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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第3節 ICT国際展開がけん引する成長のポテンシャル

トピック 韓国におけるICT分野での国家戦略的取組事例


 第1節でも記載したとおり、ICT分野ではソフト・ハード一体で戦略的取組を展開し、ICTを国家の主要産業として成長させている国が多い。ここでは、取組を進めている国のうち、各種ICT国際指標でも、国際連合電子政府発展指数(2012年(平成24年))や、ITU開発指数(2010年(平成22年))で1位をとるなど高く評価され、ICT分野での国家戦略的取組が注目される韓国について、電子政府、スマートフォン及びHTML523を巡る取組を取り上げる。

1 韓国のICT国際展開戦略〜電子政府〜

ア ICT地方展開のためのモデル的取組 「情報化村」
 韓国では、ICTの地方展開のためのモデル的取組として「情報化村」事業が進められている(図表1)。具体的には、2001年(平成13年)から行政自治部(現在の行政安全部)を中心に、都市と農村の情報格差を解消し、地域の住民生活の情報化及び地域経済の活性化を実現する目的で実施されている国家プロジェクトである。2010年(平成22年)末現在、韓国全土で363の情報化村が存在している。世帯数規模が30〜100の情報化から疎外された農・山・漁村を「情報化村」として選定し、当該地域に約3億ウォン(約2,000万円)の支援金を投入することにより、地域に超高速インターネット環境を導入するとともに、地域特産物の電子商取引等の地域情報コンテンツ(ウェブサイト)を構築している。2009年(平成21年)からは、国からの支援金の代わりに、自治体(道レベル)から約2億ウォン(約1,400万円)が支給されることとなり、自治体中心の運営が進展している。

図表1 韓国「情報化村」の特徴
図表1 韓国「情報化村」の特徴の表

 「情報化村」は、2011年(平成23年)国際連合公共サービス賞(PSA:Public Service Awards)24でアジア太平洋地区における「政策策定過程への参加を促す革新的メカニズム」部門第1位を受賞している。

イ 電子政府の進展
 韓国では、政府申請ポータルサイト「民願24」を設置し、4,000件以上についてガイド情報を提供、うち約3,000件についてはオンライン申請が可能、約1,200件については電子発給が可能となっている。また、申請者の提出書類を削減し行政機関への訪問を最小限にするため、行政機関間の政府情報共有を継続して推進しており、住民登録謄本、建築物台帳、事業者登録証明書など発行頻度の高い92種の行政情報について、関係機関が共有して業務を処理している。こうした書類削減により、2010年(平成22年)時点で推定2,392億ウォン(約160億円)の社会費用を節減したとのことである。また、電子政府の国民の認知率は2010年(平成22年)現在で9割を超えている。
 なお、「民願24」は、2011年(平成23年)国際連合公共サービス賞で、アジア太平洋地区における「公共サービス実施の向上」部門第2位を受賞している。

ウ 電子政府事業の国際展開に向けた取組
 韓国においては、ICTの国際展開に向け、官民が連携した戦略的取組が進められている。ここでは、特徴的な事例である電子政府の輸出に向けた取組について紹介をする。
 電子政府輸出に向け、韓国内での推進体制を構築し、他国に向けて積極的な活動を展開している。また、前述したような国際機関での受賞実績や国連電子政府準備度指数ランキングなどを韓国ブランド向上に積極的に活用しているといわれている。

(ア) 韓国内での推進体制
 韓国では、官民協力体制づくりを目指した実務会議として、電子政府輸出支援実務協議会を設置するなど電子政府事業の国際展開に向け推進体制を構築している。また、2012年(平成24年)の電子政府の輸出目標を3億ドルと定め、「電子政府輸出3億ドル達成戦略」を策定し推進している25

(イ) 他国に対しての活動内容
 他国に対して、政府間の協力了解覚書(MOU)の締結を中心に推進している。対象はアフリカ、中東、アジア、中南米、欧州など全世界にわたる。また、韓国のブランド価値向上に向けた取組として、国際IT協力センターをメキシコ、チリ、トルコ、南アフリカに開設するとともに、現地IT専門家の招待研修を実施(1998年(平成10年)〜2009年(平成21年)で114か国から2,790人を招待)し、韓国に対する意識向上を図っている。さらに、22の戦略的対象国に情報アクセスセンターを設置している。

 このような取組の結果、行政安全部によれば、2011年(平成23年)の電子政府の海外輸出は2億3,566万ドル(約190億円)で、前年比58%増となっており、2002年(平成14年)と比べて2,300倍に増大し、電子政府輸出の推進体制を本格的に整備した2008年(平成20年)と比べても8.6倍と大幅に増加したとしている(図表2)。

図表2 韓国・電子政府の輸出実績
図表2 韓国・電子政府の輸出実績のグラフ
 このように、韓国においては、国内の公的分野におけるICTの利活用、国内ICT産業育成とICT国際展開戦略を有機的に連携した取組を行い、成功している点が特徴といえる。

2 韓国におけるICT国際展開戦略〜スマートフォン・LTE〜

ア スマートフォンへの対応の遅れからの迅速な立ち直り
 韓国においては、当初スマートフォンへの対応は必ずしも早いとは見られていなかった。代表的なスマートフォンであるiPhoneが米国で発売されたのが2007年(平成19年)であるが、韓国におけるスマートフォンの普及は、2009年(平成21年)12月時点でも81万台程度にとどまっており、スマートフォンの世界シェアにおける韓国企業のシェアも低かった(図表3)。しかしながら、KTの2009年(平成21年)末のiPhone導入が”iPhoneショック”といわれたように、世界的なスマートフォンの急激な伸長は韓国ICT産業に大きな影響を与え26、「放送通信委員会2011年度(平成23年度)政策方針」にて「スマートフォンによる新たな変化への対応の遅れ」を指摘するなど、韓国政府内にも危機感が見られた。

図表3 スマートフォンの世界シェア推移
図表3 スマートフォンの世界シェア推移のグラフ
米ガートナー資料により作成
(出典)総務省「情報通信産業・サービスの動向・国際比較に関する調査研究」(平成24年)(Strategy Analytics社資料により作成)

 このような背景もあり、韓国政府は、放送通信委員会が2010年(平成22年)に「無線インターネット活性化総合計画」を策定するなど、スマートフォン戦略を推進した。同計画においては、スマートフォンを中心としたモバイル産業・サービスを活性化するために5年で1.5兆ウォン(約1,000億円)投資する計画とともに、設備競争を促進し、世界のモバイル先進国トップ3入りを目指すことやスマートフォン・アプリの開発支援に取り組むこと等が掲げられた。
 官民を挙げた取組もあり、国内の携帯電話利用者のスマートフォンへの移行が進むとともに、世界市場における韓国企業のスマートフォンのシェアは拡大している。知識経済部では、スマートフォンの世界市場シェアの向上要因として、国内企業の多様な製品ラインナップ、迅速な製品の対応力、モバイルAPなど主要基幹部品の供給能力などをあげている27

イ 「次世代モバイル主導権確保戦略」による世界に先駆けた4Gの商用化を目指した戦略的取組
 このような成功を踏まえ、韓国においては2011年(平成23年)以降、世界に先駆けた「4G」の商用化を目指した取組が進められている。放送通信委員会等により「次世代モバイル主導権確保戦略」として2011年(平成23年)1月に公表された戦略では、ライバル諸国より早期に4G技術を商用化することにより新市場を先占し、モバイル産業の「First Mover」となることを目指すとともに、2015年(平成27年)にモバイル世界最強国を実現し、2015年(平成27年)〜2021年(平成33年)までに設備売上363兆ウォン(約25兆円)、24万人の雇用創出効果を創出することを目指している。
 LTEの世界市場の動向をみると、2011年(平成23年)第4四半期の世界におけるLTEスマートフォン市場では韓国3社が実に約7割のシェアを占めている(図表4)。また、韓国内の通信事業者についてみると、大手3社は急速にLTE化を進めており、2011年(平成23年)7月にSKテレコム及びLG U+が、2012年(平成24年)1月にKTがサービスを開始している。さらに、2012年(平成24年)3月〜4月にかけて各社LTEの全国サービス化を開始している。
 このように、ネットワークインフラと端末を車の両輪のようにしてLTE化を進め、また、国内普及と世界進出を同時に図る戦略がうかがえる。

図表4 2011年(平成23年)第4四半期のLTEスマートフォンの世界シェア
図表4 2011年(平成23年)第4四半期のLTEスマートフォンの世界シェアのグラフ

3 韓国におけるICT国際展開戦略〜HTML5〜

 韓国放送通信委員会は、2012年(平成24年)1月にHTML5に係る専門家会合を発足、HTML5に係る普及推進戦略の方策検討を開始し、HTML5早期普及のための多角的な支援を実施する方針を打ち出している。放送通信委員会はまた、同年2月に、HTML5を特定の端末に依存しない次世代のウェブプラットフォーム環境として活用しつつ、将来のICT産業の世界的な主導権を確保し、新産業創出を進めるため、「3大IT新成長融合エコシステム構築計画」を発表した。同計画では、携帯電話(モバイル)で開始された「スマート革命」が家庭(ホーム)、屋外(アウトドア)にも広がってきていることから、モバイル分野(モバイル・クラウド)、ホーム分野(スマートテレビ)、アウトドア分野(デジタルサイネージ(Tele-Screen))全体を網羅するエコシステム(生態系)を形成する必要性を指摘し、各分野での開発や実証事業のために、2015年(平成27年)までの4年間に1,039億ウォン(約70億円)を投じるとしている。具体的には、HTML5の積極活用や、スマートテレビ用共通アプリストア構築、業界間の協力体系確立などを進めるとしている。
 放送通信委員会は同計画の意義について、①特定のOSに縛られないコンテンツ開発活性化、②業界間の協力・共存発展のための環境整備、③新たなコンテンツ需要拡充を通じた個人起業促進への寄与、の3点を挙げている。具体的には、特定の端末の依存関係から脱却し、「ワンソース・マルチユース」なアプリなどのコンテンツ制作を可能にするとともに、モバイルから始まったスマートフォンの市場構造が特定のOSの優位性を持った企業が携帯電話・アプリなどの市場を閉鎖的に独占する構造であるとし、「独自生存、勝者総取りではなく、協力・共存発展するエコシステムづくり」を目指し、コンテンツ・プラットフォーム・ネットワーク・端末の各市場参加者が分野別の競争力を土台として、協力、共存発展できる環境を作っていくとしている。
 このように、韓国においては、HTML5を活用しつつ、分野横断的にハードウェア、サービス、コンテンツを連携させつつICT産業の強化を図るための取組が進められている。
 なお、スマートテレビについては、同年5月に、「HTML5ベースのTVプラットフォーム標準化推進計画」を策定し、HTMLベースのオープンTVプラットフォームの標準開発、実証モデルの開発等や国内標準化結果を踏まえたW3Cでの国際標準化主導等の計画を公表するとともに、標準化戦略を推進している。さらに、国内スマートテレビ産業のグローバル戦略強化のため、放送通信委員会、TVメーカー、ケーブルテレビ事業者、IPTV事業者等官民13機関が連携して、TVアプリ開発者支援を行う「TVアプリ・イノベーションセンター」の構築に向けて協力することも公表しているところである28


22 パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合:政府全体としてアジアを中心とする旺盛なインフラ需要に対応して、インフラ分野の民間企業の取組を支援し、国家横断的かつ政治主導で機動的な判断を行うため開催されている会合。2012年(平成24年)4月までに分野別、国別テーマにより14回の会合が開催。
23 第2章第2節2コラム「HTML5について」を参照。
24 国連総会決議に基づき、国連経済社会理事会が2003年に設立した公共サービスに関する国際表彰で、各国の公共サービス団体による創造的な成果や貢献を受賞要件としており、毎年度開催されている。
25 (出典)行政安全部報道発表資料(2012年(平成24年)2月7日)(http://www.mopas.go.kr/gpms/ns/mogaha/user/userlayout/bulletin/userBtView.action?userBtBean.bbsSeq=1021775&userBtBean.ctxCd=1012&userBtBean.ctxType=21010002¤tPage=261)(韓国語)
26 知識経済部の報道発表資料にも「iPhoneショック」という表現がみられる。
27 (出典)知識経済部報道発表資料「2011年IT輸出、2年連続で過去最高の実績を記録」(2012年(平成24年)1月5日)
http://www.mke.go.kr/news/coverage/bodoView.jsp?seq=71571&pageNo=22&srchType=1&srchWord=&pCtx=1)(韓国語)
28 放送通信委員会報道発表「放通委、カカオトークのようなグローバルTVアプリの始動を育成」(2012年5月17日) (http://www.kcc.go.kr/user.do?mode=view&page=P05030000&dc=K05030000&boardId=1042&cp=4&boardSeq=33788
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