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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第1節 「スマート革命」 ―ICTのパラダイム転換―

(2)ユビキタスネットワーク環境の完成


 以上のICTの社会経済発展への役割の増大、とりわけインターネットの社会基盤化は、無線技術、ストレージ技術などICT技術の革新を背景としたネットワーク・サービス環境の飛躍的進化により、その適用範囲を大きく拡大している。平成23年版情報通信白書において、「ユビキタスネットワーク社会の現実化」(第3章第1節)として述べたとおり、総務省において推進してきたu-Japan政策の目標であるユビキタスネットワーク社会の構築、すなわち「『いつでも』(昼でも夜でも24時間)、『どこでも』(職場でも家でも、都会でも地方でも、移動中でも)、『何でも』(家電も身の回りの品も、車も食品も)、『誰でも』(大人も子供も、高齢者も障害者も)、ネットワークに簡単につながる社会の実現」2が、少なくとも技術・サービス・各種機器など環境面の整備は整ったものと考えられる。
 具体的には、まずネットワークインフラの分野では、LTEに代表されるワイヤレス・ブロードバンドの発展・普及、Wi-Fiの広範な端末機器への導入・家庭内外におけるアクセスポイントの整備による有線網・無線網の統合利用、放送のデジタル化による通信との融合・連携型サービスの拡大など、特に無線通信技術の革新を背景に、これまでバラバラに運用されていた個々のネットワークを統合的に利用することが可能となりつつある。その上で、これまで個々の企業等に分散して設置されてきたサーバーなどコンピュータ資源についても、クラウドを通じて利用者向けサービスとして提供されるようになり、統合の方向に進みつつある。さらに、平成23年版情報通信白書で詳しく分析したように、メディア・サービスのレベルでは、インターネット上で個々の利用者が情報を受発信しコミュニティ空間を形成する「ソーシャル」化が特に若年層を中心に進展しており、人と人との絆の強化を通じて国民の幅広い層の社会的包摂に貢献する可能性が示されている。
 昨年より本格化したスマートフォンやタブレット端末の世界的な普及は、このように進化したネットワーク・サービス環境に、パソコンに匹敵する機能を有する携帯端末を通じて、誰もが、どこでも接続し、インターネット上に展開する多種多様なサービスの利用を可能にしつつある。それは、インターネットショッピングやオンラインゲームなど従来からあるネット上のサービス利用を促進するとともに、よりパーソナルかつ文書閲覧に適したユーザーインターフェース機能を生かして、電子新聞や電子書籍の利用を飛躍的に拡大する潜在的効果も秘めている。我が国では、現在はスマートフォンの普及が先行しているが、米国では、電子書籍の内容充実を背景に、タブレット端末の普及も大きく伸びている状況にある。スマートフォン、タブレット端末の登場により、利用者は、複数のスクリーンを用途により使い分け、あるいは連携させるマルチスクリーン型のサービス利用がいつでも、どこでも可能となった。
 また、インターネットは、人と人との結びつきにとどまらず、モノとモノとの間でも、人間を介在せずに相互に情報交換し、様々な機器に埋め込まれたセンサーネットワークにより自動的に最適な制御が行われるシステム(M2M)を通じてつながりを強めており、次に述べるビッグデータの活用とあいまって、社会インフラの効率的制御や業務改善に役立てる動きが顕在化している(図表2-1-1-3)。

図表2-1-1-3 M2M通信サービス事例
図表2-1-1-3 M2M通信サービス事例の図
(出典)情報通信審議会ICT基本戦略ボード資料

 このように、インターネット・携帯電話の社会基盤化、ワイヤレス・クラウド・ソーシャルを背景とするネットワーク・サービス環境の進化に加えて、いつでも、どこでもネットワークへの入口であり出口として機能するスマートフォン等の登場により、ユビキタスネットワーク環境が具体的な全体像を顕したということができるだろう。ICTネットワークは、単なるコミュニケーションツールを超えて、民主主義の基礎となる表現・言論の自由を確保し人と人との絆を強化する基盤としての役割、様々な財・サービスがデジタル情報となって国境を越えて流通する基盤としての役割を担うに至ったのである。


2 よくわかるu-Japan政策(総務省/ユビキタスネット社会の実現に向けた政策懇談会) p.41
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