総務省トップ > 政策 > 白書 > 24年版 > グローバルな枠組における国際政策の展開
第2部 情報通信の現況と政策動向
第7節 国際戦略の推進

(2)グローバルな枠組における国際政策の展開


ア 国際電気通信連合(ITU)
 電気通信に関する国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)は、
 ① 無線通信部門(ITU-R:ITU Radiocommunication Sector)
 ② 電気通信標準化部門(ITU-T:ITU Telecommunication Standardization Sector)
 ③ 電気通信開発部門(ITU-D:ITU Telecommunication Development Sector)
の3部門から成り、周波数の分配、電気通信技術の標準化及び開発途上国における電気通信分野の開発支援等の活動を行っている。我が国は、各部門へ研究委員会の議長・副議長及び研究課題の責任者を多数輩出し、勧告を提案するなど、積極的に貢献を行っている。
 なお、2012年(平成24年)12月には、国際電気通信規則(ITR:International Telecommunication Regulations)の初めての見直しが予定されている。

(ア)ITU-Rにおける取組
 ITU-Rでは、あらゆる無線通信業務による無線周波数の合理的・効率的・経済的かつ公正な利用を確保するため、周波数の使用に関する研究を行い、無線通信に関する標準を策定するなどの活動を行っている。
 2012年(平成24年)1月に開催された無線通信総会(RA-12:Radiocommunication Assembly 2012)においては、我が国も審議に積極的に貢献してきた、第4世代携帯電話通信方式として期待されているIMT-Advancedの無線通信方式の候補技術として、3.9世代携帯電話で使用されるLTE(Long Term Evolution)を高度化した「LTE-Advanced」及びWiMAXを高度化した「WirelessMAN-Advanced」の2つの方式が国際標準化(勧告化)された。
 2012年(平成24年)1月から2月に開催された世界無線通信会議(WRC-12:World Radiocommunication Conference 2012)においては、我が国としても積極的に対処を行った結果、「海洋漂流物や津波等の観測のための海洋レーダー用」及び「宇宙探査衛星用」などの国際的な周波数分配等が行われた。また、次回2015年(平成27年)に開催が予定されているWRC-15における検討議題として、「第4世代移動通信システムへの追加周波数分配」などが議題化され、国際的な周波数分配について今後検討が行われることから、我が国として今後も積極的に議論へ貢献していく予定である。
 このほか、高速電力線搬送通信(PLT:Power Line Telecommunication)、無線航行衛星業務システム(RNSS:Regional Navigation Satellite System)、スーパーハイビジョンに関する検討等についても、積極的に取り組んでいる。

(イ)ITU-Tにおける取組
 ITU-Tでは、通信ネットワークの技術、運用方法に関する国際標準の策定や、これに必要な技術的な検討を行っている。
 新たな取組分野として、2012年(平成24年)1月の電気通信標準化アドバイザリーグループ(TSAG:Telecommunication Standardization Advisory Group)に、東日本大震災の発生を踏まえ、ICTの観点から災害対策の検討を行う「Focus Group on Disaster Relief Systems, Network Resilience and Recovery」、m2M(Machine to Machine)のサービス展開を促進するための検討を行う「Focus Group on m2M Service layer」等のFG(Focus Group)が設置された。
 さらに、2011年(平成23年)12月に「Focus Group on Smart Grid」及び「Focus Group on Cloud Computing」が活動を完了したことに伴い、TSAGにおいて、それぞれにJCA(Joint Coordination Activity)が設置され、今後は、他標準化団体及び関連研究委員会(SG:Study Group)におけるスマートグリッドやクラウド関連技術の国際標準化について、各JCAにおいて調整していくこととなった。
 このほか、サイバーセキュリティ関連技術、次世代ネットワークの相互接続性確保や新世代ネットワーク関連技術、電子タグやInternet of thingsなどのセンサー技術、デジタルサイネージなどのマルチメディアサービス・アプリケーション関連技術等の国際標準化へ向けて、積極的に検討が進められている。
 我が国は、SG及びFG活動などにおいて、役職者の輩出や寄与文書の提出等、積極的に貢献しており、今後も引き続き、ITU-Tにおける標準化活動に積極的に寄与していく予定である。

(ウ)ITU-Dにおける取組
 ITU-Dでは、開発途上国における電気通信分野の開発支援を行っている。
 2012年(平成24年)3月には、仙台市においてITUとの共催により、東日本大震災や復興の過程で得た情報通信分野の知見や教訓を海外の方々と共有するため、「総務省・ITU災害通信シンポジウム」を開催し、アジア・アフリカ地域など50か国の海外からの参加者を含めて約150人の参加があった。また、これと前後する形で、仙台及び東京において、ITU-D第2研究委員会(SG2)の「災害通信」、「ルーラル・遠隔地域の通信」、「ブロードバンド通信」及び「地上デジタル放送への移行」に関する会合を招致するなど、開発途上国の電気通信の開発の促進及び向上に貢献を行っている。

(エ)国際電気通信規則(ITR)の見直し
 国際電気通信規則(ITR:International Telecommunication Regulations)は、ITU憲章及び条約を補完する業務規則であり、国際電気通信業務の提供、運用、料金決済等について取り決めている。2012年(平成24年)12月にドバイ(アラブ首長国連邦)において開催される世界国際電気通信会議(WCIT-12:World Congress on Information Technology 2012)で、1988年(昭和63年)の制定以来、初めての見直しが予定されており、セキュリティや迷惑メールといった新しい課題についての取り決めを追加すべきか等の議論に我が国も積極的に参加している(第2章第1節参照)。

イ 国際連合
 国際連合においては、主として国連総会第一委員会、国連総会第二委員会、経済社会理事会及び人権理事会の場において、インターネットを巡る議論が行われている。

(ア)国連総会第一委員会
 軍縮と国際安全保障を扱っている国連総会第一委員会においては、2010年(平成22年)12月、国家のICT利用に関する規範等について議論すべきことや2012(平成24年)から2013年(平成25年)に「国際安全保障分野における情報及び電気通信分野の進歩」に関する政府専門家会合(GGE:Group of Governmental Experts)を開催することなどが決議された。これを受け、2011年(平成23年)9月に、中国、ロシア、タジキスタン及びウズベキスタンの4か国から「情報セキュリティに関する国際行動規範」案が提案され、さらに、2011年(平成23年)12月の決議では、GGEにおいて規範等について議論されることが明確化されたことから、GGEにおいて同案を含め、サイバー空間におけるルールづくり等について議論される見込みである。

(イ)国連総会第二委員会・経済社会理事会(ECOSOC)
 経済と金融を扱っている国連総会第二委員会においては、開発とICTについての議論が行われている。また、2003年(平成15年)にジュネーブで、また、2005年(平成17年)にチュニスで開催された世界情報社会サミット(WSIS:World Summit on the Information Society)のフォローアップが、経済社会理事会(ECOSOC:Economic and Social Council)に設置されている「開発のための科学技術委員会」(CSTD:Commission on Science and Technology for Development)を中心に行われ、ECOSOCを経て国連総会第二委員会においても議論されている。WSISに関する主要な課題の一つであるインターネット・ガバナンスについては、WSISチュニス会合における成果文書で示されているインターネット政策に関する「協力強化」(enhanced cooperation)の一環として、2011年(平成23年)10月にインドから「インターネット政策委員会」を国連総会に設置することが提唱されたが、実現には至らず、2012年(平成24年)5月に協力強化に関する関係者の意見を集約するため、オープンコンサルテーション会合が開催された。また、その結果を踏まえて同月のCSTD定例会合において協力強化の在り方に関する議論が行われ、ECOSOCに提出される決議案が採択された。

(ウ)人権理事会
 人権理事会においては、インターネット上の表現の自由について議論されている。2011年(平成23年)5月には「意見表明及び表現の自由の権利の促進と保護に関する報告書」が議論された。また、2012年(平成24年)2月の人権理事会においては、インターネット上の言論と表現の自由に関するパネルが開催された。

(エ)インターネットガバナンスフォーラム等
 インターネットガバナンスフォーラム(IGF:Internet Governance Forum)は、2005年(平成17年)のWSISチュニス会合における成果文書に基づき国際連合が事務局を設置した、インターネットに関する国際的な政策課題について議論するフォーラムである。
 2011年(平成23年)9月には、ナイロビ(ケニア)において第6回会合が開催され、インターネットに関する様々な公共政策課題について議論が行われた。同会合に併せて、高級閣僚フォーラムが開催され、世界各国の閣僚等により、モバイルインターネットやサイバーセキュリティ等の課題について議論が行われた。
 また、アジア地域においては、インターネットコミュニティが中心となり、インターネットに関して自由な議論を行うアジア太平洋地域IGFが2010年(平成22年)に設立され、2011年(平成23年)6月、シンガポールにおいて第2回会合が開催された。2012年(平成24年)7月には、東京において第3回会合が開催される予定である。
 さらに、日本においても、インターネットに係る様々な問題や課題について広く議論することを目的としたIGF Japanが2011年(平成23年)に設立された。同年7月に、京都において第1回全体会議が開催され、この結果はIGF第6回会合に報告された。
 我が国は、政府、企業、市民社会などのマルチステークホルダーによる「対話の場」であるIGF等の役割を支持するとともに、積極的に会議へ参加している。

ウ 世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンド交渉
 2001年(平成13年)11月から開始された世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)ドーハ・ラウンド交渉では、サービス貿易分野において最も重要な分野の一つとされている電気通信分野について、電気通信市場の一層の自由化に向けた積極的な交渉が展開されている。我が国は、WTO加盟国の中で最も電気通信分野の自由化が進展している国の一つであることから、諸外国における外資規制等の措置について、撤廃・緩和の要求を行っている。同ラウンド交渉は、2006年(平成18年)夏や2008年(平成20年)夏、各国の意見対立により中断、再開を繰り返している。2011年(平成23年)12月に開催された第8回WTO閣僚会議においては、ドーハ・ラウンド交渉については、交渉が膠着状態に陥り、当面、一括妥結の見込みは少ないことを認めつつも、目標としての一括妥結は断念しないこと及び部分合意、先行合意等の「新たなアプローチ」を探求することが合意された。ただし、その具体的交渉目標の設定については、新興国・途上国の反対もあり、合意に至らなかった。
テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る