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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第4節 ICTイノベーションによる「課題解決力」の実証

(2)諸外国における国民ID制度を活用した事例


 諸外国においても、国民ID制度を導入した事例が見られる。各国の制度はそれぞれの国の歴史・文化等に根ざしているために、単純に比較することはできないが、一方で活用の可能性という観点から参考になるものと考えられる。特に、行政の電子化が進展し、成功を収めている韓国及び北欧においては、国民IDが電子政府の重要なインフラとされるとともに、そのほか公的サービスなどでも広く活用され、住民の利便性向上等にも幅広く活用されている。そこでここでは、韓国及びデンマークにおける国民ID制度の活用事例について紹介する。

ア 住民登録番号制度(韓国)
 韓国においては、朝鮮戦争後、韓国住民であることを証明するために、1968年(昭和43年)、住民登録番号制度が施行された。当初は、当初本人確認(証明)のための制度であったが、情報化時代を迎えて、1991年(平成3年)以降、住民登録番号制度を行政サービス提供の基盤として活用するため、住民登録法の改正が行われてきた。特に、1997年(平成9年)の経済危機以降、韓国政府が、政府の効率化と産業育成を目指し、世界最先端の電子政府・ICT社会の構築に向け取り組む中、住民登録番号制度は官民の電子サービスにおける個人証明の社会インフラに変貌した。
 現在、韓国においては、住民登録番号は、行政サービスのあらゆる分野に使われている。また、住民登録証以外に、パスポート、運転免許証、健康保険証、公務員証など政府と公共団体が発行するほとんどの証明証に住民登録番号が記載され、本人確認の用途で使われてきた19
 最近では、韓国では、放送通信委員会が無料Wi-Fi の増強に力を入れており、既にSK テレコム、KT、LG U+の大手3社を中心に全国で16 万か所で利用できるようになっている。大手3社は、自社ユーザー以外がアクセスしてきた場合にも、住民登録番号を要求20して本人確認を行っている(図表1-4-9-2)。

図表1-4-9-2 韓国の携帯3社が提供する無料Wi-Fiの実名認証画面
図表1-4-9-2 韓国の携帯3社が提供する無料Wi-Fiの実名認証画面の写真
(出典)総務省「諸外国における国民IDの現状等に関する調査研究」(平成24年)

 一方で、住民登録番号が盗まれた場合、なりすましの危険性が高いことから、住民登録番号の代わりに、I-PIN(Internet Personal Identification Number)と呼ばれる新たな番号を個人証明に使用できるようにするなど、政府において対策がとられてきた。しかしながら、住民登録番号が無断に収集・提供されたり、ハッキングにより流出したりするトラブルが多発したことを受けて、韓国政府では、個人情報保護を強化するため、住民登録番号の収集・利用・管理に対する制限を課すようになってきている。例えば、2012年(平成24年)1月、放送通信委員会は、2014年度(平成26年度)までにネット上での営利目的の住民登録番号の利用を禁止する計画を段階的に進めるとの方針を発表した。また、2012年(平成24年)4月には、放送通信委員会、行政安全部及び金融委員会が合同で「住民番号収集・利用最小化総合対策」を発表し、同対策により、今後、公共機関や民間企業等で住民登録番号を収集・利用することが原則的に禁止され、住民登録番号データベースの安全な管理等が義務付けられることとなった。

イ 国民IDを電子政府ポータルのみでなく、病院や銀行、さらには電話の契約など民間サービスにも利活用(デンマーク)
 デンマークでは、CPR(Central Persons Registration)番号と呼ばれる個人識別番号が広く用いられている。現在、デンマーク市民がポータルにアクセスして自分の情報の確認や各種申請手続を行う際には、この国民IDと、ワンタイム・パスワード入力によるデジタル署名「NEM-ID」を使用して個人認証を行う。この仕組は電子政府ポータルを利用する時だけではなく、病院や銀行、さらには電話の契約など民間サービスにも使われている。デンマークに3か月以上居住するすべての市民は、国籍がデンマークであるかどうかにかかわらず、CPR番号を取得してから行政サービスを受けることになる。
 デンマークは、社会保障として医療・教育・福祉が提供されており、関連の組織・団体で、CPRが多用されている。たとえば,公共図書館の本の貸し出し、教育(大学の入学手続、試験の際の本人認証)、免許取得時などである。
 CPRがもっとも活用されているのが電子政府サービスである。個人識別番号とデジタル署名という個人認証インフラを利用して、使いやすいポータルサイトを構築している。代表的なポータルサイトには、市民ポータル「Borger.dk」、企業ポータル「Virk.dk」、税金ポータル「Skat.dk」、医療・健康ポータル「Sundhed.dk」、教育ポータル「EMU.DK」がある(図表1-4-9-3)。

図表1-4-9-3 デンマークの国民IDを活用した代表的ポータル
図表1-4-9-3 デンマークの国民IDを活用した代表的ポータルの表
総務省「諸外国における国民IDの現状等に関する調査研究」(平成24年)により作成


コラム インドにおける国民ID(生体情報も活用して個人認証。貧困などの社会問題に関して番号導入で解決を目指す)

 インドでは、2009年(平成21年)1月に、固有識別番号庁「UIDAI(Unique Identification Authority of India)」が設立され、Aadhaar21と呼ばれる国民ID番号(UID(Unique Identification) numbers)の導入が進められている。Aadhaarは、12桁の固有番号で、全国民を対象に発行(番号申請は任意)され、各個人の氏名、生年月日、性別、住所のほか、顔写真、十本の指の指紋、虹彩といった生体情報が中央のデータベースに集められる(図表)。

図表 虹彩の採取の模様
図表 虹彩の採取の模様の写真
(出典)インド固有識別番号庁ウェブサイト

 同番号のメリットとしては、社会保障がしかるべき人々に行き渡り、多くの貧困層が銀行取引などのサービスを利用できるようになることなどがあげられている。背景として、インド政府は、貧困層を対象とした助成プログラムに多額の資金を投入しているが、現在使用されている配給カードは、紙製のため、比較的簡単に偽造や改ざんが可能という課題があり、上記助成金が「ゴースト(実在しない人物)」にも支給されてしまっているとの事情があるという。また、インドの過疎地域居住者のうち、約40%が銀行口座を開設していない22が、その背景の一つが、貧困層の多くが身元や住所を証明する書類を持っていないことにあり、同番号の導入は、金融業界にとっても事業拡大の可能性があるという。
 2012年(平成24年)3月時点で既に約1.5億人に対して発行がされており、5年間で6億人23に固有ID番号を発行することを予定している。



19 国家人権委員会「住民登録番号の使用状況実態調査」(2006年)(http://library.humanrights.go.kr/hermes/imgview/06_07.pdf) によれば、民間の様式で住民登録番号を要求している割合は、平均で48.2%にも及ぶ。
20 2007年(平成19年)に導入された「インターネット実名制」規制により、一定規模以上の掲示板サイトへの書き込みをするためには当該サイトにログインする必要があり、ログインするためには実名を入力し、それが間違いないことを証明するために住民登録番号の入力も求められるものである。
21 ヒンズー語で「基盤」を意味する語
22 インド固有識別番号庁 “UIDAI STRATEGY OVERVIEW CREATING A UNIQUE IDENTITY NUMBER FOR EVERY RESIDENT IN INDIA “(April, 2010) (http://uidai.gov.in/UID_PDF/Front_Page_Articles/Documents/Strategy_Overveiw-001.pdf
23 インド固有識別番号庁ウェブサイト(http://uidai.gov.in/about-uidai.html
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