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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第1節 東日本大震災が情報行動に与えた影響

(3)メディアごとの傾向


 被災者の方々に対して、自由回答により東日本大震災を踏まえた情報通信に関する具体的な要望やニーズをインタビューし、そのコメントを主な要望やニーズごとにグループ分けして集計した(図表3-1-1-9)。その結果をみると、27.3%の回答者がライフラインの一つとしての携帯電話の重要性についてコメントしており、他の要望やニーズと比較して突出して多くなるなど、通信インフラに対する要望が目立っている。次いで、放送による地域情報の提供が16.0%、市民に確実に情報が伝わる手段の整備が12.9%、インターネットの効用が10.8%で続き、放送、防災無線、インターネットに対する関心が高かったことがわかる。また、全体として、通信手段を確保するための電源の重要性9.3%、ライフラインとしての電源確保の重要性等6.2%など、電源に対する要望やニーズも多くみられた。
 続いて、ICT環境等に関する要望やニーズが高かった防災無線、携帯電話、放送及びインターネットについて、東日本大震災における状況と要望やニーズの詳細などをみていくことにする。

図表3-1-1-9 ICT環境等に関する具体的な要望やニーズ
図表3-1-1-9 ICT環境等に関する具体的な要望やニーズのグラフ
(出典)総務省「災害時における情報通信の在り方に関する調査」(平成24年)

ア 防災無線
 防災無線がどのように活用されたのか、インタビューコメントを分析すると、防災無線から情報収集ができたかどうかについて、防災無線が聞こえたという回答は全体の41.3%、聞こえなかったという回答が57.1%であった(図表3-1-1-10)。聞こえなかった要因としては、「近辺に防災無線がなく聞こえなかった。」や「聞こえた気がするが耳に入らなかった。」などのコメントが挙げられている。一方、防災無線が聞こえた人のうち、防災無線から津波が来るという情報を得たとする回答が65.6%と高くなっており、被災者の意識を避難行動へと切り替える重要な役割を果たしていたとの認識が示されていた。インタビューコメントをみると、「防災無線の整備が重要である。」「一家に1台防災無線があれば、情報伝達は楽だったのではないか。」など、全体の12.9%の回答者がICT環境等に関する具体的な要望として市民に確実に情報が伝わる手段(戸別防災無線等)の整備を挙げている(図表3-1-1-9)。

図表3-1-1-10 防災無線に関する具体的な要望やニーズ
図表3-1-1-10 防災無線に関する具体的な要望やニーズのグラフ
(出典)総務省「災害時における情報通信の在り方に関する調査」(平成24年)

イ 携帯電話
 被災地域において、避難した際に身近に持っていた情報端末について聞いたところ、回答者の95.1%が携帯電話を持って避難していた(図表3-1-1-11)。しかし、具体的なインタビューコメントをみると、「携帯が何とか使えたら良かったのにとは思う。」「携帯電話は無線なので災害の時こそ使えると思っていたが、全く使えずショックだった。」など、特に震災直後以降、ネットワークの輻そうと基地局等の物理的な損壊や予備電源の燃料切れなどで長時間使用不能となり、安否確認も取れず、被災者が孤立状態になってしまったことの影響が指摘されている。

図表3-1-1-11 身近に持っていた情報端末と具体的な要望やニーズ
図表3-1-1-11 身近に持っていた情報端末と具体的な要望やニーズのグラフ
(出典)総務省「災害時における情報通信の在り方に関する調査」(平成24年)

 一方、「つながれば、仮に通話はできなくても、メールやSNSとかはできる。」というように、携帯電話は身近に持っていた情報端末として評価が高い。また、ICT環境等に関する具体的な要望やニーズとして27.3%の人が「ライフラインの一つとしての携帯電話の重要性」についてコメントする(図表3-1-1-9)など、音声通話、電子メール、ショートメッセージ、ワンセグ等の多様な機能が搭載されている特性を生かし、どのような状態でも緊急時の情報が伝達できるような機能面での重層性や、電源確保の重要性が指摘されている。

ウ 放送
 ラジオやテレビ等の放送メディアに依存する利用者は多く、L字画面・データ放送やコミュニティ放送を用いた地域情報の提供についても評価している。震災時には多くの自治体において、「テレビ、防災無線、広報車のみが発信手段で情報がない状態であったため。」などの理由により、臨時災害放送局の設置が行われ、「市から情報が提供しにくい、営業している店舗、物資の販売状況等を放送。」するなど、幅広く地域情報を提供する取組みが進められている(図表3-1-1-12)。

図表3-1-1-12 地域密着情報の収集(放送)
図表3-1-1-12 地域密着情報の収集(放送)のグラフ
(出典)総務省「災害時における情報通信の在り方に関する調査」(平成24年)

 一方、放送による地域情報に関する提供ニーズをみると、「ラジオは情報を手に入れられたが、細かい情報まで入ってこなかった。」「町内の情報収集の難しさを改善するため、限られた地域でのコミュニティFMができないか考えている。」など、生活情報など地域の細かい情報を確実に提供する手段としては限界も指摘されている。一部では、ラジオやテレビで実現できない即時性・地域性の高い情報収集を、Twitter等を使って実現した事例もみられるが、より幅広い住民に地域密着情報を提供する上では、放送を利用し、細かい地域情報を提供する必要性も示唆されるところである。

エ インターネット
 前述しているとおり、震災直後の携帯電話の音声通話やメールが使えない状況から避難後にかけて、先進ユーザーを中心に、ブログ・Google Person FinderやTwitterなどインターネットを活用した安否確認や地域に密着した情報収集等が行われている。属性別のインターネット活用状況をみると、NPO・ボランティアにおいてインターネットを活用したという回答が84.0%、次いで自治体の78.6%と高い割合となっており、インターネットの利用が進んでいることがわかる(図表3-1-1-13)。被災地でのインターネットの利用は全体としては限定的なものであったが、インタビューコメントをみると、「地域の情報を収集するのにTwitterの地域のbotが役に立った。」「SNS、Twitterを使って、地元の知り合いと浅く情報交換をしていた。」など、特に生活情報を中心に有効に活用した人にとってのインターネットの評価は高くなっており、被災地の情報提供ツールとしての可能性が示唆されている。

図表3-1-1-13 地域密着情報の収集(インターネット)
図表3-1-1-13 地域密着情報の収集(インターネット)のグラフ
(出典)総務省「災害時における情報通信の在り方に関する調査」(平成24年)
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