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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第3節 ICT国際展開がけん引する成長のポテンシャル

(2)世界的なインフラ市場拡大の取込み


ア 無線通信インフラ

A 無線通信インフラ機器の世界市場
 新興国・開発途上国では、携帯電話を中心とした無線通信インフラ整備が急速に進んでいる。無線通信インフラ機器の世界市場は、2011年(平成23年)には425億ドル(約3.4兆円)となっている(図表1-3-4-2)。その市場内訳をみると、北米や西欧だけでなく、アジア・太平洋や中東・アフリカ市場などの新興国・開発途上国の通信インフラ市場も既に大きな市場となっている。これら市場の成長を取り込むべく、欧米の企業だけでなく中国企業が積極的に海外展開を図っている。例えば、無線通信インフラ大手のHuawei社(中国)は、近年、その売上高を伸ばしているが、その売上の中心は、アジア・太平洋や中東・アフリカといった新興国・開発途上国市場となっている。

図表1-3-4-2 無線通信インフラ機器の世界市場規模とシェア
図表1-3-4-2 無線通信インフラ機器の世界市場規模とシェアのグラフ
ガートナー資料により作成

B アウトソーシングの一括請負
 海外インフラ市場では、単なる製品売りではなく、オペレータのスタートアップ支援や運用コスト・負荷の軽減等を図るため、サービス開始までの全プロセスやシステム運用のアウトソーシングを一括請負する契約方式が増加している。特に、インフラの整備・運用に人的リソースを担保できない国ではニーズが高く、システムを提供する事業者にとってもビジネス規模を拡大できるほか、運用までのサプライチェーンを対象とすることで長期的な収益を確保することが可能と、双方にメリットがあり、海外ベンダーを中心に取組が増加している(図表1-3-4-3及び図表1-3-4-4)。

図表1-3-4-3 フル・ターンキー契約の事例(無線通信分野)
図表1-3-4-3 フル・ターンキー契約の事例(無線通信分野)の表
(出典)総務省「情報通信産業・サービスの動向・国際比較に関する調査研究」(平成24年)

図表1-3-4-4 マネージド・サービス契約の事例(無線通信分野)
図表1-3-4-4 マネージド・サービス契約の事例(無線通信分野)の表
(出典)総務省「情報通信産業・サービスの動向・国際比較に関する調査研究」(平成24年)

 アウトソーシングの一括請負には、「フル・ターンキー契約」と「マネージド・サービス契約」の2種類がある。このうち、フル・ターンキー契約は、サービス提供開始までの全プロセス(システム設計、設備構築、試験運用等)を一括請負する契約方式であり、ベンダーにとって自らのセールスポイントを中心にプロジェクトの座組を行うことが可能となるなどのメリットがある。また、マネージド・サービス契約は、サーバーやネットワーク機器等の管理・運営に限定してベンダーが請け負うものであり、オペレータはそれらをアウトソーシングすることで、運用コストや運用負荷の軽減が可能となる。それぞれの主な事例は以下のとおりである。

C ケニア・マサイ族居住地におけるHuaweiの自然エネルギー基地局の事例
 ケニアにおいては、過疎地における電気普及率はわずか30%であり、ケニアの携帯電話事業者Safaricomの基地局の約25%はもっぱらディーゼル発電に頼っている。また、電力の供給がある地域においても、不安定な電力供給のため、頻繁な停電を受け、影響を受ける基地局では、電力供給時間の大半をディーゼル発電に余儀なくされている。このため、
Safaricomは以前、基地局のため1,500基のディーゼル発電を使用していた。これにより、ディーゼルエンジンを動かすためだけでなく、ディーゼル燃料供給のための物流過程で、多額のコストを要するとともに、燃料盗難等が多数発生し、経営上の課題となっていた。
 そこで、HuaweiはSafaricom向けに、風力、ソーラー発電及びディーゼル発電を併用した基地局を開発し、アフリカ・ケニアの首都ナイロビから50キロメートル離れたマサイ族居住区において利用をしている。同居住区は電力網が整備されておらず、従前のディーゼル発電機での運転では、燃料コストや設備メンテナンス費用が膨大で維持が困難な規模であったという。
 風力、ソーラー発電という2つの自然エネルギー源の併用は、電力を昼と夜、雨期と乾季の両方で補完的に電源供給をすることを可能とし、さらに、ディーゼル発電も併用することで、柔軟性、安定性のある電力供給が可能となった。これにより、基地局の初期コスト自体は従来の基地局に比べて高額なものの、輸送費を含めた燃料費用や設備メンテナンス費用は90%以上削減された。
 このように、Huaweiは、単純にインフラを安価に提供するのみでなく、現地の実情に応じ、柔軟かつ安価な問題解決策を提示することで、開発途上国の無線通信インフラ市場を取り込みつつ急速な成長を遂げている。

イ スマートインフラ(ICTを組み込んだ社会インフラ)整備
 先進国及び新興国・開発途上国では、スマートシティ/スマートコミュニティをキーワードに、ICTを組み込んだ社会インフラ(電力、ガス、水道、鉄道等)の整備が進められており、世界各国が官民一体となってICTを組み込んだパッケージでの社会インフラ輸出に取り組んでいる。社会インフラに組み込まれたICT関連の世界市場規模は2020年(平成32年)に約1.3兆円になると予測されており、特にアジア太平洋市場の成長が期待されている(図表1-3-4-5)。当該分野は、ICT市場の新たな潜在性を示すものであり、多様な事業者が参入してきている。

図表1-3-4-5 スマートインフラ投資(ユーティリティ、交通、ビル、電子政府分野)に関するICT関連世界市場
図表1-3-4-5 スマートインフラ投資(ユーティリティ、交通、ビル、電子政府分野)に関するICT関連世界市場のグラフ
(出典)総務省「情報通信産業・サービスの動向・国際比較に関する調査研究」(平成24年)
(Pike Research社 「Smart Cities 2011」により作成)

 例えば、2012年(平成24年)2月に富士通、富士電機、メタウォーターが連携して、サウジアラビア工業用地公団(MODON)と工業団地におけるスマートコミュニティ事業の推進に基本合意している。我が国企業のICTと環境・省エネ技術を組み合わせて、同団地の環境情報を一元管理できる集中管理の仕組や常時環境監視システムの設計と導入に着手するという。


21 携帯電話網の基地局等のアクセスポイントと交換局等が収容されている基幹回線を結ぶための専用回線。
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