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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第1節 東日本大震災が情報行動に与えた影響

(4)ICT環境の状況


ア 通信インフラ及び電力
 東日本大震災においては、通信インフラが津波による多大な被害を受け、また、停電により機能しない状況となったが、通信インフラに関する具体的な要望やニーズをみると、ライフラインとしての電源確保(6.2%)と同程度かそれ以上に、通信インフラの可用性、信頼性、冗長性等の確保について指摘している回答者が多く(10.8%)なっている(図表3-1-1-9)。コメントをみると、「災害時も想定した情報通信手段を考えてもらう必要がある。」「外部の地域からの余分な通信はいらない、むしろ遮断して欲しい。」など、緊急時にトラヒック制御を効果的に行い、輻そうを抑制し、被災地域のコミュニケーションを確保する通信インフラの実現への期待が示されている(図表3-1-1-14)。

図表3-1-1-14 通信インフラ及び電力に関する具体的な要望やニーズ
図表3-1-1-14 通信インフラ及び電力に関する具体的な要望やニーズの図
(出典)総務省「災害時における情報通信の在り方に関する調査」(平成24年)

イ ICT環境へのニーズ
 東日本大震災においては、多くの人が避難生活を送ることを余儀なくされたが、ICT環境に対するニーズはどのようなものであったか、コメントからみていく。避難所において利用可能だったICT環境についてみると、「震災直後〜1週間後」においては、停電によりほとんどのICT環境が使えず、ラジオだけが頼りだったというコメントが多い。「1週間〜」については、電気の回復と共にテレビが利用可能になり、テレビやインターネット回線を中心に全体の割合が増加するなど、1週間程度で、徐々に基本的なICT環境が戻り始めたことがわかる(図表3-1-1-15)。

図表3-1-1-15 利用可能なICT環境とそのニーズ
図表3-1-1-15 利用可能なICT環境とそのニーズのグラフ
(出典)総務省「災害時における情報通信の在り方に関する調査」(平成24年)

 ICT環境に対するニーズをみると、避難所では「携帯電話はニーズが高かった。徐々に使えるようになったが不安定なので安定してほしかった。」というように、携帯電話へのニーズが52.6%と一番高く、次いでテレビやラジオへのニーズが高い傾向になっていた。一方、仮設住宅においては、インターネットやタブレット端末などの先進的なICT環境よりも、より基本的なテレビ等への要求が多い傾向となっていた。
 被災者リーダーへのインタビューコメントからICT環境に対するニーズについてみると、発災直後においてはほとんどのリーダーからICTに対して利用ニーズがあったことがわかる(図表3-1-1-16)。その内訳をみると、ニーズが高かったICTツールは携帯電話で、被災者リーダーの3分の2以上が必要だったと回答している。次いで、テレビ、ラジオが必要なICTツールとして続いている。ICT利用ニーズの変化についてインタビューコメントをみると、発災後2週間程度で、携帯電話が徐々に使えるようになると、「携帯電話等が使えないことへの苛立ちが解消した。」など、情報受発信ツールに関する不満は解消されてきている。発災後1〜2か月後には、避難所等でテレビの設置に対する期待が高まっている。また、ニーズ自体は決して多くはないが、「避難所内のパソコンは4月以降に整備された。」「市役所1階の無線LANが解放されており、役に立った。」など、市役所や大規模避難所等においてインターネット環境を整備する動きが顕在化したことがわかる。

図表3-1-1-16 発災直後のICT利用ニーズとその変化
図表3-1-1-16 発災直後のICT利用ニーズとその変化のグラフ
(出典)総務省「災害時における情報通信の在り方に関する調査」(平成24年)

ウ 需給マッチング
 ICT環境について需給マッチングの機会の有無をみると、回答者の28.8%が需給マッチングの機会があったと回答している(図表3-1-1-17)。自治体では41.2%、仮設住宅では47.4%が需給マッチングの機会があったというコメントをしており、特に情報の集まる行政機関や復旧・復興期の仮設住宅において需給マッチング機会を指摘する回答者が多くなっている。一方、避難直後の被災者リーダーや避難所では、「情報通信のニーズは特になかった。求められていたのは着るもの、食べるもの。少したってからは、子供用の遊び道具等。」というコメントにもあるように、ICT環境よりも電気や食料等の基本的なライフラインに対する需給マッチングが重視され、需給マッチング機会自体がなかったという割合が高くなっている。

図表3-1-1-17 ICT需給マッチング機会と具体例
図表3-1-1-17 ICT需給マッチング機会と具体例のグラフ
(出典)総務省「災害時における情報通信の在り方に関する調査」(平成24年)

 インタビューコメントから「ICT利用環境の現状」と「望ましいICT・情報環境」についてみると、自治体の震災対応部署からのコメントでは、役に立ったICT環境として、「避難所の固定電話はかなり利用されていた。」「最も役立ったのはラジオという実感を得た。」など、主に固定電話やラジオ等が挙げられていた。ICT環境に関する課題としては、通信手段の脆弱性に関する意見が挙げられている。一方、望ましいICT・情報環境については、望ましい情報端末として、防災無線の強化や各種端末における機能面での重層性の確保などが挙げられている。また、情報発信体制に関しても信頼性の確保と情報提供手段の多元化が挙げられた(図表3-1-1-18)。

図表3-1-1-18 ICT利用環境の現状と望ましいICT・情報環境
図表3-1-1-18 ICT利用環境の現状と望ましいICT・情報環境の図
(出典)総務省「災害時における情報通信の在り方に関する調査」(平成24年)
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