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第2部 情報通信の現況と政策動向
第2節 情報通信政策の展開

(3)電波利用環境の整備


ア 生体電磁環境対策の推進
 総務省では、電波の人体への影響に関する調査を実施し、人体の防護のため、電波法令により国際ガイドラインと同等な電波の強さの安全基準を定めている17。これまでの調査・研究では、この安全基準を下回るレベルの電波と健康への影響との因果関係は確認されていないが、今後も科学的に安全性の検証を積み重ねていくことが重要であることから、総務省では、継続的に電波の安全性評価を行っていくこととしている。
 また、この安全基準のうち、携帯電話端末のように、頭のすぐそばで使用する無線機器に対しては、人体頭部における比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate18)により電波の許容値を規定している。一方、ワイヤレス技術の進展に伴い無線機器の多様化が進み、今日では、スマートフォンやタブレット端末など、頭以外の体の近くで使用する無線機器が一般的なものとなっていることから、情報通信審議会において、人体側頭部を除く人体に近接して使用する無線機器等に対する比吸収率の測定方法について審議が行われ、平成23年10月に一部答申19を受けた。これにより、体に近づけて使用する各種の無線機器の安全性が評価できるようになり、総務省では現在、当該無線機器に対する安全基準の制度化を進めている。

イ 電磁障害対策
 各種電気・電子機器等の普及に伴い、無線利用が各種機器・設備から発せられる不要電波に対する電磁的な妨害対策が重要となっている。
 総務省では、情報通信審議会情報通信技術分科会に設置された「電波利用環境委員会20」において調査・検討が行われ、CISPR(国際無線障害特別委員会:Comite International Special des Perturbations Radioelectriques)における国際規格の審議に寄与するとともに、平成23年9月には情報通信審議会から、CISPRで定められた国際標準に基づき、家庭用電気機器、伝導工具及び類似機器からの妨害波の許容値と測定法等に関する一部答申21を受けるなど、国内における規格化を推進している。

ウ 電波利用環境の保護
 電波利用が拡大する中で、良好な電波利用環境を維持していくことはますます重要な課題となってきている。総務省では、電波利用環境を保護し、豊かな情報社会を実現するために、様々な電波利用環境保護行政サービスを提供している。
 平成24年7月25日以降、パーソナル無線で使用されている周波数帯は、携帯電話でも順次使用されることになっており、パーソナル無線に許可された周波数帯であっても、無免許や改造したパーソナル無線を使用し、携帯電話に妨害を与えた場合、電波法に定める重要な無線通信への妨害として、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金の対象となる。このため、平成24年度においては、不法パーソナル無線による重要な無線通信への妨害に対処するため、不法パーソナル無線の一掃に向けた取組を強化している。
 また、平成24年3月から新たなチャンネル(21チャンネル及び23チャンネル)によるBS放送が開始されているが、同チャンネルの中間周波数が、1.5GHz帯を使用する携帯電話システムの周波数と重なることから、BS受信世帯がシールドの不十分なブースター等の設置工事をしている場合、漏洩した電波が携帯電話に障害を与えることが判明している。実際に全国規模の障害が発生したため、平成24年度から、携帯電話事業者と連携して、対象世帯のBS受信設備の点検・改修、工事業者団体への指導等の対策を実施しているところである。


17 電波防護指針:http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/body/protect/index.htm
18 生体が電磁界にさらされることによって単位質量の組織に単位時間に吸収されるエネルギー量
19 情報通信審議会からの一部答申:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban16_02000025.html
20 電波利用環境委員会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/denpa_kankyou/index.html
21 情報通信審議会からの一部答申:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban16_01000020.html
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