総務省トップ > 政策 > 白書 > 24年版 > ICTビジネスエコシステム間競争の到来とその展望
第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第2節 「スマートフォン・エコノミー」〜スマートフォン等の普及がもたらすICT産業構造・利用者行動の変化〜

2 ICTビジネスエコシステム間競争の到来とその展望


 スマートフォン等の普及が、世界の携帯端末市場、ネットワーク・サービスの成長や、アプ・エコノミーなど上位レイヤーの新たな市場形成につながる姿をこれまでみてきたが、スマートフォン等は、競争や成長を促す一方で、ネット系事業者が主導するプラットフォームの構築により、従来のモバイル産業の仕組を大きく変える可能性がある。
 近年、ICT産業が、ネットワーク・サービスや端末のみならず、アプリ等多種多様な第三者としての企業が供給する補完的な財・サービスを巻き込んで成長していく点を、自然界の生態系になぞらえて表現する「エコシステム」との言葉がよく使用されている。その上で、ICT産業が「エコシステム」間の競争となり、それぞれのエコシステムにおけるサービス等の提供に必ず必要となる共通基盤(例:スマートフォンにおけるOSやアプリストア)としてのプラットフォームがその各エコシステムの競争戦略上重要であるとの議論がなされている25
 スマートフォン等の普及により、そのエコシステムの中核を担う主体としてネット系事業者の立場が強まるという見方がある一方、従来型携帯電話において、いわゆる「ガラケー」と呼ばれた、通信事業者が主導、ユーザーごとの使いやすさに配慮したサービスモデルをスマートフォンで実現することも、高齢者のインターネット利用の促進など、ユーザーニーズを喚起するとの意見もある。
 このような問題意識を持ちつつ、本項では、スマートフォン・タブレット端末の登場が、モバイル産業の構造にどう影響を与えているのか、エコシステムの視点も踏まえつつ分析する。


25 例として、マルコ・イアンシティ(ハーバード・ビジネス・スクール教授)は、「エコシステムの原理:クライアントからウェブへの持続的ソフトウェア・イノベーション」において、「インターネット−或いはクラウドコンピューティング−を介してソフトウェア・サービスを提供する企業群で構成される成長しているエコシステムにおいては、製品とサービス間の相互依存性の大きな増大が機会とリスクをもたらす。このことは、競争がますますプラットフォーム(新製品とサービスを作り出すためにエコシステムのメンバー間で共有される技術と能力)によって引き起こされるということを意味する。AmazonやFacebookのように、ソフトウェア・サービスを提供するためにインターネットのプラットフォームを立ち上げた企業は、先例のない採用率を達成しただけでなく、非常に短い間に競争相手に対して強力なアドバンテージを作り上げた。現在、インターネット・ソフトウェア製品とサービスが多数存在しているにもかかわらず、この領域における継続的なイノベーションは保証されていない。持続的なイノベーションの成否は競争状況に大きな影響力を持つ複数企業の活動にかかっているだろう。」と述べている。(組織科学 Vol.45 No.1 p.17)
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