総務省トップ > 政策 > 白書 > 24年版 > 新たな周波数帯域等での新放送メディアの展開
第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第3節 デジタルネットワーク完成が導くメディア新展開

(2)新たな周波数帯域等での新放送メディアの展開

 地上デジタル放送への完全移行により、従来370MHz幅の周波数帯域を使用していた地上テレビ放送の周波数は、240MHz帯域と3分の2以下に縮小した。これにより、我が国はスマートフォン等の急速な普及により逼迫の度を強めている携帯電話サービス用周波数や、より安全な道路交通社会の実現、防災など安全・安心の確保といった新たな公共業務用周波数帯域を確保することができた。加えて、地上デジタル放送の完全移行により生じた空き周波数帯域は、新たに、ユビキタスネットワーク環境下での通信と放送の融合・連携を指向する携帯端末向けマルチメディア放送サービスの実施に使用される予定であり、平成24年4月には、空き周波数帯域における初の商用サービスとして、V-Highマルチメディア放送の運用が開始されている。また、地上デジタル放送用に使用されている帯域においても、地理的条件や技術的条件によって他の目的にも利用可能な周波数であるホワイトスペースの活用について、制度整備が進められている。

図表2-3-1-3 地上デジタル放送完全移行による空き周波数帯域の利用用途
図表2-3-1-3 地上デジタル放送完全移行による空き周波数帯域の利用用途のグラフ

図表2-3-1-4 携帯端末向けマルチメディア放送概要
図表2-3-1-4 携帯端末向けマルチメディア放送概要の図

ア V-Highマルチメディア放送
 V-Highマルチメディア放送(携帯端末向けマルチメディア放送のうち、207.5MHz以上222MHz以下の周波数を使用するものをいう。)については、総務省では、平成23年7月に、その業務の認定に係る制度整備を行い、同年10月には、V-Highマルチメディア放送の業務の認定を行った(いわゆるソフト事業者の決定)。これを受け、平成24年4月に三大都市圏及び福岡県、沖縄県でV-Highマルチメディア放送のサービスがmmbiにより開始された(サービス名称:NOTTV)。総務省では、今後も、周波数の有効利用を促進するための検討を行っていく予定である。
 現在「NOTTV」の名称で提供されているサービスの特徴としては、①リアルタイム型放送に加えて、従来の放送にはない②蓄積型放送と③通信と放送の連携(機能及びサービス)が提供されることが挙げられる。②、③については、シフトタイム視聴や、音楽、新聞・雑誌、電子書籍・ゲーム等様々な形式のコンテンツが提供される予定である。mmbiでは、初年度で100万件超の加入契約を目指している。
 また、mmbiでは、スマートフォンの普及で映像を画面が大きいスマートフォンで見ることが普及しつつあることを踏まえ、「モバイル・スマートTV」を標榜している。平成24年6月現在スマートフォン及びタブレット端末が受信端末として提供されており、放送受信と通信双方がはじめから可能となっている。このため、同社では、放送番組そのものについて通信との連携を前提として製作するとともに、他のメディアへのゲートウェイとなるサービスや、ソーシャルメディアとの連携を通じて視聴者が様々な観点から参加できるフィールドを提供することも視野に入れている。
 番組製作においては、従来型放送以外に新しい番組製作の仕方を取り入れるべく、インターネット系コンテンツの製作方法や人材の活用、他のメディア(放送局、出版社など)との積極的な連携を図り、相乗効果を生じる仕組の追求やプレミアム・コンテンツに対する課金システムの提供など、コンテンツ・プロバイダとして事業展開の場を広げることも想定されている。端末についても、今後はゲーム機、デジタルサイネージ、カーナビゲーション機器などへの進展を図ることも検討されている。

図表2-3-1-5 「NOTTV」サービスイメージ・番組編成
図表2-3-1-5 「NOTTV」サービスイメージ・番組編成の図
(出典)mmbi資料

イ V-Lowマルチメディア放送
 V-Lowマルチメディア放送(携帯端末向けマルチメディア放送のうち、90MHz以上108MHz以下の周波数を使用するものをいう。)については、総務省では、平成23年1月から2月に制度の枠組について意見募集及び参入希望調査を行い、同年8月から9月までの間、事業者等へのヒアリングを実施した。ヒアリングで要望のあった実証実験について、同年11月に実験計画の提出を求め、同年12月に、実験に関心のある者の間で情報を広く共有できるよう、提出された計画をとりまとめ、公表した。今後、実験の進捗状況等について広く共有していくとともに、実験の成果等を踏まえて制度について引き続き検討を行っていく予定である。

ウ ホワイトスペースを活用したエリア放送の制度化
 放送用などの目的のために割り当てられているが、地理的条件や技術的条件によって他の目的にも利用可能な周波数であるホワイトスペースの活用については、「新たな電波の活用ビジョンに関する検討チーム」報告書(平成22年7月)において、平成23年度中までにエリア放送型システムの制度化を行うこととなっており、また、「『国民の声』規制・制度改革集中受付に提出された提案等への対処方針」(平成23年4月8日閣議決定)では、エリア放送型システムについて「平成22年度検討開始・平成23年度結論」とされていた。
 これらを受けて、総務省では、ホワイトスペースを活用したエリア放送について必要な制度整備を行い、平成24年3月30日に公布、同年4月2日に施行した。本サービスは、ホワイトスペースを活用して行われるワンセグ携帯等の地上デジタルテレビ放送受信機に向けたエリア限定の放送サービスである。サービス形態としては、①対象:スタジアムや美術館の中、商店街等の小規模のエリア、②期間:恒久的な放送のほか、サッカーの試合やお祭り等イベントでの臨時に行うもの、③内容:イベント情報、観光情報、地域交通情報等、ローカルな情報が想定されている。
 エリア放送の実用化により、ホワイトスペースを有効活用し、観光や防災情報など、地域における情報提供サービスが一層充実することが期待される。

図表2-3-1-6 エリア放送(イメージ図)
図表2-3-1-6 エリア放送(イメージ図)の図


1 図の緑の部分は地デジに混信を与える範囲であり、地デジのエリアと重複した範囲では混信が想定される。
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