平成11年版 通信白書

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第1章 特集 インターネット

第1節 インターネットを巡る国際潮流

1 ドメインネームの管理体制

政府主導から民間主導へ、国際的にバランスのとれた管理体制への移行

1)従来のドメインネームの管理体制(米国政府主導による管理体制)
 インターネットにおけるドメインネームの国際的な管理については、従来から米国政府の支援を受けて、米国のIANA(Internet Assigned Numbers Authority:故ジョン・ポステル氏を中心とする南カリフォルニア大学の情報科学研究所に属する機能)(http://www.iana.org/)が、インターネットに関する技術の開発・標準化・普及促進、TLD(Top Level Domain)の創設方針など関連制度の策定に関して、頂点組織としての役割を果たしてきた。
 また、gTLD(generic TLD:一般トップレベルドメイン)については、米国バージニア州の民間企業であるネットワーク・ソリューションズ社(NSI)(http://www.networksolutions.com/)が独占的に登録業務を行ってきた(図表1))。
2)新たなドメインネームの管理体制確立に向けた国際的な議論
 従来のドメインネームの管理体制は、IANA、NSIに対する国防総省(DARPA)、全米科学財団(NSF)といった米国政府の財政的援助が行われてきたという事実が示すように、米国中心、政府主導であったが、これは、インターネットが米国発祥であるという歴史的経緯によるものである。
 しかし、最近のインターネットの全世界的な普及に伴い、インターネットをより国際的に開かれたものにすべきであるという議論が高まる中、ドメインネームの管理に関する米国政府とIANA、NSIの契約が1998年9月末をもって終了することを見込んで、民間主導で国際的にバランスの取れた新たなドメインネームの管理体制を構築するべきであるという国際的な動きが活発化した。
 このような動向の中、1998年1月30日に米国政府が、「インターネットの名前およびアドレスの技術的管理の改善についての提案」(いわゆるグリーンペーパー)を公表し、官民の利害関係者からコメントを招請した。このグリーンペーパーにおいては、IANAに替わる頂点組織として非営利法人を設立すること等が提言されたが、依然米国政府の関与を継続するというものであり、提出されたコメントにおいてもこの点に関する批判が相次いだ。
 グリーンペーパーに対するコメントを踏まえ、1998年6月5日、米国政府の最終方針として、ホワイトペーパーが公表された(図表2))。
 ホワイトペーパーの公表を受け、民間部門の意見を調整し、新たなドメインネーム管理体制を民間主導で構築するために、1998年7月から8月にかけて世界各地でIFWP(International Forum on the White Paper)会合が開催された。新たな頂点組織である非営利法人の在り方について、4回の会合で議論が重ねられたが、新法人の設立場所、法的管轄権、理事会メンバーの人選等を巡って調整がつかず、結局結論には至らなかった。
 IFWP会合で民間案の調整に失敗したため、これまで従来のドメインネーム管理体制において中心的地位を占めてきたIANAとNSIが連携して、再度民間案の取りまとめに乗り出した。1998年9月17日には、IANAとNSIが連名で共同提案を公表し、政府機関を含む利害関係者に対してコメントを招請した。我が国からも、郵政省をはじめとして、通商産業省・科学技術庁・文部省の4省庁連名で、同提案に対するコメントを提出した。IANAは、これらのコメントを踏まえて修正を加えたものを民間最終案として、1998年10月2日にNTIA(米国商務省電気通信情報庁)に対して提出した。
3)新たな頂点組織としてのICANNの設立
 米国政府は、提出された民間最終案を基に、再度利害関係者のコメントを招請し、国際的な合意が得られたものとして、1998年11月25日、カリフォルニア州非営利公益法人法に基づいて設立されたICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)( http://www.icann.org/)との間で覚書(MoU)を締結した。これにより、今後、ドメインネームの国際的な管理体制は、非営利法人ICANNを中心に運営されることとなった(図表3))。
 また、これまでNSIの独占により行われてきたgTLDの登録業務については、1998年10月7日に米国政府とNSIが、gTLD業務にNSI以外の登録業者の参入を促進すること、ルートサーバの運用を将来的にICANNに移行すること等を内容とする契約を締結した。これにより、gTLD登録業務に競争が導入されることとなった。
4)今後の展望
 新たなドメインネーム管理体制は、非営利法人ICANNを中心に民間主導で国際的バランスに配慮して運営されていくこととなったが、依然、ICANNの組織の確立、gTLD登録業務への競争導入、ドメインネームに関する紛争処理体制の在り方、ドメインスペースの拡大など、ICANNが当面対応を求められる問題は山積している。
 1999年3月には、シンガポールでICANN会合が開催され、政府諮問委員会(我が国からも委員を選出)等が組織されたが、1999年中は、これらの問題について、ICANNの積極的な取組が期待されているところである。

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