市場においてこの1年間で20%のシェアを失うなど、その競争は激しさを増している。
 参入のスタイルとしては、EU域内外の事業者が新規参入コンソーシアムに参加し、各国の主要事業者が相互に進出して競争する状況が出現するとともに、ドイツテレコムとフランステレコムの戦略的提携や合併等の動きが加速している。
 また、1999年1月のEU通貨統合も事業者の競争に影響を与えている。共通通貨「ユーロ」の導入に伴い、回線小売料金や相互接続料金、国際精算料金の比較が可能となり、競争の進展に伴いコストの値下げ圧力が生じるとともに、欧州規模のエンド・トゥー・エンド・サービスの導入や事業者のユーロによる決済も開始されており、欧州全体が一つの大きな通信市場を形成しつつある。
 一方、政策の動向に目を転じると、EUは、1998年においても加盟国における事業者間の競争の現状分析を行ったほか、情報通信分野における研究開発予算の確保を図るなどの政策を積極的に推進している。また、通信・情報技術・メディアの融合時代の規制の在り方に関する検討を進めている。その概要をみると以下のとおりである。
1)「EUにおける電気通信自由化の実施状況に関する欧州委員会レポート」(1998年11月)
 電気通信自由化から約10か月経過した加盟諸国の国内法の整備及び実施を中心に自由化の進展状況について以下のとおり総括し、一部の国において是正措置は必要であるが、総じて大きな問題はないと結論づけた。
 (i)EUが採択した法規の多くが各国において国内法として制定されている。
 (ii)EUの法律パッケージの主要な規制課題(国内規制機関、免許付与、相互接続、ユニバーサルサービス、タリフ、番号計画、周波数、線路用権)を実施するための国内法が運用に入りつつある。
 (iii)加盟各国においてダイナミックな電気通信市場が急速に出現しつつある。
2)第5次研究開発フレームワークプログラムの策定(1998年10月)
 研究開発フレームワーク・プログラムとは、EUの4年度にわたる研究開発への支援計画である。
 1998年10月には、第5次プログラムとして、1999年から2002年までの4年間で、149億6,000万ユーロの予算が計上されることが決定した。このうち情報通信分野(User Friendly Information Society)は、予算配分で最重要視されており、総額の4分の1が割り当てられることとなった。
3)1998年における通信・情報技術・メディアの融合を巡る動き
 1997年12月に発表した「電気通信メディアと情報技術の融合及び規制の影響に関するグリーンペーパー」に関して、1998年7月にパブリック・コメントを以下のとおり総括した。
 (i)現在の構造を基礎にした規制が将来も続くことを多数が支持
 (ii)既存制度に加えて新規事業に別の規制体系を導入することには多数が懸念表明
 (iii)規制の全面的見直しは長期的に有効(すなわち現段階では時期尚早)との意見が多数
 この意見総括と同時に、さらに以下の3点の課題を提示し、これに対するコメントを同年11月まで受け付けた。
 (i)融合環境におけるネットワークとデジタル・ゲートウェイへのアクセス
 (ii)コンテンツの制作、流通、利用促進、投資、開発のための枠組み
 (iii)バランスのとれた規制策定ルールの確保
 今後欧州委員会ではこのパブリックコメントを総括するとともに、1999年の通信規制レビューに組込むべき点について発表する予定である。

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