総務省トップ > 政策 > 白書 > 24年版 > 医療分野におけるICT利活用に向けた取組〜医療情報連携基盤(EHR)
第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第4節 ICTイノベーションによる「課題解決力」の実証

(5)医療分野におけるICT利活用に向けた取組〜医療情報連携基盤(EHR)


ア 医療情報連携基盤(EHR)の推進
 総務省では、「新たな情報通信技術戦略」(平成22年IT戦略本部)における「どこでもMY病院」構想、「シームレスな地域連携医療」の実現の基盤となる、医療・健康情報を電子的に管理活用することを可能とする仕組である医療情報連携基盤(EHR:Electronic Health Record)の普及推進のため、厚生労働省及び経済産業省と連携し、平成23年度より「健康情報活用基盤構築事業」において、地域の保有する医療・健康情報を安全かつ円滑に流通させるための広域共同利用型の医療情報連携基盤に関する実証事業を実施している(図表1-4-8-6)。また、平成23年度より「東北メディカル・メガバンク計画」の推進のため、被災地域におけるEHRの構築を支援する措置を講じている。

図表1-4-8-6 医療情報連携基盤(EHR)のイメージ
図表1-4-8-6 医療情報連携基盤(EHR)のイメージの図
 EHRを活用して医療・健康情報を本人や医療従事者等の関係者間で共有する取組は、患者・医療機関等の負担を軽減するとともに、地域医療の安定的供給、医療の質の向上、さらには医療費の適正化にも寄与するものであり、このような仕組が普及することにより、我が国における医療サービスの質の向上とともに、個別化医療18などの高度医療を支える基盤の実現が期待できる。

イ 「健康情報活用基盤構築事業」における取組事例
 総務省は、平成23年度より、「健康情報活用基盤構築事業」において、広域的なEHRシステムの確立を目的として、香川県高松市を中心とする地域、広島県尾道市を中心とする地域、島根県出雲市を中心とする地域の3地域において、処方情報の電子化・医薬連携、医療・介護連携・共通診察券の活用についての実証事業を実施している。
 3実証地域で実施した共通アンケート結果においては、EHRの効果として、診療の質の向上、服薬指導の質の向上、事務の効率化等の効果が挙げられている(図表1-4-8-7)。そのほか、実証事業の検証結果として、EHRを閲覧することで重複検査が減少したとの結果や、患者本人が自らの診療情報・調剤情報を確認し健康状況を把握するため、特定健診前の時期にはEHRの閲覧数が増加したという結果が得られている。一方、EHR普及のためには、EHRの効果に関するエビデンスの積み重ねや継続的な運営モデル構築の重要性が指摘されている。

図表1-4-8-7 EHRを活用した取組による効果
図表1-4-8-7 EHRを活用した取組による効果のグラフ
総務省「健康情報活用基盤構築事業」3実証地域において行った共通アンケート結果により作成

ウ 東北地域医療情報連携基盤構築事業(「東北メディカル・メガバンク計画」)における取組事例
 東日本大震災においては、津波により、病院に保管されていた紙カルテが消失し、患者の病歴や過去の診療情報が失われ、被災地域における適切な医療の提供が困難になったといった事例が報告された(第3章第2節参照)。災害対策の観点からも、クラウド技術を活用し、医療機関等が保有する患者の診療情報・処方情報等を電子的に記録・蓄積・閲覧可能とし、災害時においても、必要に応じて、患者の診療情報等を参照・共有できるEHRの仕組の重要性が注目されている。
 また、「日本再生の基本戦略」(平成23年12月閣議決定)においては、「東北メディカル・メガバンク計画」の下、東北大学を中心として、被災地の住民の健康・診療・ゲノム等の情報を生体試料と関連させたバイオバンクを形成し、創薬研究や個別化医療の基盤を形成するとともに、地域医療機関等を結ぶ情報通信システム・ネットワークを整備することにより、東北地区の医療復興に併せて、次世代医療体制を構築することとしている。
 これを受け、総務省では、厚生労働省及び文部科学省との連携の下、「東北メディカル・メガバンク計画」の実現に向け、平成23年度より、被災地域の医療圏において、医療機関等の保有する患者・住民の医療・健康情報をクラウド技術を活用して、安全かつ円滑に記録・蓄積・閲覧するためのEHRの構築を支援する措置を講じている(図表1-4-8-8)。

図表1-4-8-8 東北地域医療情報連携基盤構築事業(東北メディカル・メガバンク計画)のイメージ
図表1-4-8-8 東北地域医療情報連携基盤構築事業(東北メディカル・メガバンク計画)のイメージの図


18 遺伝子情報などに基づき個々の患者に最適な治療法を提供する医療。
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