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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第2節 グローバルに展開するICT市場

(3)経済発展へのUnique Path


 このような携帯電話の急速な発展の要因としては、複合的な面があると考えられるが、途上国側と先進国側のそれぞれに固有の要因があると指摘されている。途上国側の要因として、第1に、携帯電話の音声通話は、文字が読めなくても利活用することが可能である。第2に、設備面においても、ネットワーク整備の際、点でのインフラによって整備を行うことが可能であり、ネットワーク整備にかかる投資コストや維持管理コストが固定電話と比較して相対的に小さいと考えられる5。第3に、プリペイド方式での料金徴収が可能であるなど、条件面で利用者にとっても容易な点が挙げられる。このような途上国側の要因に、先進国における携帯電話市場の飽和や携帯電話(特に3Gへの技術移行に伴う2G)の低価格化等先進国側の要因も相まって、急速に普及したことが考えられる6
 従来は、所得水準も教育水準も低い国や地域においては、貯蓄が不十分で投資余力がなく(インフラの壁)、また、技術の受け入れ・定着が進まない(技術利活用の壁)ため、経済発展に向けた内生的なメカニズムが働きにくいと考えられてきた。しかし、携帯電話などのICTが一度社会に普及すれば、その音声機能を出発点としつつ、次第にSMSなどの利用を通じて、文字情報の利活用機会が広がる(図表1-2-3-3)。また、携帯電話をマイクロファイナンスとして応用する等、従来の銀行制度からは縁遠かった人々が貨幣経済に加わる道も広げつつ、「インフラの壁」「技術利活用の壁」を打破し、ネット化への流れを進める潜在力を有していると考えられる。

図表1-2-3-3 経済発展へのUnique Path
図表1-2-3-3 経済発展へのUnique Pathの図
(出典)篠崎彰彦・佐藤泰基「ICTが経済・社会に及ぼす影響のグローバルな躍動感」(平成24年)


5 例えば、NTTのウェブサイト「365°Vol.27」では「固定電話は中継局舎の建設に加えて、ケーブルを敷設するための「面の開発」が必要だが、携帯電話はケーブルを必要とせず、アンテナを設置する「点の開発」だけで済む。つまり、携帯電話はケーブルの敷設に必要な用地買収や借用が最小限で済み、低いコストで「通信」が手に入る。」とある。
6 篠崎彰彦・佐藤泰基「ICTが経済・社会に及ぼす影響のグローバルな躍動感」(平成24年)を参照。
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