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付注
付注

付注10 スマートフォン・タブレット端末の普及に伴う経済波及効果の推計方法


1)調査概要
 スマートフォン・タブレット端末の普及や当該端末上のサービス・アプリケーションの普及が家計消費(最終需要)に与える影響(直接効果)について、「サービス市場」「移動体サービス市場」「端末市場」の3つの市場を対象に、インターネットアンケート調査(※)に基づいて推計した。また、こうした利用拡大等に伴う画面接触時間の上昇等にけん引され、インターネット広告市場の拡大も予想されることから、B2B市場として「広告市場」も推計対象として加えた。
 さらに、これらの直接効果が、産業全体に与える経済波及効果(生産誘発額並びに雇用創出効果)について、情報通信産業連関表を用いた分析より推計した。
※インターネットアンケート調査の詳細は、(「付注7 パソコン・フィーチャーフォン・スマートフォン・タブレット端末間の利用動向比較調査の概要」)を参照されたい。

2)直接効果の推計
 スマートフォン・タブレット端末及び当該端末上のサービスの普及や高度化は、消費者便益を向上し、新たな需要の創出を促すことが期待される。本調査では、これらの新規の需要創出分(年間)を「直接効果」と定義する。直接効果は、以下の4つの市場を推計対象とした。

図表1 直接効果の対象市場
図表1 直接効果の対象市場の表

 各市場に係る直接効果の推計方法は下記のとおりである。

<サービス市場:音楽/映像/電子書籍/健康・医療/教養・教育・娯楽/EC分野>
a. サービス・アプリケーションの定義
 下図表の枠組みに従って、スマートフォン(スマホ)・タブレット端末上で提供される各サービス・アプリケーションを定義し、アンケート調査を通じてそれらの需要を計測した。具体的には、各ユーザー(フィーチャーフォンユーザー、タブレット端末ユーザー、スマートフォンユーザー)に対して、当該サービス・アプリケーションに関する「利用意向」「支出増分意向」「端末の利用意向」の3つの観点について調査した。「支出増分意向」とは、普段の生活において関連分野(後述する家計消費品目と対応)への支出に対する増分を表す指標として定義した(アンケート設問の選択肢= 50%以上増える/40%〜50%未満増える/30%〜40%未満増える/20%〜30%未満増える/10%〜20%未満増える/5%〜10%未満増える/1%〜5%未満増えると思う/変わらない、と設定し、その平均値を算出した)。支出の増分の割合を示す当該指標に基づき、新規の需要創出分を評価するものとした。

図表2 サービス・アプリケーションの定義及びサービス一覧
図表2 サービス・アプリケーションの定義及びサービス一覧の表
表の表

b.推計方法
 上図表に示した各サービス・アプリケーションを対象とした指標の計測結果と、家計消費額を基に、以下の推計式により年間の直接効果を推計し、合計の金額を算出した。


直接効果i= ①スマホ・タブレット上のサービスiの支出増分比率(一人当たり)
     ×②サービスiと対応する家計消費品目の年間支出額
     ×③世帯数
       ※ただし、iは本調査の対象とするサービスを表す
①サービスiについてスマートフォン・タブレット端末で利用したいと回答したユーザー(利用意向者)の割合と、当該サービス・アプリに係る支出増分意向の比率を各端末の人口普及率(総務省「平成23年通信利用動向調査」に基づく)で加重平均化することで、国民一人当たりの支出増分比率を算出した。
②「国民一人当たりの支出増分比率」=「世帯当たり支出増分比率」とみなし、①を世帯平均の家計消費額に乗じた。家計消費支出額は、総務省「平成23年家計消費状況調査」に基づく。
③平成17年国勢調査結果に基づく。


 なお、各サービス・アプリケーションと家計消費の品目との対応は下表のとおりである。
各サービス・アプリケーションと家計消費の品目との対応の表

 アンケート調査から導出された、各端末ユーザーの利用意向率と支出増分意向比率は下表のとおりである。
アンケート調査から導出された、各端末ユーザーの利用意向率と支出増分意向比率の表

<サービス市場:アプリ(マーケット)分野>
 上述したサービス・アプリケーションに加え、アプリ(マーケット)市場について推計した。具体的には、既存のフィーチャーフォンユーザーのうちスマートフォンの利用意向を有するユーザーについて、スマートフォンを一人一台保有するものとして、現スマートフォンユーザーが支払っているアプリ(マーケット)支払額と同水準を支払うものと想定して推計した。


直接効果= ①既存フィーチャーフォンユーザー数(4,028万人)
     ×②スマートフォン利用意向率(63.5%)
     ×③スマートフォンユーザーのアプリ(マーケット)支払額 × 12か月
①フィーチャーフォンの人口普及率(52.1%、総務省「平成23年 通信利用動向調査」より)に人口を乗じて算出
②アンケート調査結果より導出 (スマートフォンについて「是非利用したい」「利用したい」と回答した人の割合)
③184円/月(アンケート調査結果より導出された平均額)


<移動体サービス市場>
 既存のフィーチャーフォンユーザーのうちスマートフォンの利用意向を有するユーザーについて、スマートフォンを一人一台保有するものとして、現スマートフォンユーザーが通信事業者等に支払っているパケット通信支払額と同水準を支払うものと想定して推計した。


直接効果= ①既存フィーチャーフォンユーザー数(4,028万人)
     ×②スマートフォン利用意向率(63.5%)
     ×③スマートフォンユーザーのパケット定額支払額 × 12か月
①、②前述のとおり
③フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行に伴う月間データARPUの変化率(3,900円/月→5,500円/月[約1.4倍]、KDDI公表値)を、アンケート調査結果より導出したフィーチャーフォンユーザーの現在のパケット通信支払額に乗じた。


<広告市場>
 スマートフォンの移行に伴う画面接触率の上昇が、モバイルインターネット広告市場の拡大に寄与するものと想定し、以下の推計式より算出した。


直接効果= ①モバイル広告市場規模(年間)
     ×②端末(画面)接触率の増分
①1,170億円(2011年実績、富士キメラ総研「2012 ブロードバンドビジネス市場調査総覧」より)
②アンケート調査より得られたスマートフォンとフィーチャーフォンの平均画面接触時間(スマートフォン/フィーチャーフォンで、各々74分/34分[屋内]、58分/28分[屋外])の相対比(単純平均で2.1倍)を用いた。


<端末市場>
 スマートフォン又はタブレット端末の利用意向を有するユーザー(現在は未保有)について、それぞれ一人一台保有するものとして、それらの台数の合計に対する端末の売上分を以下の推計式より算出した。なお、端末の買替期間を考慮し、新規需要全体が当該期間中に毎年均等に発生するものと想定した。


直接効果= ①スマートフォン・タブレット端末の新規増分台数
     ÷②端末の買換期間
     ×③各端末の平均単価
①スマートフォン・タブレット端末の利用意向があるユーザーについて一人一台として、両端末の需要を推計した。
 対象人口(6歳以上)×フィーチャーフォン人口普及率(52.1% 総務省「平成23年 通信利用動向調査」)× スマートフォン/タブレット端末利用意向率(スマートフォン:63.5%/タブレット端末:47.7%)=スマートフォン: 4,028万台/タブレット端末 : 3,024万台
②端末の買替期間(3.5年、「主要耐久消費財の買替え状況(平成24年3月)より」)を除すことで、年間の需要分に換算した。
③スマートフォン:4.36万円、タブレット端末:3.97万円(2011年実績、富士キメラ総研「2012 ブロードバンドビジネス市場調査総覧」より)


3)経済波及効果の推計
 2)で推計した直接効果(3兆6,567億円)について、総務省「2010年情報通信産業連関表72部門表(逆行列係数表)」を用いて、下表に定義した対応関係を基に、誘発される生産額の総額(7兆1,778億円)並びに創出される雇用(約33.8万人)を算出した。

表 直接効果の投入先の産業部門
表 直接効果の投入先の産業部門の表

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