総務省トップ > 政策 > 白書 > 24年版 > ビッグデータの積極活用による成長の実現に向けて
第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第1節 「スマート革命」 ―ICTのパラダイム転換―

(5)ビッグデータの積極活用による成長の実現に向けて


 上記のように、ビッグデータは、日本再生へのGPT(General Purpose Technology)としてのICTの潜在力を飛躍的に高める可能性を秘めている。震災復興・日本再生にICTがそのけん引力となって貢献していく上で、ビッグデータの活用により、ユビキタスネットワークをスマート化し、ICTが社会の課題解決力やサービス革新・生産性向上など経済成長力をさらに高めることが重要である。
 一方、ビッグデータの活用においては、様々な分野で生成される多種多量のデータを横断的に活用し社会全体で知識や情報の共有が可能となるように、その公開や流通を促進し、かつ分野横断的な連携を図ることや、個人に関するデータの取扱いをめぐる問題など実社会への適用において生じる制度的課題、技術開発の進展状況等に関する国際的な動向を踏まえつつ技術的課題の解決に取り組むことが求められている(例えば、米国のネット系プラットフォーム事業者による利用者の行動履歴等各種情報の活用は、主要国においてプライバシー保護との関係で諸問題を発生させている。)。この他にも、ビッグデータの活用に必要な統計等の知識を備えた人材の不足や、その経済効果や社会的課題の解決効果の見える化を図り各産業部門や地域、国民利用者にその意義を目に見える形にすることによる理解促進など、ビッグデータを幅広い分野で活用する環境を整備するための課題が存在し、このような課題に対し国際連携も図りつつ対応することが求められている。
 このような観点を踏まえ、ビッグデータを戦略的に推進する必要性としては次のような点が挙げられる。
 まず、競争の激化等が進展する国際経済・社会において、我が国は、これまでICTをはじめとする科学技術力とともに車の両輪として成長を支えてきた人的資源が世界に先駆けて今後急激に減少・少子高齢化していく状況となっている。さらに、労働力人口の減少とあいまって、経済成長が低下していく恐れに見舞われており、今後の我が国の成長のためには、既存資源の高度な活用や新たな資源の活用が早急に必要な状況となっている。
 他方、我が国においては、東日本震災を契機として情報及びそれを支えるICTが命を守るライフラインであることが再認識され、また、ICTの進展により多様なデータ資源が爆発的に生成・蓄積等されてきている。
 したがって、以上のような状況において、ものづくりをはじめとする我が国の強みを生かしつつ国際競争力を強化し、更なる成長を実現するためには、ビッグデータを戦略的な資源と位置付け、国として実社会分野におけるビッグデータの利活用を積極的に推進することが重要である。
 具体的には、既に第1章のトピックで「オープンデータの活用に向けた期待」を紹介したが、多様な分野において閉じた形で保有されているデータについて、オープンガバメントの推進等、官民におけるオープンデータ化、横断的活用のための環境整備の在り方について検討を進めることが求められよう。また、ものづくりに世界的な強みを有している我が国において、個人情報等にも配慮しつつ、M2M等のセンサーネットワーク等を通じて生成・収集等される多種多量のデータについて、社会全体で共有可能な知識や情報の創発が促進されるよう蓄積・公開・流通・連携等させることを通じ、分野横断的かつリアルタイムに解析等利活用して、社会的課題の解決や経済の活性化を実現することも重要である。さらに、認証、秘匿化や制御等に関する技術のさらなる発展等により、安心・安全なビッグデータの利活用が進展していくことが期待される。
 以上を踏まえると、「課題先進国」である我が国において、ビッグデータを利活用することで付加価値を生み出し、ICTの成長けん引力、ツールとしての機能を強化し、様々な課題解決につなげ、新たな価値創造が可能な環境を実現することが求められているといえよう19

図表2-1-4-7 ビッグデータの活用を推進するための基本的な方向性(ICT政策として取り組むべき課題)
図表2-1-4-7 ビッグデータの活用を推進するための基本的な方向性(ICT政策として取り組むべき課題)の図
(出典)情報通信審議会ICT基本戦略ボード資料


19 情報通信審議会において検討されている「Active ICT JAPANの実現に向けたICT総合戦略(案)」においては、ビッグデータ利活用による社会・経済成長が重点領域の一つとして位置づけられ、その実現のための戦略としてアクティブデータ戦略が盛り込まれている(第5章第1節2参照)。
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