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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第1節 「スマート革命」 ―ICTのパラダイム転換―

(4)ビッグデータの戦略的活用に向けた諸外国の取組


ア 米国
 米国では、上記のネット系プラットフォーム事業者や各ICTベンダーが既にビッグデータ活用に向けて積極的な取組を進めており、米国政府においても、科学技術政策局(OSTP)が平成24年3月29日、ビッグデータ研究・発展イニシアティブ(Big Data Research and Development Initiative)を発表して、政府として戦略的に取り組む姿勢を明確にしている。
 同イニシアティブは、急速に増大するデジタルデータを活用することを目的として、大量・複雑なデジタルデータから知識と洞察を抽出する能力の強化を図るものであり、同局幹部は「情報技術の研究開発に対する政府のこれまでの投資によって、スーパーコンピューティングとインターネットの創造の飛躍的な進歩につながった。それと同様に、われわれが今日から始めるこの取組によって、科学的発見、環境・生物医学研究、教育、国家安全保障に対するビッグデータの活用能力が変化していくことになる。」と声明で述べている。同局は、本イニシアティブが、米国が直面している最も差し迫った課題の解決に役立つとの見解を示している。
 同イニシアティブでは、①巨大な量のデータの収集、保存、運用、分析、共有に必要な中核技術の進歩、②科学技術分野での発見速度の加速や、国家安全保障の強化、教育・学習の変化への当該技術の活用、③ビッグデータ技術の発展・活用に必要な労働人口の拡大を目指すとしている。
 同イニシアティブでは、国立科学財団(NSF)、国立衛生研究所(NIH)、国防総省、エネルギー省、国防高等研究計画局(DARPA)、地質調査所の6機関が参加する。このうち、DARPAはデータ解析ツール開発プログラム(XDATAプログラム)に年間約2,500万ドルを4年間に渡り投じる。エネルギー省は2,500万ドルをかけて新たな研究機関(SDAV)を設立する。米国政府では、同イニシアティブに対する民間機関の参加を呼びかけている。

図表2-1-4-6 アメリカにおけるビッグデータの活用に関する研究開発の動向
図表2-1-4-6 アメリカにおけるビッグデータの活用に関する研究開発の動向の図
(出典)情報通信審議会ICT基本戦略ボード資料

イ EU
 EUでは、2010年(平成22年)5月に策定された「欧州のためのデジタルアジェンダ」において、欧州におけるデジタル単一市場、ひいては包摂的な知識社会(inclusive knowledge society)を実現するための必要な施策としての位置付けの下で、第7次研究枠組計画(FP7)におけるICTプロジェクトとして、3億ユーロ(約330億円)の予算をかけ、2011年(平成23年)から5年計画のFI-PPP(次世代インターネット官民連携)プログラムが実施されている。
 FI-PPPプログラムは、インターネット技術との強い統合を通じ、交通、医療又はエネルギー等の公共サービスのインフラと業務プロセスを“smarter”(more intelligent, more efficient, more sustainable)にする大きな必要性の下、次世代インターネット技術・システムにおける欧州の競争力強化と、公共的・社会的分野において次世代インターネットで強化されたアプリケーションの出現の支援を目的としている。また、ネットワーク・通信インフラ、端末、ソフトウェア、サービス及びメディア技術に関する研究開発を含む産業主導で全体的な(holistic)アプローチによるとともに、需給を引き寄せ、研究のライフサイクルにおいて早期の段階から利用者を関与させながら、実利用における実験と検証を促進することとしている。
 このプログラムのうち、次世代インターネットの中核となるプラットフォームとしての“FI-WARE”の設計・開発・実装に関するプロジェクトが、4,100万ユーロ(約45億円)の予算をかけ、2011年(平成23年)5月より3カ年計画で実施されている。そして、このプラットフォームにおける具体的な機能として、各種サービスを提供・管理するためのコンピューティング・蓄積・ネットワーク資源を提供するクラウドホスティングや、膨大なデータストリームを効果的に処理・分析等し、価値ある知識に整理する機能などが想定されている。


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