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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第5節 地域成長力をけん引するICT

(2)ICT基盤整備による企業誘致・産業集積促進


ア 企業誘致におけるICTインフラ整備についての自治体の評価
 ICT基盤整備は企業立地や産業誘致にどのような影響を及ぼしているだろうか。まず、企業誘致に取り組む自治体のうち、誘致地区でのICTの整備水準についての把握状況を尋ねたところ、約6割の自治体がICTの整備水準を把握している(図表1-5-2-8)。「把握している」自治体に整備水準への評価をたずねると、58.8%の自治体が自らの地区のICTの整備水準を肯定的に評価しているが、全く十分ではないとした意見も13.2%存在した(図表1-5-2-9)。

図表1-5-2-8 ICT整備水準の把握の有無
図表1-5-2-8 ICT整備水準の把握の有無のグラフ
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状及び経済効果に関する調査研究」(平成24年)

図表1-5-2-9 ICT整備水準への評価
図表1-5-2-9 ICT整備水準への評価のグラフ
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状及び経済効果に関する調査研究」(平成24年)

 行政区域内に進出した企業から、ICTインフラ環境について拡充の要望を聞くことがある自治体は、誘致に取り組む自治体の25.1%であり、その具体内容は「ギガビット回線の整備」(52.4%)、「超高速無線通信の整備」(32.0%)と超高速ブロードバンド整備に係るものが多い(図表1-5-2-10及び図表1-5-2-11)。情報通信産業にとどまらず、幅広い産業分野においてICT利活用が進む中で、企業誘致においてもブロードバンド・ネットワークの整備が必要条件となりつつあることがうかがえる。

図表1-5-2-10 進出企業からICTインフラ環境の要望を聞いた経験
図表1-5-2-10 進出企業からICTインフラ環境の要望を聞いた経験のグラフ
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状及び経済効果に関する調査研究」(平成24年)

図表1-5-2-11 要望の具体内容
図表1-5-2-11 要望の具体内容のグラフ
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状及び経済効果に関する調査研究」(平成24年)

イ 企業誘致における高速インターネット対応のPR(千葉県など)
 企業誘致を行う自治体等でも、高速インターネットへの対応を積極的にPRしている例もある。例えば、千葉県では、企業立地の紹介サイトにおいて、電力や工業用水と同様に、高速インターネット対応についても、その対応状況を公表し、企業のニーズに対応した工業団地・産業用地等の提供に努めている(図表1-5-2-12)。

図表1-5-2-12 千葉県企業立地情報サイトにおける高速インターネット対応のPR
図表1-5-2-12 千葉県企業立地情報サイトにおける高速インターネット対応のPRの図
(出典)千葉県庁ウェブサイト【企業立地NAVI→千葉】
http://chiba-rich.jp/infrastructure.html

ウ 全国屈指のブロードバンド環境を活用した集落再生への取組 (徳島県)
 徳島県では、地上デジタル放送開始に伴いケーブルテレビ網を整備し、光ファイバの高速通信網を県内全域に整備した。これに加え、情報通信関連産業に対する優遇制度等も設けることにより、県内でコールセンターやデータセンターの立地が相次ぐなど、その成果を挙げている。具体的には、県が優遇制度を創設した平成14年以降、制度を活用した立地は9社(県外企業は7社)・計12か所(徳島市内11か所、三好市内1か所)に上り、約920人の雇用を創出している。ただし、同様に情報通信関連産業による振興に取り組んでいる沖縄県や北海道と比べると、拠点数が多いとは言えず、更なる誘致に向けた人材育成等が課題となっている。
 このような中、県内でも過疎と高齢化が進む神山町や美波町などの地方部において、全国屈指の高速ブロードバンド環境を活かし、ICT企業のサテライトオフィスの誘致が進んでいる(図表1-5-2-13)。

図表1-5-2-13 全国屈指のブロードバンド環境を活かし、新しい集落再生モデルの構築を目指す
図表1-5-2-13 全国屈指のブロードバンド環境を活かし、新しい集落再生モデルの構築を目指すの図
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状及び経済効果に関する調査研究」(平成24年)

 徳島市から西に車で40分ほどの山間の町である神山町では、東京都内のICTサービス会社6社が古民家の空き室にサテライトオフィスを開設しており、今後も数社が設置を検討している。神山町は過疎化が進み、風情のある古民家が空き家となっており、ブロードバンド環境に恵まれているうえ、一戸当たりの賃借料は数万円程度と格安であった。また、ICTサービス会社の社員は長時間パソコンに向かうため、精神・健康面のケアが不可欠であり、仕事を離れれば直ちに豊かな自然の中に身を置ける環境が高く評価された。各社のサテライトオフィス開設に際しては、古民家を活用した地域活性化などに取り組む神山町のNPO法人が物件の選定や所有者との交渉、改築する場合の業者の紹介などを支援した。
 また、徳島市から南に車で60分ほどのウミガメの産卵地で知られる美波町では、町が保有する旧日和佐老人ホームを活用し、東京都内のICTベンチャー企業がサテライトオフィスの開設準備を進めている。同社では、自然豊かな美波町の職場環境を全国にアピールし、「サーフィンや釣りの好きなエンジニア」「農作業とICTを両立させたいエンジニア」らを積極的に募集するなど、新しい働き方を提案し、大手企業と差別化をすることで人材確保を図る方針である。
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