総務省トップ > 政策 > 白書 > 24年版 > 医療分野におけるICT化の効果
第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第4節 ICTイノベーションによる「課題解決力」の実証

8 医療分野におけるICT利活用が拓く可能性


(1)医療分野におけるICT化の効果

 公的分野のICT利活用の中で、とりわけ国民生活に密着し幅広い社会経済効果が期待される医療分野におけるICTの利活用については、遠隔医療、疾病管理をはじめとする様々な分野で実証実験など導入に向けた取組が進められている。しかし、諸外国と比較したときに、我が国の医療分野におけるICT利活用について遅れを指摘する意見もある。
 では、医療分野におけるICT化の効果はどうなのだろうか。まず、ウェブアンケート調査14を基に、医療機関について、積極的にICT化に取り組んでいる機関とICT化への取組が進展していない機関において、ICT化の効果についてどのようにとらえているか分析を行った。その結果、積極的にICT化に取り組んでいる医療機関ほど情報共有、事務処理向上や労働時間短縮等の効果を得ており、ICT利活用の進展は医療機関に便益をもたらすことがうかがえる(図表1-4-8-1)。

図表1-4-8-1 医療機関 ICT化と効果の関係
図表1-4-8-1 医療機関 ICT化と効果の関係のグラフ
(出典)総務省「ICTが成長に与える効果に関する調査研究」(平成24年)

 また、積極的なICT化の実施により医師同士や医師と医療事務従事者との情報共有やレセプト作成の容易化など、院内における取組に高い効果がみられている。一方で、院外との情報共有や連携の効果については、「ICT化(高)」の機関でも肯定的な回答は5割程度である。今後、医療分野におけるICT利活用による国民生活への幅広い効果を実現するためには、ICT化による現場レベルの作業効率向上だけではなく、院外との連携を強化することで、その可能性が一層高まるものと考えられる。
 医療分野におけるICTの利活用を進めていくことは、医療機関のみならず、国民全体にとっても大きな便益をもたらすものと期待される。医療分野でのICT利活用を進めて行くに当たっては、医療の提供機関を中心に少なからず費用負担が必要となるなどの課題も多く、幅広い理解を促進するためには、導入による便益が明確に示されていることが望まれる。しかしながら、我が国における医療分野のICT化による便益やその効果については、個々の事業の事例などを示すにとどまっているものが多く、特に定量的評価がなされているものが少ない。
 そこで、今回、医療分野のICT化による社会経済効果について、より広範囲の対象について包括的なエビデンスを収集し、その便益について発現過程を極力網羅的に整理し、得られたデータをもとに、定量的試算を実施した15


14 調査の概要については、付注2を参照。
15 本調査に当たっては、長谷川高志氏(日本遠隔医療学会理事、群馬大学医学部講師、岩手県立大学客員教授)及び秋山美紀氏(慶應義塾大学環境情報学部准教授)の助言を得て分析を行った。
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