総務省トップ > 政策 > 白書 > 24年版 > 我が国全体でみた労働生産性向上への情報資本ストックの寄与
第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第4節 ICTイノベーションによる「課題解決力」の実証

(2)我が国全体でみた労働生産性向上への情報資本ストックの寄与


 まず、マクロ生産関数に基づいて、情報資本ストックの蓄積が労働生産性の向上に寄与しているかについて検証を行った。その結果、資本設備の情報化要因の係数がプラス(0.20)でかつ有意となっており、情報資本ストックの蓄積が労働生産性に対して有意にプラスの寄与をしていることが確認できた(図表1-4-1-2)。また、労働生産性変化率の要因分解を行うと、すべての期間において、資本設備の情報化要因が労働生産性の上昇に対してプラスの効果を発揮しており、情報資本ストックの蓄積が労働生産性向上をけん引していることがわかる。

図表1-4-1-2 我が国の労働生産性変化率3の要因分解
図表1-4-1-2 我が国の労働生産性変化率の要因分解のグラフ
※Prais-Winsten推定法
※労働生産性(V/L)変化率=[(α+β)×一般資本装備率(Ko/L)変化率]+[β×情報資本・一般資本比率(Ki/Ko)変化率]
In(V/L)=2.33+0.42ln(Ko/L)+0.20(Ki/Ko)
(24.36) (21.16) (13.50)
adjR2=0.9986, D.W=1.541,( )内t値
(出典)総務省「ICTが成長に与える効果に関する調査研究」(平成24年)

 ところが、リーマンショックの影響が色濃い2008(平成20年)〜2010年(平成22年)を除き、資本設備の情報化要因が労働生産性の上昇に寄与する程度をみると、1999(平成11年)〜2001年(平成13年)の1.29%から2002年(平成14年)〜2004年(平成16年)は0.15%、2005年(平成17年)〜2007年(平成19年)は0.19%と低下トレンドにある。また、2000年(平成12年)以降は労働生産性の伸びも低下トレンドとなっており、2000年(平成12年)以降の情報化投資の低調さが労働生産性の減速に影響していることが考えられる。


3 労働生産性変化率の実績値と推計値について
 実際に測定された労働生産性変化率の値のことを実績値、(1)式の「一般資本装備率の変化率」と「資本設備の情報化の変化率」に具体的な値を代入して得られる値を推計値と呼ぶ。パラメータα、βは統計的手法(回帰分析等)によって求められる推定パラメータである。
 労働生産性変化率(推計値)=α×(一般資本装備率の変化率)+β×(資本設備の情報化の変化率)・・・(1)
 推定パラメータα、βの係数値は、それぞれ一般資本装備率、資本設備の情報化が1%変化したとき、労働生産性が何%変化するかを示す指標で、係数の値が大きいほど労働生産性への影響度が大きいことを意味している。
 なお、推計値には「誤差」が伴うため、実績値と推計値との間には次の(2)式の関係が成立する。実績値と推計値に乖離(誤差)が生じるのは、説明変数(一般資本装備率、資本設備の情報化)では説明しきれない未知の要因(例えば、労働規制の導入等)が存在するためである。
 労働生産性変化率(実績値)=労働生産性変化率(推計値)+誤差・・・(2)
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