総務省トップ > 政策 > 白書 > 24年版 > ICT化及び業務改革等取組の状況とICT化の効果
第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第4節 ICTイノベーションによる「課題解決力」の実証

(5)ICT化及び業務改革等取組の状況とICT化の効果


 ICT化及び業務改革等取組の状況とICT化の効果について分析を行ったところ、ICT化に加えて、取組を行うことにより、ICT化の効果を享受している傾向にある(図表1-4-6-5)。組織改革、人的資本の充実、ICT導入の検証といった経営努力は、生産性上昇に結実する可能性が高く、ICT投資による成長のみならず、企業改革を併せて進めている企業の方が成長している。

図表1-4-6-5 ICT化、取組とICT化の効果の関係
図表1-4-6-5 ICT化、取組とICT化の効果の関係のグラフ
(出典)総務省「ICTが成長に与える効果に関する調査研究」(平成24年)

 具体的に、ICT化の効果について、経営面、業績面、顧客面、業務面、職場面の効果に分解して分析をした(図表1-4-6-6)。その結果、最も効果を得られる組み合わせは、ICT利活用と企業改革を併せて進めている企業であった。また、経営面・業績面や業務面(付加価値)など、単にICT化をしたのみでは、業務改革による効果と同程度しか得られておらず、両者をともに取り組んで最大の効果が得られることがわかる。

図表1-4-6-6 ICT深化と取組進展と効果の関係(カテゴリー別)10
図表1-4-6-6 ICT深化と取組進展と効果の関係(カテゴリー別)のグラフ
(出典)総務省「ICTが成長に与える効果に関する調査研究」(平成24年)

 「取組スコア」の高低については、ICT化に伴う取組・企業改革に関する項目(合計17問)について、過半の項目(9項目以上)に「実施した又は対応した」と回答した企業群を「取組(高)」とし、それ以外の企業群(実施・対応した項目が8項目以下)については「取組(低)」とした。またICT化に伴う取組・企業改革に関する項目における3つのカテゴリー(「社内の業務改革(6項目)」、「社外との取引改革(6項目)」、「人的改革・投資(5項目)」)それぞれの高低についても、各カテゴリーにおいて過半の項目に「実施した・対応した」と回答した企業群を高とし、それ以外の企業群を低とした。
 「ICT化」と「ICT化に伴う取組・企業改革」の高低のパターンを4つに分類すると、「ICT化」と「ICT化に伴う取組・企業改革」の双方が「高い」組合せの企業群が最も高いICT化の効果を享受しているのに対し、どちらも「低い」組合せの企業群の効果は最も低い。注目点は、「ICT化」の高低に関わらず、「取組スコア」が高い企業群の効果が、「取組スコア」が低い企業群の効果を凌駕していることで、組織レベルの改革の多寡がICT化の効果に大きな影響を及ぼしていることがわかる。ICT化の効果を最大限に発揮するためには、企業組織レベルにおける業務・人的改革等との相互連携が重要である。
 また、「ICT化に伴う取組・企業改革」について詳細にみると、いくつかの効果については「社内の業務改革」及び「人的改革・投資」に比べ「社外との取引改革」を積極的に実施している企業群ほど高い効果を得られている。このことは、ICT導入に伴い社内の業務改革や人材の育成など既存組織内にとどまる改革だけではなく、社外へ視野を広げた大掛かりな改革も有効であることを示唆している。
 今回の調査では、ICT投資は行われていても、企業改革を実施した割合は必ずしも高くないことがうかがえた。また、ICT導入の効果が得られた場合にも、現場レベルでの効果にとどまり、経営・業績面での効果や社外に広がる価値創造の効果の面までには至っていないものが多い11。一方、ICT導入と合わせ企業改革を行った場合、経営・業績面や付加価値面でも高い効果が得られることが確認された。
 ICT投資を行う際に、併せて組織改革、人的資本の充実、ICT導入の検証といった経営努力は、生産性上昇に結実する可能性が高い。ICT投資による成長のみならず、企業改革を併せて進めていくことが求められよう。


10 「ICT化」の高低については、ICT利活用状況に関する項目(合計19問)について、過半の項目(10項目以上)に「実施した」と回答した企業群を「ICT化(高)」とし、それ以外の企業群(実施した項目が9項目以下)については「ICT化(低)」とした。
11 情報通信総合研究所・九州大学篠崎研究室(2007)、篠崎・山本(2009)や篠崎・佐藤(2011)では、日本企業と米独韓との4か国比較分析から、日本企業は他国に比べ、ICT導入に伴う企業改革実施割合が低く、ICT導入効果も他国に比べ見劣りする傾向が見られるとし、日本企業の企業改革への消極姿勢がICT導入効果を削いでいる可能性を示唆している。
テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る