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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第3節 デジタルネットワーク完成が導くメディア新展開

(2)放送とソーシャルメディアの融合・連携の進展


ア ソーシャルメディア利用の拡大とビジネス活用の進展
 ソーシャルメディアの利用者は、スマートフォン等の普及もあいまって、急速に増加しつつある。世界的に展開する最大のSNSサービスを提供しているFacebookの利用者は、既に9億人に達しているといわれている。
 平成23年通信利用動向調査では、スマートフォン、タブレット端末の利用者は、ソーシャルメディア(マイクロブログ、SNS、動画投稿)の利用率がパソコンや携帯電話に比べて高くなる傾向にあることが示されている。身近にいつでもアクセスできるスマートフォン等がさらに普及すれば、ソーシャルメディア利用はさらに広がる可能性を秘めているといえよう。

図表2-3-2-10 ソーシャルメディア利用者数の推移(Facebook、Twitterの例)
図表2-3-2-10 ソーシャルメディア利用者数の推移(Facebook、Twitterの例)のグラフ
各社公表資料により作成

図表2-3-2-11 利用機器別ソーシャルメディア利用率(家庭内外)
図表2-3-2-11 利用機器別ソーシャルメディア利用率(家庭内外)のグラフ
(出典)総務省「平成23年通信利用動向調査」

 このようなソーシャルメディアの普及を背景に、ソーシャルコマースなど、ソーシャルメディアをビジネスに活用する動きが加速しつつある。ソーシャルコマースは、SNS内の商品販売サイトで、口コミにより商品販売促進を図る動きで、平成23年版情報通信白書第1章第3節において「AISCEAS」(Attention(注意を向ける)-Search(検索する)-Comparison(比較する)-Examination(検討する)-Action(行動に移る)-Share(共有する))といわれるような購買プロセスに変化をしていると指摘したが、このような購買行動の流れをSNSにサービスとして組み込んだものといえる。このほかにも、商品のPRイベントをソーシャルメディア上で情報発信しながら進めた事例や、製品開発においてソーシャルメディアを通じて消費者の意見を収集・分析する事例など、ソーシャルメディアの企業利用は大きく広がりつつある。

図表2-3-2-12 ソーシャルコマースサービスの例
図表2-3-2-12 ソーシャルコマースサービスの例の表
(出典)総務省「情報通信産業・サービスの動向・国際比較に関する調査研究」(平成24年)

イ 放送とソーシャルメディアの融合・連携の加速
 ソーシャルメディア利用の動きは、テレビ放送も例外ではない。特に無料広告放送の形態をとり視聴者と直接の契約関係のない地上テレビ放送(民放)等では、放送番組とソーシャルメディアを連動させることにより、視聴者との「つながり」を創り出し、番組の演出としてのソーシャルメディアの活用から、それにより得られた視聴データを活用し、番組企画への反映や広告価値の向上につなげようという試みもみられる状況になっている。先に紹介したスマートテレビについても、新たにプラットフォーム展開を想定している仕組は、いずれもソーシャルメディア連携が機能拡張項目の一つとして掲げられている。このような観点から、放送とソーシャルメディアの融合・連携については、スマートテレビの動向ともあいまってさらに広がるものと考えられる。

図表2-3-2-13 ソーシャルメディア連動型放送の事例
図表2-3-2-13 ソーシャルメディア連動型放送の事例の表
(出典)総務省「情報通信産業・サービスの動向・国際比較に関する調査研究」(平成24年)

●現在の地上デジタル放送受信機をソーシャルテレビとして活用―JoiNTV―
 ここでは、現在の地上デジタル放送対応受信機をいわば「スマートテレビ」として活用して放送とソーシャルメディア連携を実現している例として、JoiNTVを紹介する。
 JoiNTVは、日本テレビ放送網が実施を検討している「放送通信融合型ソーシャル視聴サービス」で、平成24年3月にIT情報番組において実証実験が行われた。同サービスでは、現在既に普及している地上デジタル放送受信機のデータ放送サービスの通信連携機能を用いて、対応アプリケーションを通信回線経由で受信機にダウンロードし、クラウド経由でSNS(Facebook)との連携機能を提供するものである。視聴者は本サービスを利用するために新たに対応受信機を購入する必要はないが、同サービスへ利用登録を行い情報利用について承諾するとともに、通信回線を接続することが必要となる。
 サービス概要としては、①SNS上のコミュニティ参加者(SNS上の友達)が、同じテレビ番組を視聴している場合、テレビ画面上にその参加者の顔写真と名前が表示され、まるで友達と一緒に番組を視聴しているように感じる「ソーシャルテレビ」視聴を実現する(ただし、いずれの参加者も本サービスへの利用登録を行う必要がある。)。②テレビ番組を視聴しながら、テレビリモコンの操作により、番組中の「いいね!」を共有する簡単なコミュニケーションが実現でき、テレビ上、SNS上双方で「いいね!」表示がされ、それらが共有される。③番組のシーンごとの情報などをデータ放送として配信し、視聴者が気になったシーン等でテレビリモコンの操作を行うと、その番組シーンの情報を友人に伝えたりでき、SNSサイトにも反映されるため、情報の自身のメモとしてなどログをSNS上に残すことが可能、という特徴がある。残したメモは、番組視聴後にPCやスマートフォンなどから情報閲覧することもできる。

図表2-3-2-14 JoiNTV 画像イメージ
図表2-3-2-14 JoiNTV 画像イメージの写真
(出典)日本テレビ放送網提供資料

 放送事業者側のメリットとしては、①既に普及している地上デジタル放送受信機をプラットフォームとして、放送・インターネット連動型サービスが提供できるため、新たな受信機購入を求めなくとも放送からインターネットへの誘導が可能であること、②SNSサイトの情報伝搬力を利用し、一人の「いいね!」の共有を他のコミュニティ参加者へ「芋づる式」に伝搬し、情報の広がりが期待でき、視聴者数の増加や、広告効果の拡大が期待できること、③SNSサイトの情報から、放送事業者が直接視聴者情報、属性情報等のデータを入手し、それを活用して放送サービスに新たな付加価値を創出することが可能になり、例えば番組のシーン毎に区切って「いいね!」を押した参加者の数を集計することによる番組企画への反映や、例えば広告にも「いいね!」ボタンを導入することによりスポンサーメリットの増大を図ることができることなどが挙げられる。
 平成24年3月の実証実験では、実際にJoiNTVに参加した人数の約100倍程度の情報拡大がSNS上で確認でき、マスメディアとソーシャルメディアの連携に対する期待は高まっている。
 同サービスでは、今後も対象番組を拡大、SNS連携機能を強化し、携帯端末を連携させる展開も意識し、利用動向を調査しながら実証実験を継続し、番組企画との連動について研究を進める予定としている。
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