平成11年版 通信白書

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第2章 情報通信の現況

コラム2 高速伝送技術

WDM等の技術の実用化により高速伝送が飛躍

 ネットワーク技術の性能向上には、光ファイバの伝送技術が大きく影響する。インターネット利用者の増加などに伴い、通信トラヒックが増加する中(1-5-3(1)参照)、これに対応していくため様々な技術が用いられている。
 光ファイバの技術レベルは、1980年代に損失0.2dB/km(光強度が約15kmで半分減衰する透明度)以下を達成したが、その後大きな進展はみられていない。現在、非石英系ファイバによる更なる低損失化が研究されているが、現時点での最良値は石英系ファイバを越えておらず、しばらく、石英系ファイバの利用が続くと考えられる。また、現在の光ケーブルの高密度化は1ケーブル当たり1000芯程度まで可能であるが、海底ケーブルではケーブル敷設作業の問題や海底中継器の大きさの制限などから8芯程度が限度である。
 したがって、今後の通信トラヒックの急増に対処するためには、光ファイバを増設せずに、既存の資源を使って高速伝送、長距離伝送する技術が必要になってくる。これらの実現のために現在WDM(波長分割多重:Wavelength Division Multiplexing)技術と光ソリトン技術が研究されている。
 WDMは、1芯の光ファイバで波長が異なる複数の光信号を伝送する技術である(図表1))。WDMを使用せずに単一の波長を用いた場合、1芯当たり2.5〜10Gbpsが限界であるが、4波多重することにより10〜40Gbpsの伝送が可能となる。現在、10Gbps信号を16波多重した160Gbpsの伝送が実用段階に入っている。また、光ソリトン技術とは、光ファイバの性質から起因する波形が広がる性質と狭まる性質を、バランスをとりながら原波形を保ち、長距離伝送を行っても光の波形が崩れないように細い光パルスを使う技術で、理論的には20〜100Gbps/20,000km程度の伝送が可能である(図表2))。
 現在研究段階においては、WDMと光ソリトン技術を組み合わせることにより、1芯の光ファイバで20Gbpsの光ソリトン信号を20波多重した総伝送容量400Gbpsを実現している。さらに、1芯に数千波を束ねたDWDM(高密度波長分割多重:Dense WDM)技術も研究されており、将来的な通信トラヒックの対応に向け今後商用化されていくものと考えられる。


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