総務省トップ > 政策 > 白書 > 24年版 > ICTを活用した製造業のサービス化(バリューチェーンの拡大)
第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第3節 ICT国際展開がけん引する成長のポテンシャル

(3)ICTを活用した製造業のサービス化(バリューチェーンの拡大)


 一方で、ICT産業の海外展開とは異なるが、これまでICTと関係性が低いと思われていた産業が、ICTを実装することで、新たな成長を実現した事例として、ICTを活用した製造業のサービス化によるバリューチェーンの拡大といった事例も見られる。製造業のサービス化については、メンテナンスプロセスの取り込みが代表的であり、工作機械等でも従来から取り組まれてきているアプローチではある。しかし、ICTを活用することで、自社が提供した製品のライフサイクル等を管理し、顧客価値向上に資するサービスを一貫して提供することが可能となる。また、製品単体でなくサービスも含むソリューションを提供することになる。

●KOMTRAX(建設機械の遠隔管理サービス)

 建設機械メーカーの日本最大手(世界第2位)のコマツは、自社建設機械ビジネスを機軸に、ICTを活用した顧客へのリアルタイムサービスを提供することにより、顧客価値を高める取組を行っている(図表1-3-4-6)。

図表1-3-4-6 KOMTRAX(建設機械の遠隔管理サービス)
図表1-3-4-6 KOMTRAX(建設機械の遠隔管理サービス)の図
(出典)コマツ社資料

 同社建設機械は、車内の各種センサー情報の他、コーションや故障コードといった機械情報を、車載ネットワーク「CAN(Controller Area Network)」を通じて取得し、GPS位置情報と併せ、衛星通信及び携帯電話回線を経由して同社のサーバーに情報を送信しており、日本にいながら、世界各地で使われている同社建設機械の機械位置、稼働時間、燃料消費量等の稼動実績情報に加え、コーション、故障コード等のメンテナンス関連情報関を収集できる仕組を構築した( KOMTRAX)。機械データの「見える化」により、顧客へのプロダクトサポートの即時性、効率性の向上に結び付けている。
 KOMTRAXによって同社のサーバーに集められた情報は、コマツのみが利用するのではなく、インターネット経由で顧客や代理店にも必要な車両情報を配信している。当該システムにより顧客、代理店、メーカーのそれぞれがメリットを享受し、Win-Win-Winの関係を築いている。顧客サイドでは、機械の稼働状況の把握、省燃費運転の実現、盗難(機械・燃料)リスクの低減などに活用されオペレーションの改善に役立てられている。代理店サイドでは、サービス員の訪問効率化、消耗品ビジネスの拡大などに活用され、販売・サポート業務の効率化に繋げている。また、同社は当該システムから得られた情報を、建設機械の需要予測、使用方法の傾向把握、故障寿命予測など販売・開発・生産の効率化や品質向上にも役立てており、KOMTRAXは今では同社の経営に欠くことの出来ない重要な武器となっている。
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